「日本軍兵士」

たまたまブックオフで手にしたのだが、とても興味深い新書だった。

先の大戦(日中戦争から続く)での日本人の犠牲者は310万人(うち、軍人は230万人、民間人80万人)に及ぶが、その9割が敗色濃厚となった末期の1944年以降だという。

しかも、実際の戦闘で命を落とすことよりも、戦犯天皇らによるグズグズした戦争終結対応もあった絶望的抗戦期において、戦病死者が異常に多かったのである。

戦病死とは、マラリア・赤痢などの伝染病、虫歯、戦争栄養失調症、精神神経症、それに自殺者(特攻を含む)と餓死者だ。

アジア各地に出征してた兵士の置かれた詳細を読むと、地獄の方がまだマシじゃないか…と思わせるような環境であったことがわかる。

餓死者も歴史上の戦史に類を見ない異常に高い確率で起こってる。餓死の最大の要因は、各地で日本軍の補給路が完全に断たれて、深刻な食糧不足が発生したからだ。

だから何でも口に入れて病気になって死ぬ他、先に死んだ兵士に食らいつくカニバリズム(人肉食)も度々起こってる。

ジャングルの中で、食べる物もなく痩せ細って、生きる屍のようになって、携帯する銃等の重さにも耐えきれなくなり、バタバタ倒れるか、衝動的に自害していく当時の日本兵を思うと、なんとも言えない悲しい気持ちになってくるね。

栄養失調と過度な疲労、ストレスから精神に変調(つまり狂う)をきたしてしまう兵も少なくない。海の上で戦艦に乗る兵士でも、”突然発狂者が続出“と記録が残ってる。特攻もほとんど戦果を上げてないし、軍が後半、取り入れた覚醒剤(ヒロポン)中毒は戦後も長い間続いた。

自殺は、世界と比べても開戦前から多くて、古参兵や下士官による私的制裁、つまり憂さ晴らしによる暴力的イジメ、シゴキが陸軍・海軍には日常化してた。つまり日本の陸海軍は兵士を自殺に追いやるような体質を持っていたといえる。

戦傷や栄養失調などで動けなくなった兵士には、”処置“ということで殺害するか、自決させた。日本軍自身による自国兵士の殺害も非常に多く発生している。

それでも頭目・軍上層部は、「“日本精神“でなんとかなる、神風が吹く、一億総玉砕」を叫び、「国家自体が体当たりを必要とする時代にまで進んでいる」としてたというから言葉がないね。

こういう事態を招いた日本軍の根本的な欠陥の一つとして、統帥権が完全独立してなかったことにある。明治憲法から続く権力の一元化を避ける複雑化した制度で、責任の所在が曖昧になってた。だから、“陛下のご聖断”によってのみ決めることが中々できない仕組みだったのだ。

いやー凄まじい。もういっぱいいっぱいになった。毎年、ヤスクニでコスプレする不敬な輩もこの日本軍の実態を知るべきだ。

この日本軍の悪しき精神主義は形を変えて現代にも残ってる部分があると思うね。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。