【古典邦画】「マダムと女房」

1931(昭和6)年の日本映画「マダムと女房」であるが、初の全編トーキー映画である。監督は五所平之助。YouTubeにて。

トーキー(talkie)とは、映像と音声が同期した映画のことで、今じゃ当たり前のことである。この映画まではサイレント映画で、セリフが字幕で入るか、横で活動弁士が解説するかであった。

初の音声入りなので、セリフだけぢゃなく、日常や生活の雑音とあらゆる音が鳴りっぱなしで、赤子の泣き声など、ギャアギャアと頭が痛くなる(笑)。

劇作家の男が、静かな環境で原稿を書きたいために、郊外の住宅地へ引っ越す。しかし、いざ書こうとすると、妻がたてる生活雑音や子供の騒いで泣く声、押し売り、野良猫の鳴き声、さらに、隣家から大音量の楽団が演奏するジャズまで聞こえてくる。

妻を演じたのは、まだ20代の田中絹代でカワイイ。

騒音で執筆が邪魔され、ブチ切れた男は、隣家に怒鳴り込むが、そこの美人マダムに酒を勧められ、一緒にダンスまでして良い気分で帰宅する。と、今度はマダムにジェラシーを燃やした妻がブチ切れる…というコメディ。

しかし、郊外(田園調布)の住宅が、今とあまり変わらないような一軒家で、ホントに昭和6年のフィルムかいなと驚く。多分、ブルジョワ階級なんだろうな。まあ、日本髪に着物と洋装の女性が混在してるけどね。

最初にセリフを発するのは、路上で写生をしてた画家で、「このくらい描けりゃ、今年の帝展(今の日展)も大丈夫だな」。

日本初のトーキーは、騒音に悩まされる男の話だった(笑)。初のトーキー映画ということで価値はあるかも。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。