【古典邦画】「煙突の見える場所」

日本初のトーキー映画を作った五所平之助監督の、1953(昭和28)年の作品「煙突の見える場所」。YouTubeにて。

東京・千住にそびえ立つ“お化け煙突”(火力発電所)のあった下町で、捨て子の赤ちゃんを巡るコメディチックな人間模様だ。

田中絹代と上原謙がバツイチの夫婦役で、2階に下宿する若いカップルが、デコちゃん(高峰秀子)と芥川比呂志。

赤ちゃんの泣き声がイライラするくらいにうるさいけど、当時の豪華な俳優陣に比べると、話の展開が地味に思える。

田中絹代のところに、前の旦那が今の女との間にできた赤ちゃんを捨てるように置いていく。そのことで上原謙との間も危うくなるが、赤ちゃんが病気になったことを機に、夫婦間、下宿人間のギクシャクも解消して、ある種の連帯感が生まれていくという流れだ。

見る位置によって“お化け煙突”の本数が変わって見えるというのも、そのことの象徴だろうか。

田中絹代と上原謙のラブ・シーンがあるが、素朴で所帯染みて、庶民的(笑)で、全然いやらしくはないね。

しかし、上原謙のハッキリとしない優柔不断なダメ男ぶり、いつもながらイライラさせる。

芥川比呂志が義憤に駆られて、赤ちゃんの親を探し出して言う。「全く正義ってヤツは人間になんて余計な負担を要求するのだろう」。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。