「葉隠入門」

「武士道といふは、死ぬ事と見付けたり(武士道の本質は、死ぬことだと知った)」の一句で有名な山本常朝(ツネトモ)の「葉隠(ハガクレ)」。

三島由紀夫が「私のただ一冊の本」と心酔したというけど、ただ滅私奉公のストイックな武士道精神を説いたものかと思うとそうではない。

先の一句自体が、「葉隠」全体を象徴する逆説となっており、武士の社会における自由と幸福の理念が綴られている。

常に死を覚悟して行動できる人間の精力と情熱への賛美なのだ。

常朝のいう死とは、自分の意志による選択可能な行為だけど、それは理想化されたものであって、実際の死はそんなものではないことを常朝は深いニヒリズムによってわかってた。

常朝自身が61歳まで生きて平和に畳の上で死んでるし。

人間は死を完全に選ぶこともできなければ、完全に強いられることもできない。どんな死でも少なからず自分で選ぶことのできないという宿命が働いているからだ。

要は、誰にも平等にやって来る死に対して、どういう哲学を持つか?どういう態度でいるか?なのだ。

その上で、「人間の一生なんて短いものだ。とにかく、したいことをして暮らすべきである。嫌なことばかりして苦しい目にあうのは愚かなことだ。私は寝ることが好きだ。境遇に応じて、家に閉じこもり、寝て暮らそうと考えてる」と常朝は書いている。

生きてる限りは死は来ない。死んだ時はもう存在しないから、死を恐れる必要はないだろう。

最初に読んだ時はイマイチだったけど、今読むととても面白かった。

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脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。