【古典邦画】「綴方教室」

前に、岩波文庫で読んだ「綴方教室」。綴方とは作文のことであるが、当時、豊田正子という小学4年の女児が、担任の先生に文章の書き方を教わりながら、日常を綴ったもので、1937(昭和12)年に、教育運動の一環として出版されて大ベストセラーとなった本だ。

デコちゃん(高峰秀子)主演で映画化されてたんだ。1938(昭和13)年の作品「綴方教室」。監督は山本嘉次郎。YouTubeにて。

俺はファンだから、そう見えるのかもしれないが、14歳のデコちゃんがメッチャ素晴らしい。笑ったり、拗ねたり、大泣きしたりの演技が誰よりも光ってて、すでに大女優の風格がある。

映画の内容は、正子の作文を通して、東京・下町の人々の喜怒哀楽を描いたものだが、ちょっとは変えても、概ね本にある通りである。

父親はブリキ職人で、お金が入ったり、イヤなことがあると、すぐに飲んでしまってスッカラカンになり、母親は、常に金がないとボヤいてるクソ貧乏一家。

そんな中でも、正子は、時折、弟とケンカをしながらも、明るく笑顔を絶やさない。デコちゃんは痩せてて背が高いから、もっと年上に見えるけど。

正子は、学校で綴方(作文)を習うが、最初は、自分だけがわかるような、独りよがりの文を書いてたが、先生の指導で、徐々に、客観的な見方と、女児ならではの鋭い洞察を持った文を、誰にも理解できるような文で書けるようになっていく。

正子の才能が開花されると、正直に書いた故のトラブルや、クソ貧乏な家のこと、学校を止めて芸者になる話、隣のオバさんがカルトにハマるなど、様々な問題に見舞われるが、それらも正直に思ったままに書いていく。

当時の長屋の暮らしぶりがわかるのも興味深いし、示唆の富むことも多々ある。今でも、綴方教室を読んだ方が良いと思われる大人たちはいっぱいいるしね。

実際の豊田正子と、デコちゃんは、内容証明を出す程のトラブルになったけど、デコちゃん自身は、この時代の私の最高傑作と言っていた。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。