【古典邦画】「野火」

大岡昇平の小説を読んで、2014年の塚本晋也監督版も観たけど、市川崑監督が撮った1959(昭和34)年の「野火」を。YouTubeにて。

市川監督の奥さん(和田夏十)が脚本を担当。コレも「人生で観ておくべき日本映画ベスト50」入り。

主演は船越英二なのだが、役作りのために2週間も絶食したというから、極限状態に置かれた人間の狂気というものを、見事に演じ切ったと思う。意識の抜けたような彼の表情がとてもヘビーに感じる。

イヤ〜、最初から最後まで、暗くて殺伐としてて凄まじい。

究極に痩せ細って、ボロ布と化した軍服を纏い、底の抜けた軍靴を履いて、汚れで真っ暗な顔の兵士は、目だけがギラギラしてて、まさに、その精神・行動と同じく、狂人そのものである。

先の大戦末期、フィリピンのレイテ島戦線が舞台。
肺病を疑われるが、食糧不足で、野戦病院にも、所属部隊にも見放された田村二等兵。
飢えながらも、草などを食べて、なんとか生き延びて、深いジャングルをフラフラと敗走・迷走する田村は、かつての仲間の兵と再会するが、彼らは死んだ味方の兵を“猿”と称して、その人肉を食べていた…。

やはり人間は、究極の状態に置かれて、そこで生への執着が生まれると、元々の社会性や依存性から、神という崇高な概念を必要とするものだと思うけど、現実に、目の前で殺人やカニバリズムなどの行為を目にすると、贖罪の意識が芽生えて、後は狂うしかなくなるのではないだろうか。

コレは問題作だな。ただ、現地のフィリピン人のタガログ語が懐かしかった(笑)。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。