「女神」

表題作の中編作品と短編10作品。2回目読了。

最後に収められた「朝の純愛」もそうだが、表題作は、三島由紀夫の、歳を取るということ、そして、美を失うことへの恐れが表れてしまった若い頃の作品だ。

特に、「女神」は、空襲で顔にヤケドを負ってしまった美貌の妻に代わって、一人娘を、女神のような高貴な美しい女性に育て上げた父親が、娘を取り巻く男と醜い顔を持った妻に復讐される話である。

「女は美しくなければ一文の価値もない」と信じる偏屈な中年男の異常さに、著者が信仰する美の一編が混じってると思う。

ラスト、父と娘の近親相姦のような余韻を残して了となるが、著者にしては、何か足りない不完全な終わり方かと思う。

他の短編は、三島らしい皮肉を効かせたものが多いが、やはり美と醜、相反するものを描いた、根底に矛盾を感じるものだ。

“女に芸術は似合わない。なぜなら女自身が芸術だから、わざわざ美を表現する必要はない“という考えは、男目線であり、今なら当然批判もされようが、女の美を追い求める偏執男の執念、よくわかる。男は、女と違って、基本的に美を理解できないからね。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。