【洋画】「黒いオルフェ」

ジャン・コクトーの劇「オルフェ」の、ブラジル・リオのカーニバル・ブラック版といっていい「黒いオルフェ(Black Orpheus)」(1959年、マルセル・カミュ監督)。前にも観たように思うけど思い出せない。

ブラジルの危険なスラム、ファヴェーラを舞台に、カーニバルで熱狂的な盛り上がりを見せる中、ギター弾きのオルフェと、地方から出て来た田舎娘ユーリディスの儚い恋愛と2人の死を描くもので、同じギリシア神話のオルフェとユーリディスの挿話を描くのでも、コッチの方が素晴らしいんじゃないかい。

市電の運転士でありギターを弾いて人気者のオルフェ。
気が強くて派手なミラという恋人がいて、役所に結婚の手続きに出向く。
地方から出て来たユーリディスは、オルフェの隣人(彼女の従姉妹)を訪ねて来て、2人は運命の出会いをする。
カーニバルの夜のリハーサルで、オルフェは婚約者ミラの目をかいくぐり、ユーリディスと愛を語り、2人は熱烈に愛し合うことに。
そんな時、ユーリディスの前に、彼女を追って来た死神の衣装を纏う謎の男が現れる。ユーリディスは恐れ慄いて逃げ出すが…。

汚い破けた服を着たストリートチルドレンや、登場人物の捲し立てるような明るさ、長々と続く狂ったように踊りまくるカーニバルの熱狂など、コクトーの「オルフェ」とはまた違って、南米ならではの、下層階級を取り巻く危険な香りが充満している。

熱狂のうちに繰り広げられる死と再生の詩編だけど、コクトーのように西洋の幻想的な洒落た感じではなく、黒い肌と汗と欲が手に取るように迫ってくる。コッチの方が、より人間的で好きだね。

簡単に言えば不倫の物語(笑)。
オルフェの婚約者ミラの嫉妬で逃げ出したユーリディスが、死神に追い詰められて死ぬことになって、オルフェは泣きながら彼女の亡骸を抱えて家に帰れば、怒り狂った婚約者ミラが家に火をつけて、ミラが投げつけた石がオルフェの頭に当たって、彼はユーリディスの遺体と共に崖から落ちて死んでしまうという…。

2人は死によって結ばれたのだね。オルフェの愛用のギターと唄はオルフェを慕ってた子供たちに受け継がれていく。

ギリシャ神話をラテン文化のブラジルに持ってきた作品で、リオのカーニバルの熱狂するサンバのリズムと西欧のギリシャ神話が上手く融合したと思う。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。