【古典邦画】「死闘の伝説」

木下惠介監督の、1963年の作品「死闘の伝説」。

木下監督には異色の破滅に至るバイオレンス作品となるが、コレは木下監督なりの強烈な反戦映画だ。

戦争末期の、北海道の寒村が舞台。
都会から疎開して来た一家の娘に、村長の息子との縁談が持ち上がる。
しかし、病気で戦場から戻った一家の長男は、村長の息子が戦地で女に残虐な行為を行っていたことを知っていた。
長男が娘の縁談を断ると、疎開して来た一家は、“村八分”のような扱いを受けることに。
村長の息子が一家の娘に暴行しようとしたことをキッカケに、疎開して来た一家と味方する村人と、多くの村の人々との争いは激しくなる…。

戦争末期、お上に、子供をはじめ様々な物を取られるが、敗戦色が濃厚になって来た世情の中で、不安や不満、フラストレーションのハケ口を、他所者の疎開者を“非国民”と攻撃することで溜飲を下げるという、弱者同士の、ついには7名の死者を出すまでに至った、醜い争いを描いたものだ。

男が悲惨な戦場に赴いている中、“銃後の守り”も狂気に支配されていたという真面目な木下監督の強烈な反戦映画だ。

戦争するのは戦場だけではない。地方の寒村でさえ、戦場と同じような狂気に支配されているのだ。

映画の冒頭とラストシーンのみカラーとなっているのも、本筋は闇の時代であることを印象付けている。

北海道が舞台だから、アイヌ民族のペンペンペンという不思議な音楽が、村人が狂気に走るシーンで使われていて、怪しい雰囲気を醸し出している。

村長の息子は菅原文太、戦争で手が不自由となって村で暴れ回る狂気の息子を演じている。一家の長男は落ち着いた加藤剛、争いを好まぬ母親が田中絹代、疎開者に味方する気性の激しい娘が加賀まり子だ。

題材が暗い割には、北海道の大自然はとても美しい。

「田舎モンの底意地の悪いのは大嫌いだ」…。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。