「ミレナへの手紙」

1919年の秋、婚約者がいたカフカが、彼の小説に興味を持った人妻ミレナと出会う。

ミレナはジャーナリストで翻訳もする編集者。カフカの短編小説をチェコ語に訳して雑誌に掲載したいと連絡してきたのだ。

そこから数ヶ月の間だけど、カフカとミレナの手紙のやり取りが始まる。

ミレナは人妻でウイーン在住、カフカはプラハ在住で結核に罹り、婚約者もいる(後に破棄)…。

しかし、手紙を通した“不倫”という形で2人の愛は燃え上がる。

カフカの手紙魔ぶりは知ってたけど、いや〜、コレはマジで凄まじいね。

この膨大な手紙の数々を読むと、相手に対して、常に、居ても立っても居られない大きな不安に駆られてたカフカの病んだ(?)心情、メンヘラぶりがよくわかる。

時にミレナを絶賛して持ち上げたと思ったら、時に貶めて「アナタはひどい人だ」と怒ったり。返事を催促したかと思えば、もう書かないでと拒否したり。

ミレナのことから、日常、仕事、病気、友人、ミレナの夫、婚約者、家族、見た夢、ユダヤ人、訪問者…ありとあらゆることを書き連ねており、自分でも「何が言いたいのかわからない」と書く始末。

起きて朝に書き、寝る間も惜しんで夜に書き、封をして送った直後にまた書いて…、これだけ毎日、毎日、1日に何通も、長文の手紙を書いて送り付けていると、実際にミレナと会った時、恥ずかしくならなかったのだろうか。

ミレナの夫が病気で入院中、2人はウィーンで会ってる。
「まずは右肩だった。気に入ったのでそこにキスをした。君はやさしくブラウスを下げてくれた。左肩も同じ。森の中で、僕の上にあった君の顔、僕の下にあった君の顔、ほとんどむき出しになった君の乳房のそばの安らぎ…」。
唯一、エロチックな表現が書かれたところ。

ミレナの方から別れを告げて、翌1924年6月にカフカは結核で死去、ミレナはナチス政権下、レジスタンスに加わり逮捕、1944年5月に強制収容所で亡くなっている。

小さな日常の何気ないことでさえ、強い不安と圧迫を感じてたカフカの心情は、毒虫に変わったセールスマンや、不条理に突然逮捕されたヨーゼフK、呼ばれるけど城に入れない測量士K、そしてオドラデクを生み出し、引いてはナチス台頭前のユダヤ人の心情をも表すことになったのだ。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。