【古典邦画】「破れ太鼓」

木下惠介監督の、1949(昭和24)年の作品「破れ太鼓」。

当時の歌舞伎役者で、銀幕大スターの阪妻(バンツマ)こと阪東妻三郎の主演。

阪妻は、封建的な昭和の頑固オヤジの役で、妻も6人の子供も絶対服従させて、家政婦も気に入らないとすぐに辞めさせる。
そんな父のやり方に不満を募らせた家族は、次々と家を出て行ってしまう。
が、会社が倒産してしまい、長男が興した会社を手伝うことになり、最後は、双方が家族の有り難みを感じて、和解するといった流れの定番のホームドラマだ。「寺内寛太郎一家」にも近いのかな?

なにかと言えば、怒鳴りつけて、確かにうるさいけど、この映画を観る限りは、それは無視できるし、甘えれば助けてくれると思う。

今は、こういうオヤジは皆無に近いのだろうなぁ。一代でのし上がったから、その自信とプライド、今の若い奴は…という不満が、そうさせるのだろう。

家族が出て行って、生活力のない弱い次男だけが残るが、その彼に諭される。
「人間は所詮、孤独です。親兄弟だからって、やっぱり別々の人間です。それぞれの生き方があるんです。でも親子はやっぱり親子です。そうして一番親しい間柄であればこそ、一番楽しい自由がなければならないんです。そうしてなんとなく愛し合っているんです。人間が一番惨めなのは誰も愛せなくなった時です」と。

喜劇仕立てのホームドラマであるが、木下監督にしては冗長でイマイチだな。人気スター阪妻で持ってる映画かな。阪妻も、そんなに演技が上手いとは思えない。

オヤジを揶揄した歌はリズムがあって面白い。口ずさみたくなる。

小津安二郎から始まり、黒澤明、溝口健二、成瀬巳喜男、木下惠介他と、日本映画の黄金時代<1958(昭和33)年がピーク>を代表する監督の映画はほとんど鑑賞したと思う。俺も、バリバリ昭和価値観の中年ジジイだし、やっぱ映画も小説も、古典は良いよなぁ。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。