【邦画】「霧の旗」

先輩が教えてくれた、山田洋次監督の1965(昭和40)年の作品「霧の旗」。倍賞千恵子24歳の時の作品。

彼女にもほとんど笑顔がなくて、冷静は良いけど、とにかく暗い。

山田洋次監督にも、こんな暗いサスペンス作品があったなんてビックリ。もしや唯一?原作は松本清張の長編小説。

高利貸しのゴウツク老婆を殺害した容疑で捕えられた教師である兄の無罪を信じて、九州・熊本から上京した、倍賞千恵子演じる妹。
彼女は、高名な弁護士である大塚欽三(滝沢修)に調査と弁護を依頼するが、高い弁護士料を工面できないと判断した大塚は依頼をすげなく断る。
妹はシツコク粘るが、大塚は二度と会うこともせずに、そのうち兄は、獄中で、病気になって、汚名を晴らすこともなく死んでしまう。
東京のバーでホステスを始めた妹は、大塚の愛人(新珠美千代)に容疑がかかる殺人事件が起こったことを機に、大塚に対して執拗な復讐を始める…といったストーリー。

依頼を断ったから復讐をするなんて、一種の利己的ないいがかりではあるけど、倍賞千恵子が、真の感情を表に出さずに、大塚や検事等に対して、淡々と冷静に、もっともらしく偽証を行う演技はさすがだと思う。

最後は、自ら女を使って大塚を誘っといて、純潔を汚されたと医者の診断書と共に書面を検事に渡すなんて、メッチャ怖え…。

大塚は、決して悪徳弁護士などではなく、元依頼者である愛人を持ったりはしてるけど、信頼もある優秀な弁護士であるというところが、時に理不尽な世界でもある司法と裁判制度の“影”の部分を表しているのかも。

後半がちょっと弱いかなと感じたけれど、山田洋次監督にしては上質のサスペンス映画だと思う。

倍賞千恵子さん、上京した田舎娘から、男を操る陰のある女となり、最後は、身体を使って復讐する非情の女という、変化するフツーの女性を演じたら、右に出るものはいなかったかも。“さくら“だけでは惜しい女優さんだと思うね。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。