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「風立ちぬ」

宮崎駿監督のアニメ映画「風立ちぬ」(2013)。

“風立ちぬ〜♪今は秋〜♫今日から私は心の旅人〜♬”と真っ先に松田聖子の唄を思い出したが、昭和初期の作家、堀辰雄の方だった。

でも、主人公は、零式戦闘機(通称・ゼロ戦)を設計した堀越二郎で、どうやら堀越二郎と堀辰雄のそれぞれのエピソードをゴッチャにしたものらしい。

堀辰雄の妻・矢野綾子は若くして結核で死んだが、堀越二郎は、架空の奥さん・菜穂子(まだ少女の時に関東大震災で出会う)を同じく結核で亡くすという設定にしている。

堀越二郎の声が素人っぽいけど、エヴァの庵野秀明氏なんだね。

幼い頃から飛行機が大好きだった堀越二郎は、学校では飛行機設計学や航空工学を学び、“三菱”に入社、ドイツへの留学を経て、航空技術者として、軽くて速い海軍の戦闘機の開発に携わる。

宮崎監督は飛行する機械が好きだよねー。

宮崎監督らしい“味付け”が為されながら、堀越二郎は、自由でフワフワしたような、とても“良い人”として描かれてるが、結局、帝国軍需企業の三菱で戦争協力者として零戦を作ったんだよね。いわば戦犯だ。

しかし、結核を患って弱っていく菜穂子との切ない新婚生活の場面はフツーにウルウルきた。布団に寝てる菜穂子が、「あなた、手を握ってて」と甘えて、二郎は菜穂子の手を握ったまま、戦闘機の設計図を描く他、宮崎監督にしては初の(?)愛を交わすシーンがある。直接には出てこないが、菜穂子が「あなた、来て…」と誘い、2人は重なるのだ。熱いキスも交わす。

そういう菜穂子との悲しい蜜月があっても、戦闘機開発への情熱が冷めることはない。いくらその戦闘機が戦争で敵を殺すために使用されようとも。

…最後まで観てわかった。宮崎監督はこの映画で反戦の意思とか生の賛美、今までのように自然への畏敬とかを描きたかったのじゃない。

堀越二郎の戦闘機開発への情熱を描きながら、アニメ製作に没頭する自分を描きたかったのだ。

例え、戦争に使われようが、大量破壊兵器となろうが、どうしても好きなもの、熱中するものに入れ込む人間(男)の心理だ。

実際の戦争は勘弁で大嫌いだけど、普段はガン、兵器マニアだったりする男(の子)の行動。

俺だったら、実際に裏の暗黒世界なんて絶対に関わりたくないけど、裏の暗黒世界の本を読むのが大好き。そういう全てを犠牲にしてでも、なんと言われようとも、好きなアニメ作品を創り上げてきたという宮崎監督のフェチ的な嗜好が色ごく出てしまった作品だと思った。

好きなことに熱中する男の子の世界だよね。

そうなんだ、男は一度ハマってしまうと、トコトン突き詰めるまで、容易に抜け出せなくなってしまう生き物なのだ。ヲタクなんだ、わかるぅ。

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脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。