【邦画】「誰も知らない」

コレも「人生で観ておくべき日本映画ベスト50」入り。是枝裕和監督の、2004年の作品「誰も知らない」(第4作目)。

とても辛い映画だったなぁ。

同監督の傑作「万引き家族」に似てる設定でもあるが、ネグレクトを受けた子供たちが、社会の中にいながら社会から外れて、徐々に自滅していく話だ。

演技ではない子供たちの自然な表情が凄まじく心を打つ。泣くシーンこそないものの、不安と絶望でいっぱいいっぱいの幼い子供を観るのはただただ辛いだけだ。

1988年に発覚した“巣鴨子供置き去り事件”をモチーフにしている。

母親が、男の下に走って以来、たまに送金はあったものの、12歳の長男が兄弟姉妹の面倒を見ることに。子供たちは父親がみな別々で、出生届も出されずに、学校に通ったこともない。長男は、わずかなお金を工面して兄弟姉妹の世話をするが…。

逃げた母親を演じたのはYOUだが、飄々とスローにネットリとしたあの喋り方が、ネグレクトをやる母親の役にピッタリだ。

社会の中で、外部との接触を絶ったもう一つの社会を成立させてるところは「万引き家族」の世界観に似てる。

子供たちは、隠れるように生活を送るのだが、徹底的に社会とは断絶している。現代社会に特有なものとする向きもあるが、それとは関係なく、人間同士は意思を持って関わらない限り、お互いに孤独であるのはいうまでもない。汚いなりをした子供でさえ雑踏に埋もれてしまうのである。

是枝監督は、犯罪を材料に、明らかな人間関係である血縁(家族)の意味、つまり人間と人間の繋がりとは何か、を問うているのではないか。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。