見出し画像

「愛と憎しみの伝説」

「愛と憎しみの伝説(Mommie Dearest)」(81年・米、フランク・ペリー監督)。アメリカの映画賞で「最低作品賞」を受賞しただけあって、イヤな、後味の悪い、トラウマになりそうな内容の映画だった。

身勝手でワガママ、傲慢な自己中のハリウッドの大女優ジョーン・クロフォード(実名)。
子供が欲しかったけど不妊体質であるため、恋人の弁護士が手を回して、養女クリスティーナを貰って育てることに。
最初は母親らしくフツーに可愛がるものの、自分の思い通りにいかないからと虐待を始める。
ジョーンは、歳を重ねて女優としての盛りを過ぎ、仕事のオファーも減ってきたことから、だんだんと情緒不安定になり、すぐにブチ切れるようになって、その矛先をクリスティーナに向けてしまう。
やがて、クリスティーナは大人になって売れない女優となるが、血の繋がらない憎しみを持った母親の支配は続き、ついには病気で倒れたクリスティーナの若い役をも奪ってしまう。すでに老女でありながら。
2人の憎悪は肥大し、ジョーンの最期の時も、「娘と息子に残す財産は1セントもありません。その理由はわかってるはずです」と遺言を残すほどに…。

いや〜上質のホラーみたくホントにめちゃくちゃ怖かった。ジョーンのデッカイ浮いたような眉毛のメイクが化け物のようだし(多分、演出でワザと)、いかにも性格悪そうな攻撃的な若作りした顔もイラつくほど下品だ。

俺的には人間の狂気を描いた素晴らしい作品だと思うが、なんせ幼児への虐待が可哀想だし腹立つし、まともに見てらんない。

前半は言葉の暴力が中心だけど、「なんであなたは私の言う通りにしないの!?」って近くで怒鳴りまくるし、走り回る弟クリスティー(後でさらに男の子を養子にする)はベッドにベルトで縛り付けるし、ついにクリーニング屋のハリガネのハンガーで背中をビシビシ殴るし(しかもナイトクリームを塗った白塗りの顔で 怖っ!)、大人になってからは床に押し倒して首を絞める始末。まるで児童虐待ショーだよ。これじゃあ、子供は精神的に病んじゃうよね。

このままいったら、ジョーンは、絶対に子供らに復讐されるか、不幸な死を迎えるだろうと思いながら観てたけど、残念なことに最後までそれはなかった。先に死んだ2番目の夫の会社も継いで莫大な財産を蓄えてたにもかかわらずに、子供らにはお金がないと嘘をつき、遺産は一切残さないと遺言書まで残して、クリスティーナとクリスティーは涙を流して唇を噛み締めるシーンで終了。最期まで子供を犠牲にして徹底した傲慢さと自己中を通したわけだ。

クリスティーナがジョーンとの喧嘩で、「なんで私を養子にしたの?」と問い詰めると、「いい宣伝になると思ったからよ!」って、本音が出た。まあ、プライベートまで犠牲にして女優を演じたといえば聞こえは良いけど。

この映画は実話で、4人もの養子を貰った往年のハリウッド女優ジョーン・クロフォードの養女クリスティーナが出版した回想暴露本が原作。確かに、ハリウッドではこういう話もいっぱいありそうだ。ケネス・アンガーの「ハリウッド・バビロン」のように。

“ホントに愛してる”という言葉を連発するが、言葉通りに受け取ると大きな間違いだ。軽い挨拶みたいなものだが、映画を観ると、なんと白々しくて、中身のない言葉なのだろうと思うね。

気分が悪くなるほどのおぞましい内容で観るのが辛かったけど、人間の暗黒心理を表した素晴らしい映画だったと思う。

画像1

画像2

画像3

画像4

画像5


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。