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オーストラリアのファンドレイジングカンファレンス FIA Conference 2023を振り返る

2023年2月22日~24日にメルボルンで開催されたオーストラリアのファンドレイジング協会 Fundraising Institute Australia(FIA)主催のファンドレイジングカンファレンス FIA Conference 2023に参加してきました。

と言っても、純粋な参加者ではなく、運営ボランティアという立場で参加させていただいたので、運営側も含めて今までに参加した日本とアメリカのファンドレイジングカンファレンスとの違いなどにも着目しながら、振り返ってみようと思います。

1日目はオープニングとマスタークラスのセッションのみで、夕方以降はネットワーキング中心のアジェンダとなっていました。
アメリカのファンドレイジングカンファレンスでも「マスタークラス」と呼ばれるセッションがありますが、これはワークショップ等も含むファンドレイザー向けの実践的な内容のセッションのことです。
日本のカンファレンスでは、ファンドレイザー有資格者限定のセッションが設けられていた時期もあります。

オープニングセッションの会場内
オープニングセッションの様子

ちなみに、ファンドレイジングカンファレンスに限ったことではありませんが、欧米の文化圏ではこういったイベントにおいて、1日の間にコンテンツとしてネットワーキングの時間(新しい人と知り合うための時間)があるのも特徴の一つとして挙げられます。日本の場合は、ネットワーキングの機能は懇親会にまとめられてしまったり、ワークショップを行うセッション内で参加者同士のやり取りが発生するくらいな印象で、そこが日本と海外のカンファレンスの違いのようにも感じます。


参加したセッションの感想

運営ボランティアとしての役割もありつつ、合間を見て、内容を聞けたセッションの感想を残しておきます。

セッション会場の様子

How to grow your fundraising program from 300K to 10M in 6 years

6年で年間1000万オーストラリアドル以上の寄付が集まるようになったフードバンクとコンサル企業との協働事例。DM・SNS・メルマガ・寄付ページを活用したり、ブラッシュアップを重ねながらより良いデザインやメッセージをつくっていくプロセスは日本とほぼ同じ。
ただし、オーストラリアと日本の習慣の違いからくる相違点としては、EDMの次にSMS(ショートメッセージ)を挟んで寄付ページに誘導する点。日本では使う機会があまり無いですが、オーストラリアではSMSで日常的なコミュニケーションをします。これはカンファレンス参加時点で4ヶ月の生活を経た実感から腑に落ちました。日本のNPOの場合は、海外からの寄付集めのプロセス設計時に役立ちそうに思います。

Why aren't there more fundraisers on For Purpose Boards?

理事会をテーマにしたパネルセッション。アメリカのファンドレイジングカンファレンスにもアクティブな理事会を題材にした似たようなセッションはありましたが、それらと同様に、自分の専門性をいかに組織に還元するかという視点で、理事としてのプロ意識を持ってそのNPOにコミットすることを3人のパネリストが語っていました。登壇者全員が女性だったのも興味深かったです。
と思いながら、セッションを聞いていたら、質疑応答で自組織の理事会が高齢男性がマジョリティでどうしていくのが良いかというお悩み相談的な質問をされた方がいて、パネリストが質問者本人をエンカレッジする回答をされていて、オーストラリアでもそういう組織・理事会はまだまだあるんだなぁと感じました。

Corporate Partnerships : Together, we're stronger

2022年、オーストラリアのチャリティアワードを受賞したNPO"Bully zero"の企業とのパートナーシップによるファンドレイズ事例の紹介でした。若者のいじめを無くす活動から、大人向けに職場でのいじめに対応する新規事業をコロナ禍で開発し、年間50万ドルの新たな収入源に。その事業開発のプロセスにコンサルタントが入っていたことには成程と思いつつも、活動対象を若者達だけに留めなかった意思決定と組織の柔軟性に学ぶ点は多いと思いました。

協賛企業から見える関連サービス・プロダクトを成長させる必要性

その国のソーシャルセクターを見る判断材料の1つとして、協賛している企業数がどれくらいあるかを見てみると、見えてくるものがあります。
オーストラリアのこのカンファレンスでは50社前後、私が2019年に参加したアメリカのファンドレイジングカンファレンスでは100社以上が協賛およびブース出展していたので、それだけの数の企業がファンドレイジング関連のサービスやプロダクトを提供していることが日本との大きな違いと言えるでしょう。
個人的には、日本のソーシャルセクターの今後にとって、サービスやプロダクトがどれだけ成長していけるかが大事な要素の一つだと思っています。

協賛ブースエリアのマップ

ちなみに、協賛ブースエリアでは、ネットワーキングのためなのか、アルコール類を含む飲食が提供されながら参加者や協賛各社が交流をしていたのが印象的でした。

協賛ブースエリアの飲み物提供コーナー
協賛ブースエリア

総括

日本のファンドレイジング(カンファレンス)と共通する部分、似ている部分、違う部分を色々発見できて良い経験になりました。

カンファレンス中には、一緒に参加していた認定ファンドレイザーの山崎庸貴さんの働きかけで、オーストラリアのファンドレイジング協会のCEOやスタッフの方々ともご挨拶をさせていただきました。

親日家が多かったり、流暢ではない英語を話す人の方が多い社会でもあることから、日本のファンドレイザーが活動しやすそうに感じたので、日本とオーストラリアのファンドレイザーやソーシャルセクターも交流が進んでいけると良いなぁと思っています。

ちなみに、次回は2024年2月下旬にブリスベン開催だそうです。
ブリスベンがある州では、コアラを直接触ったり抱っこしてもOKなので、ぜひ行きたいところですねー(笑)

オーストラリアのファンドレイジング協会のCEOと

記事をお読みいただき、ありがとうございました!もしよろしければ、サポートいただけると日々の活動の励みになります!これからも日本の非営利活動のお役に立てるように、様々な機会に参加して得た海外のソーシャルセクターの情報や知見を発信していきますので、今後ともよろしくお願いいたします!!