新型コロナウイルスに関係する内容の可能性がある記事です。
新型コロナウイルス感染症については、必ず1次情報として 厚生労働省 首相官邸 のウェブサイトなど公的機関で発表されている発生状況やQ&A、相談窓口の情報もご確認ください。※非常時のため、すべての関連記事に本注意書きを一時的に出しています。
見出し画像

緊急提言:災害時雇用維持シェアリングネットワークの必要性

●はじめに

コロナウィルスは災害です。
災害時には一般生活はもちろん、企業活動にも多大な影響を及ぼします。企業においてのマイナス影響はわかりやすいところで売上の減少です。そして、売上減少をリカバリーする手段のひとつが販管費の削減になります。多くの企業では販管費の6〜7割が人件費となっており、企業存続の有効な手段として、しばしば雇用調整、即ちリストラが実施されてきました。

本記事はこの手段を否定するものではありません。
しかし、災害時に各企業が同時多発的に人員解雇を行うと、日本の完全失業率が増加し、日本全体に社会不安が広がり、購買意欲減少、景気悪化…という負の連鎖が起こり得ます。そう考えると、災害時には、もはや自社ファースト・自分ファーストの思考のみでは危うく、法治国家としての権利や義務だけではない、社会的道義的責任の名のもとに意思決定する必要性があるとも考えられます。マスクやトイレットペーパーの買占めによる転売問題なども本質的には同じかなと思ったりします。

画像4

出典:厚生労働省ホームページ

そこで、企業存続のために雇用を維持しつつも、人件費の一時的な削減を行う手法として「災害時雇用維持シェアリングネットワーク」の構築という、当社が手探りで始めた取り組みが、もしかしたらこの未曾有の事態を切り抜けるひとつの活路になるのではと思い、本記事にまとめることにしました。災害の影響を受けている各社にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。

●背景

私は「アソビュー!」という週末の便利でお得な遊びのマーケットプレイスを運営する会社の代表をやっています。旅行・週末のおでかけ・デートなど様々なシーンでご活用頂いています。

言い換えると、緊急事態宣言から始まった外出自粛要請の影響を受けているど真ん中のサービスとも言えます。創業から10年目を迎え、順調に流通総額を増やし、IPO準備を進めていました。しかし、本災害によりまさに急転直下、計画に対しての流通総額は5%程度(-95%)と非常に苦しい状況に陥っています。もともと、当社はエクイティ・ファイナンスにより市場シェアを拡大してきたフェーズであり、内部留保乏しく、この状況が続くと計画通りの販管費の捻出はもはや難しい状況に陥ります。

<当社の状況>
・緊急事態宣言以降、市場環境が急転直下
・主力サービス「アソビュー!」の流通総額がマイナス95%
・エクイティ・ファイナンスを成長原資とし、内部留保乏しい
・災害影響下の企業に対し、ベンチャーキャピタル各社の判断長期化
・販管費(主に人件費・広告宣伝費)60%超の削減が必須


しかし、この観光・レジャー産業の需要は必ず回復します。それは人類の史実からも明らかで、かつて人類はウィルスに敗北したことはなく、かつ、経済不況も永続したことはありません。近年では観光産業においてはSARS・リーマンショック・東日本大震災からも復活しています。ですから、来たるべき需要回復期に対応していく準備も同時に考えておく必要があります。

また、人が提供するサービスを作るIT企業のコアコンピタンスは、そこで働く「従業員」と「企業カルチャー」だと思っています。当社はこれらを獲得・醸成していくのに丸9年の歳月を掛けている訳ですが、これを一度ゼロにして、需要の回復期にまた一からやり直すというのは、相応の時間を要します。加えて、とりわけ外食、観光・レジャー産業においては、地方は特に有効求人倍率が高く、採用できない時代が続いていましたから尚更です。

●具体的な方法

前置きが長くなりましたが、ここから具体的な方法を提言します。
災害時でも雇用を維持しつつ、かつ、販管費の削減を実現する方法は企業間の垣根を超えた、人材の流動化を加速させるネットワークの構築だと思います。具体的には、災害時に一時的に雇用を維持できない企業と、災害時だからこそ一時的に雇用を必要とする企業間でのスピード感ある人材の異動を「在籍出向」という形態で実現します。これを「災害時雇用維持シェアリングネットワーク」と呼ぶことにしました。

在籍出向とは、出向元の企業の従業員としての籍を残したまま、他の出向先企業で働く形態を指します。雇用契約は両社で持ち、業務遂行における指揮命令権は出向先が有します。そして今回のような災害時の費用負担は出向先の負担とします。派遣形態との違いは、営利目的の事業として人材の提供が行われていないことです。事業としての人材の提供は、職業安定法第44条に抵触するため注意が必要です。

在籍出向と派遣の違い在籍出向

災害時の短期的な雇用維持と販管費削減の対応策として「雇用調整助成金」は非常に有効ですが、「上限金額8330円/日」と「上限日数100日間」に課題が残ります。企業は従業員に対して6割以上の休業手当を支払う義務がありますが、国からの助成はあれど、従業員平均賃金が比較的高い会社は負担額が多くなります。

雇用調整助成金簡易シュミレーション
雇用調整助成金

そこでこの「在籍出向」の手段を活用する訳ですが、これを実現するための重要なポイントは「異業界・異業態で職種重複率の高い10社程度でのネットワーク構築」にあると考えています。以下にそれぞれまとめます。

 □異業界・異業態について

災害時の企業における経済的な打撃は、同業界・同業態では近しい影響がある可能性が高いです。

業界・業態・業種について業界業種

例えば、本災害において甚大な被害を受けている業界は、先日の安倍総理の3/28の会見の言葉を拝借すると「旅行・運輸・外食・イベント」業界です。これらはどの業態でも軒並み影響を受けている可能性が高いです。外食業界ではイタリアンもフレンチも業態問わず窮地な状態です。
他方、コロナウィルスという災害により生活が激変し、追い風になっている業界・業態も存在します。小売業界ではスーパーやドラッグストアーなどがそれに該当するでしょう。IT業界ではおうち需要の増加からEコマースやオンラインコミュニケーションのサービスも活況だと思います。また、医療業界・物流業界なども該当するはずです。
自社の有事が他社にとっては対岸の火事という事態が起こり得るため、出来る限り業界・業態は分散してグループを組むことが望ましいと考えます。実際、当社の従業員の受け入れに名乗りを上げてくれた企業も、上記の業界の企業が中心です。(各社の掲載許可が取れたら、こちらか別の方法で共有したいと思います。)

 □職種重複率について

職種とは小売業界では販売員、商品企画、スーパーバイザー(SV)など、IT業界ではエンジニア、プロジェクトマネージャー、カスタマーサポート(CS)といった職業の種類を指します。重複率とは、自社と他社に所属する職種の重複率・被り率です。これが高ければ高いほど相性が良く、受入可能性が高い企業と考えられます。
もし仮に、完全に同職種ではなくとも「職能が近しい職種」と捉えるとさらに可能性は広がります。実例として、英国では航空業界の客室乗務員が医療現場の後方支援に回ることになりました。常にお客様の安心・安全・快適な空の旅を支える仕事が、医療現場で医師や看護師を支える仕事を担う訳ですが職能観点では非常に親和性が高い好事例だと言えます。

 □10社程度について

災害時の対応はスピードが命です。
多くのステークホルダーと調整して進めていくプロセスはそれだけ時間がかかります。ですから、それほど多くない企業数でのネットワークが現実的かと思います。実際に当社が動いて進めているのも10社程度のネットワークになります。さらに複数の承認プロセスを待っていられる状況でもないため、理想は経営者同士、最低でも決済者同士でのやりとりが理想です。

上記のポイントを抑えていくことで災害時雇用維持シェアリングネットワークの実現性が高まり、雇用維持と販管費削減による企業の存続という目的を達成しやすくなるのではないでしょうか。

●運用ルール

ゼロからルールを構築していくのは一定の時間がかかります。正解はそれぞれである前提で、ここでは当社が設定したルールを共有しますので、こちらをベースに進めていただければ時間が節約できますのでご活用ください。

 □ルール1:費用負担について

 ・基本:月収+法定福利(月収×14%)
 ・事務手数料(実費) <4/22(水)追記> <5/23(土)追記>
  ※労災保険のみ出向先で加入

出向先の費用負担はシンプルにこれで良いと思います。
そもそも在籍出向は派遣と異なり、業としての人材提供はできません。かかる実費分のみ両社あるいは出向先が一部負担する、などは考えられる範疇ではあります。
<4/22(水)追記の説明>
上記にも一部記載ありますが、企業・職種次第ですが、出向元が業務に必要な設備(PCなど)やスキル向上支援やモチベーション維持の施策などを講じる場合、実費分を出向先負担とするなどは可能性としては考えられます(無論、逆も然りです)。要するに本スキームの運用に伴う事務的な工数の実費分は、費用負担の範囲として検討できます。大切なのはそれらを事前に実費として明記しておくことです。ともかくスピードが優先です。
<5/23(土)追記の説明>
出向には従前から記載している通り、営利目的ではない人材の提供が求められます。さらに本取り組みはあくまでも雇用維持を目的としています。この事務手数料という記載は、各社の契約書の内容・文言次第では、職業安定法上の規定の遵守に懸念を残す可能性を否定できないため、(一社)災害時緊急支援プラットフォームの顧問弁護士と相談の上で、削除することにしました。

 □ルール2:期間について

 ・1年間(試用期間3ヶ月)

出向先企業にとって、業務に慣れてしっかりと成果を出してもらうには一定の期間が必要です。他方、災害時の事態の収束を把握し、需要の回復を待つには数ヶ月以上の時間が必要です。双方の事情を考慮し、出向期間は1年間と設けておくのが望ましいと考えます。とはいえどうしてもミスマッチは発生しうるため、試用期間の3ヶ月は必要です。

 □ルール3:期間終了について

 ・出向転籍可(引き抜き可能の原則)
 ・引き継ぎ期間考慮(最大3ヶ月延長可)

出向期間が満了する際に、出向先企業と出向者双方の意向があった場合、出向転籍を可能とします。一年間他社で働き、双方感情が移ろうことはあり得ることなので、初めからルール設定をしておいたほうがシンプルです。また出向先としても転籍の制限がないことは魅力に映る場合も多くあると思います。この意向の提出は、出向から9ヶ月時点を目処として行われると良いでしょう。
また、出向者が戻る際に業務引き継ぎの観点から、どうしても12ヶ月で終了しない可能性があります。その場合は採用・育成・引き継ぎの期間も考慮できると安心です。これも事前に設けておくと良いルールです。

 □ルール4:受入の進め方について

 ・事前提出書類 →簡易レジュメのみ
 ・面談は1回 →【企業】志望動機求めない【出向者】モチベーション必須

必要な進め方は2ステップで、実務責任者が簡易レジュメを確認し、実際に面談を行い、最終意思決定を行うというプロセスです。
有事の際の人材の流動性を担保する仕組みの中で、カチッとした履歴書・職務経歴書の準備は実は大きな労力が掛かり、足かせになります。それらを求められた出向者としても、気持ちの整理が付ききらず筆が進まないという心理的ハードルもあるはずです。この履歴書・職務経歴書の不必要は会社のカルチャーにもよると思いますが、初めから簡易的なものに留めるというルールがあるとオペレーションがスムーズです。
実際に当社が活用した簡易レジュメは以下添付の項目のみで各社にご理解頂きました。

簡易レジュメ(参考)履歴書

また、面談の際のルールも必要です。
前提として、面談に参加する全てのステークホルダーがこのネットワークの意義を理解した上で進めていくと非常にスムーズです。従業員としてはモチベーションを持って働いていたところ、災害が起きて急転直下で出向先の他社業務を遂行していく訳ですが、平時の時同様にビジネス理解と志望動機、みたいなところまで瞬時に辿り着けるかは甚だ疑問が残ります。
そこで、過去の経験と実績は聞けど、出向先の市場理解や競合優位性、志望動機は求めないというくらいの仕切りがある方が敷居が下がります。
他方で、出向者もこのネットワークの意義を理解した上で、出向先の事業繁栄に最大貢献するマインドセットは当然必要です。もちろん「所属企業の決定で呼ばれたからとりあえず来ました」という人とは誰も一緒に仕事をしたいと思いません。

 □ルール5:ネットワーク全体の理解・協力

お察しの通り、これは出向元・出向先・出向者、3者の信頼関係が成立した上で初めて成功するスキームと言っても過言ではありません。企業間の契約は経済合理性も踏まえて意思決定されていくので比較的難易度は高くないのですが、一番重要となってくるのは出向者個人の感情と理解です。

災害が発生し、社会情勢が変わると事業戦略が変わり、それに伴い、組織体制と人材要件が変わります。そして、それに応じて適切な配置をしていくというのは経営者にとっては経営戦略であり基本的な考え方です。
しかし、自社に残り既存の事業を担い雇用を継続していくメンバーと、このスキームを活用して雇用を継続していくメンバーが二分する以上、それぞれ感情が芽生えます。必要である・ない、好き・嫌いという解釈が発生していきます。全くもってそうではなくともです。人間ですから当然です。
これに対しては、経営者が出来得る限り情報を開示し、真摯に、丁寧に説明をしてく必要があります。私もこの説明に相当な時間と労力をかけましたし、幸いなことに当社のメンバーはこの状況を理解し、チャンスとして前向きに捉えてくれたと思います。

●まとめ

この他にも様々な有益な手段があるでしょうし、全ての会社がこのような対応をする必要はないかもしれません。しかしながら、少なくとも私の周りでは雇用維持か解雇か、の2言論でしか語られていませんでしたので、近しい業界の方々の一助になれば幸いです。
企業のリーダーとして、企業の生き残りは当然大切ですが、同時に、社会のリーダーとして行動していけると、この国はもっともっと前進していけると信じています。全国民総災害時ですが、共に頑張っていきましょう!!

●おわりに

みなさん、最後に正直なお願いです。
コロナ辛いですよね?おでかけできないこと、自由に人に会えないこと、こんなに辛いって知ってましたか?私は知りませんでした。
だからいつまで続くかはわかりませんが、コロナを乗り越えた後、私たちアソビューがみなさんの週末を、旅行をワクワクで満たせるように頑張ります!今より最高の日々を提供できるようにします。そのためには、会社の代表としてなんとしても企業を存続させ、雇用を維持していかなければなりません。

 お願い1:このネットワークの仲間になってください(´;ω;`)

当社の採用基準のひとつに「利他」があります。それは「誰かのために、が自分の幸せ」と思える考え方・価値観のことです。それ故、当社のメンバーは本当に性格が良いです。今まで一度たりともスキル・実績のみで採用したことはありません。私の自慢の仲間です。「このスキーム乗るよ!」「成長機会を提供するよ!」「ちょうどうち忙しいよ!」という企業の方がいらっしゃいましたら、ぜひお気軽にご連絡ください!

 お願い2:仕事をください( ー`дー´)キリッ

この一ヶ月で社会情勢は一変しました。私たちが今まで提供してきたサービスもその渦中で大きな打撃を受けています。しかし、私たちが培ってきた経験と実績が色褪せることはありません。それらをクライアントワークを通じて惜しみなく提供させていただくことで、社会に対して価値貢献していき続けたいと考えています。

コンサルティングファームやシステム開発・WEB制作会社などでクライアントワークの経験を持ちながら、当社で自社の事業・サービスを成長させてきた経験豊富なメンバーが多数います。ぜひご相談ください!

●追記 具体的アクションについて

こちらnoteにまとめました。沢山の反響を頂き、どうせやるなら、しっかり組織化してなるべく多くの雇用維持を実現していくことに決めました。ただし、私も渦中です。多くの方のサポートの元で善意のネットワークを運営し、成果を出しに行きたいと思います!詳しくはnoteを見てください。


この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
ありがとうございます!!Twitterフォローして頂けたら嬉しいです!
440
アソビュー!という週末の便利でお得な遊びのマーケットプレイスを運営しています[http://asoview.com]。 観光庁アドバイザリボードもやっています。ベンチャー経営、遊び(主に昼間)、旅行、地方創生、サウナが得意技です。

こちらでもピックアップされています

note編集部お気に入りマガジン
note編集部お気に入りマガジン
  • 18834本

様々なジャンルでnote編集部がおすすめしている記事をまとめていきます。

コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。