「鍵のかかる部屋」

本名・平岡公威(キミタケ)で発表した学習院時代の作品「彩絵硝子(ダミエガラス)」や「祈りの日記」からはじまり、15歳から44歳までの各時期に書かれた短編12編を収める。2回目読了。

ある人妻と関係を持った男が、彼女が不意に死んで、その9歳の娘とあやしい関係になっていく表題作は、幼いながらコケティッシュな色気を見せる娘が魅力的だが、どこか現実感を欠いた夢のような展開で、三島の筆が冴える描写はさすが。

先の、10代の作品は、恋愛がテーマだったりするけど(童貞のくせに 笑)、貴族が楽しむ優雅な王朝古典文学のようで、改めて、精神と妄想だけが異様に膨らんでた、幼い三島の頭の中が想像できるね。

後半は、若い時の夢から覚めて、現実的な社会的題材を扱った作品も多い。

最後の「蘭陵王」は、死の前年に書かれた最後の短編。“楯の会”の自衛隊訓練の際のある挿話で、三島の内的世界が現れていると思うが、また10代の夢と幻の世界に戻ったようで、死の予感が…。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。