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9月20日 今日のこと

書いているうちに日付が変わりそうだが、今日のこととして。休日なのでゆっくりと起き、ご飯を食べ、食料の買い出しに行く。帰宅後、図書館に本を返しに行き、除籍本を何冊かもらってくる。ジャスパー・フォード『文学刑事サーズデイ・ネクスト』の邦訳全巻セットを見つけられたのがうれしい。古本で探すと結構値が張るんだなぁ。あとは『ミリオンダラー・ベイビー』原作者のボクシング小説だったり、ロス・トーマス『獲物』などを。ロス・トーマスのものは『五百万ドルの迷宮』の続編らしいので、まずそちらから読まないとな、と思う。その後帰宅し、夕飯を食べて後片付けし、お風呂に入ったあと読書をする。

ウィリアム・トレヴァー『ふたつの人生』を読む。中篇小説が二編入った作品集で、「ツルゲーネフを読む声」と「ウンブリアのわたしの家」が収録作である。「ツルゲーネフを読む声」は「本を読む人」、「ウンブリアのわたしの家」は「本を書く人」の話であるが、前者は狂気に囚われながら(あるいはそのふりをしながら)過去の恋愛に執着する女性の話で、後者は物語論における「信頼できない語り手」の一つの形をとり、一人称の主人公による、読んでいくとこれは主人公がヤバいんじゃないか、と思わされるような読み進めると実は狂気に囚われていた主人公、みたいなお話だった。もちろん話としてはそれだけじゃないし、色々と読んでいてほんわかしたりブルっときたりするところはあるのだが。「ウンブリア~」の相手が嫌がっているのがわかっているのに延々とこちらから話し続ける、みたいな描写は、トレヴァーの他の短編にもあるので、その系譜かな、と思ったり。正直な話、私は今のところ中編より短編の方が好きかな、といった印象。短編は「書かれないこと」によって喚起されるものがあったけれど、中編以上になると「書かれないこと」が少なくなってきて、その効果が十分に発揮されていないように感じた。ただ、全然トレヴァーの中長編を読んだことがないので、どちらが好みかの判断は保留しておいた方がいいかも。

続けて、読みたくなったのでウィリアム・トレヴァー『アイルランド・ストーリーズ』より「パラダイスラウンジ」を再読する。この短編は私が今まで読んできたトレヴァーの短編のうち最も好きなもののひとつで、作中における、ある事実の対比の仕方がとても効果的で素晴らしいと感じている。構造としてもきれいだし、お話としてもよくまとまっているし、読んでいて(トレヴァーには珍しく)嫌な気分にならないし、先ほども書いたように対比がうまく決まっているし、文句のつけようがない。トレヴァーの『アイルランド・ストーリーズ』と『聖母の贈り物』は珠玉の短編集だと思っているが、その中でも好きだなぁ、と感じる。「マティルダのイングランド」短編三部作も大好きだが。

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