「わが闘争 上」

上巻は2回目、下巻は1回、続巻は未読、な「Mein Kampf」。

批判的必読の書というよりはプチナチヲタだから(笑)。

最初に読んだのは法大生時代だけど、さすがは角川文庫、文字がハッキリとしてて、とても読みやすい。ドイツ他では発禁なのに、お手軽な文庫で読めるのもスゴい。調べると、2000年代に入っても、ベストセラーになってる国もあるようだ。

まあ、アドルフ・ヒトラーの著作でナチスのバイブルである訳だが、ほとんど口述筆記(書いたのはルドルフ・ヘス他)で、いっぱい手直しも入ってると思う。

昔の文章だからか、長くて、例えが多くて、シツコクて、読み通すのに根気がいるけど、ヒトラーの都合の良い情勢分析と、偏屈な人種差別的な考えはよくわかる。

ヒトラー自身は末期、「既に古い本で、いろいろと決め付け過ぎていた」と言ってたけど。

内容は、生い立ちから悲惨なヴィーン時代、政治に目覚めて、ドイツ労働者党に入党、「国家社会主義ドイツ労働者党(ナチス)」の結成に至るまで。

ヒトラーがユダヤ人を初めて意識したのはティーンエイジャーの頃だが、彼らの中に、ただ宗教しか見ていなかった。それがヴィーンに来て、街中で異質な宗教服を着たユダヤ人を見て、「これもまたドイツ人だろうか?」と疑問に思い、初めて反ユダヤ主義のパンフレットを買って読んだとしている。

そして、数々の地方新聞を読む中で、宗教だけでなく、ユダヤ民族を注視するようになって、「彼らがドイツ人とは明らかに違ってるのがわかってきた」という。

そこから、外見や清潔さ、道徳、文化、宗教…ユダヤ人に関するあらゆることを罵って、「腐っていく死体の中のウジ」「悪質な精神的ペスト」「民族の寄生虫」とまで書いてる。

最後は「全能の造物主の精神において行動すべきだ。同時にユダヤ人を防ぎ、主の御業のために戦うのだ」という。

絵画も、建築でも中途半端で、何事も上手くいかずに、不満と不安のハケ口として、当時たくさん発行されてた地方新聞をタダで読んで、ドイツの現状と不甲斐ない政治、特に異質だったユダヤ人に怒りをぶつけたのだな。

今でも、とにかく異質な敵を見つけて、正義の名の下に攻撃することで溜飲を下すことはよくあることだ。個人的な問題を大きくすり換えて。

たくさん書いてある当時の政治情勢はよくわからないけど、目立つのは人種主義の観点で、世界は様々な人種同士が覇権を争ってるという。

当然のように、アーリア人種の優位性と人種の交配についての大きな危惧が記してある。そこでまた、「あらゆる反ドイツ的なものの創造者がユダヤ人であって、ユダヤ人に対しては最も激しい闘争手段が使われなければならない」としている。

第一次大戦でドイツが敗北したのは、ただ経済を偏重したからだとも。

コレを書いた時点では、フランスを最も憎み、ソ連はユダヤ人が中心だからダメで、ドイツが同盟すべき国はイギリスとイタリアであるという。そして、ソ連を征服して、東方まで領土を拡大すべきとしている。独ソ戦のキッカケかな。

ヒトラーは、読書法についても書いている。
「読書は目的のための手段であって、その目的だけに意義を持つ。たくさん読む人はいるが、知識を持ってても、彼らの頭脳は得た知識を分類したり、整理したりすることを知らない。彼らには本の中から自分にとって価値あるものと価値なきものを選別する技術が欠け、さらにあるものはいつも頭の中に保持し、あるものはできるなら無視すると言うように、どんな場合にも無用な厄介ものを引きずっていくことをしないと言う技術が欠けている」だって。

もちろん大衆の心理についても書いている。「全て中途半端な軟弱なものに対しては、感受性が鈍いのだ。女性のようなものだ。足らざるを補ってくれる力に対する定義しがたい感情的な憧れと言う根拠によって決せられる。だから弱いものを支配するよりは強いものに身をかがめることをいっそう好むものである」

メンドクサイけど示唆に富んでるね。

さて、根気が続いたら、下巻と続巻も読むかねぇ。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。