【邦画】「永遠の人」

阿蘇が舞台の、木下惠介監督自ら脚本・製作の映画とくれば観ないわけにはいかないよねー。1961年公開の「永遠の人」。

昭和7年から36年まで、5章に分けて進行していく。

主人公である貧しい小作人の娘サダ子(高峰秀子)には出兵してるタカシ(佐田啓二)という恋人がいた。
彼とサダ子の親が仕える阿蘇谷の大地主の息子・平兵衛(仲代達矢)は出兵してたが、平兵衛はケガで除隊となって戻って来た。
平兵衛は、タカシがまだ出兵して留守の間に、サダ子を無理矢理に暴行する。
サダ子は絶望して川に身を投げるが、タカシの兄に助けられる。
凱旋して来たタカシは、事情を知って行方をくらます。
サダ子は仕方なく平兵衛と結婚、3人の子をもうける。
戦争末期、戻って来たタカシは既に結婚、タカシの妻は平兵衛の家にお手伝いに行く。
タカシは未だにサダ子を想い、平兵衛とサダ子の夫婦は激しく憎み合う。
サダ子はどこかでタカシを想い、平兵衛はサダ子を暴行した過去があるものの、妻になったサダ子に見向きもされずに苦しむ。
憎み合う夫婦の犠牲になったのが、2人の長男(暴行で生まれた)で阿蘇の火口に投身自殺する…。

いやもう、グチャ泥の男女関係で、誰も想いを遂げられずに、周りを巻き込んで歪み合う日々だ。

結局、始まりの、サダ子を暴行した平兵衛がトンデモなくクズだったわけだが、当時の大地主と小作人という立場、女性は男のモノでしかなかった環境、古くからのしきたりなど、雄大な阿蘇の景色とは裏腹に、涙と不幸の連続だね。ったく、サダ子がかわいそうだ。

理不尽なことばかりで運命に左右されながらも、大地主の家の嫁として優しく逞しく生きるサダ子は、やっぱり強い。

決して夫・佐兵衛を見ることなく、嫁としての仕事をこなす姿は、佐兵衛への復讐にも思えてくる。

不幸な息子や娘の結婚のことがあって、最後の最後、サダ子も、病気で死の床に着くタカシも、平兵衛も、お互いの真の気持ちを吐露することで、やっと邂逅が訪れる。

30年間も憎み合い、苦しんで来た人間関係にようやく平和が訪れたのだ。

阿蘇の山並みには関係ない、狭い人間関係の破綻、人間は小さな世界で生きてるのだねぇ。

揺るぎない情念みたいなものを感じる。

草千里も出てくるけど、阿蘇のどの辺で撮影したのだろう?俺がガキの頃、確かに火口への投身自殺がけっこうあって、自殺防止の看板があったと思うが。

しかし、BGMがフラメンコ(女は人を愛した〜♪という歌)ってのは滑稽で似合わないだろ。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。