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(ときには)過ぎたるはなお及ばざるがごとし(1) 『なぜ直感のほうが上手くいくのか?』ゲルト・ギーゲレンツァー著

『なぜ直感のほうが上手くいくのか?』ゲルト・ギーゲレンツァー著

直感のほうがうまくいく時はどんな時なのか、そのときに私達が判断する「経験則」とは何なのか、ということに切り込む書だった。

まずは「直感」「直観」「勘」の違いを明確にしたところで、

それぞれの違いがあることがわかったものの、この本のタイトル「直感のほうが上手くいく」ときは、どんな場合なのだろうか、という疑問が頭に浮かんでくる。

著者は、この本の第二章「(ときには)少ないに越したことはない」で、下の5つのパターンの場合には、直感のほうが上手くいく場合が多いと語っている。(本文より引用)

1.役に立つ程度の無知
再認ヒューリスティックが良い例だが、直感はかなりの量の知識と情報を凌ぐ働きをする。

2.無意識の運動スキル
熟達したエキスパートの直感は無意識のスキルに基づいているため、考えすぎるとスキルを発揮できなくなることがある。

3.認知限界
私たちの脳は、忘れたり、小さく始めたりといった、過剰情報処理の危険から私たちを守る為のメカニズムが内蔵されているようだ。認知限界が無ければ、人間は今のような知的機能を備えていないはずである。

4.選択の自由の矛盾
選択肢が多いほど葛藤が生まれる可能性は増大し、ひいては選択肢の比較が一層難しくなる。選択肢が多く、品揃えが豊富で、選択の幅が広いと、売り手と消費者のどちらも損をするポイントがある。

5.シンプルさのメリット
不確実な世界では、単純な経験則の予測力は複雑な法則のそれに勝るとも劣らない。

これらのケースに働くのが、「経験則」の科学用語「ヒューリスティックス(Heuristics)」である。

(このヒューリスティックスが偏ってしまうことをバイアスという。)

それぞれのケースを見ていこう。

1.役に立つ程度の無知

再認ヒューリスティックスとは、知らないからこそ賢い判断を行える場合のことだ。本書で紹介されている問題を紹介しよう。下の問題について考えてみてほしい。

ミルウォーキーとデトロイト、どちらの方が人口が多い?


この問題に100%正解したのは、なんと「ドイツの大学生」だった。

実際にウィスキーで有名な、ミルウォーキーは59万人

自動車産業で有名なデトロイトの人口は67万人だ。

しかし、アメリカの大学生に聞いたところ正解率は半分だった。なぜか、それは、それぞれの地域についての知識があったからだ。

しかし、ドイツの大学生が知っていたのは「デトロイト」だけで、「ミルウォーキー」に関して知っている学生はほぼいなかった。

知りすぎているからこそ、迷ってしまう。知らなければ、うまくいくことの例の一つだ。

2.無意識の運動スキル

プロのスポーツ選手は意識せずとも体が勝手に動く。プロでなくても何年か続けある程度の実力を持つことになったスポーツでは自動的に体を動かせるはずだ。

これはすべて「無意識」で体を動かすことができているのだ。

フライ球をキャッチする際にはたらく、「注視ヒューリスティックス」は私達を効率よくボールへと動かしてくれる。

通常、フライ球を取りに行くときに、ロボットで再現しようとすると、複雑な微分方程式を解かねばならない。

しかし、人間は微分方程式を頭に浮かべて計算することなく、キャッチすることができる。

人間の「注視ヒューリスティックス」はどう働くかというと、「注視角」(目とボールと地面の角度)を一定に保つように体を動かさせる。そうすれば、ぴったりボールの落下点に到着することができるのだ。

こういった無意識のプロセスによって、複雑な計算をせず単純な経験則でキャッチできてしまう!(なんてすごい!)

その反面、逆に「考えすぎてしまう」と、こうした無意識のプロセスに支障をきたすことがある。

それは、「イップス」である。

Wikipediaより引用

イップス (yips) は、精神的な原因などによりスポーツの動作に支障をきたし、突然自分の思い通りのプレー(動き)や意識が出来なくなる症状のことである。 本来はゴルフの分野で用いられ始めた言葉だが、現在ではスポーツ全般で使われるようになっている。
ーWikipediaより

スポーツの動作を考えすぎてしまうがあまりに動きにくくなってしまう。イップスは誰でも経験する可能性があるのだ。


残りの3つはまた次の記事で。





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