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数と量の結びつき(数の表象:Numerical Representation)

簡単な算数から、高度な統計学まで、人は「もの」や「こと」「数字」に置き換えて測ることで、物事を理解しようとしている。

では、次の問題を考えてみよう。

0から100までの線があった時、74はどのくらいか問われるのだ。

これは「数字」と「線の長さ」の紐づけ、量的な感覚がどの程度あるのかを測ることのできる実験出る。この実験は様々な研究者でされたのだが、

下記のように3つの仮説が立った上で、どのやり方がマッチしているか、実験が重ねられた。

一番左から、「対数曲線モデル」「誤差増加モデル」「線形モデル」の3つである。それぞれの特徴は下記のようになっている。

対数曲線モデル

予測値と実際に提示された数字とで、やや「予測値」が過大評価(つまり、50と聞かれたら60くらいで答えるように、予測のほうが大きい)モデルを想定している。

人の感覚の指標であるフェヒナーの法則もこのようになっていることから、フェヒナーの法則は数字と量の間の間隔でも同様であるという仮説が立つ。

誤差増加モデル

予測値と実際に提示された数字とで、その誤差が予測する数字が大きければ大きいほど生まれてしまう、というモデル。

1,2,3など、小さい数のときは簡単に数を把握でき、大きい数はコンナんだという前提に基づいている。

つまり、箱の中に1つや2つのボールだったら簡単に数えられるが、20個と23個の違いは見つけにくいということと同様に、数が小さければ予測が簡単で、逆に大きくなると難しくなる、というものだ。

線形モデル

これは、提示した数字と実際の長さとの誤差が小さいものである。確実に線分上の点を割り出すことができる、というものだ。

年齢が上がると量の認識はどのように変わるのか?

Siegler & Opfer(2003) の研究によれば、実験の結果は下記のようになった。

この研究は、2歳、4歳、6歳、大学生の四者を比較している。

結果として一目瞭然なのが、「数が大きくなると把握が難しく、大きめに予測する」対数曲線モデルがもっとも当てはまり、そこからだんだん認識が正確な線形モデルへとかわっていくことがわかる。

私達の認識は発達と学習に従って変化し、精緻化されていく。

数と量の関係性の認識においても同様にして精緻化されていく。そこで失われる感覚と、新たな感覚の二つの側面を考える必要があるだろう。

Carver & Shrager (2012) "The Journey From Child to Scientist. ", American Psychological Association
Siegler and Opfer(2003) "The Development of Numerical Estimation: Evidence for Multiple Representations of Numerical Quantity", Psychological Science, 14, p. 240.



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