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NHKドキュメンタリー『逆転人生』。V字回復の舞台裏にあった挫けそうなB面の感情。

■はじめに

4月12日(月) 22:00〜22:45  NHK総合にて45分間のドキュメンタリー番組『逆転人生』に登場します。

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「どん底からはい上がった人々の、真実の物語」というタイトルが付くこの番組。先に断っておきますが、これは私だけのお話ではありません。アソビューの仲間とそのステークホルダーの皆さんと共に紡いだ物語です。この放送はコロナ禍でまとめた2つのnoteが発端になっています。

しかし、これらの理路整然とした奇跡の復活劇だけでは「真実の物語」は成立していないことに気が付きました。

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その昔、音楽を聴くためにカセットテープというものがありました。今は音源のデジタル化が当たり前となり、様々なサブスクで音楽が簡単に入手できますが、私の幼少期はそれが主流でした。

カセットテープにはA面とB面があり、両面に曲を収録して発売されていたので、A面とB面があってこそ1つのカセットテープが成立していると言えます。

過去のnoteではリーダーとして、絶体絶命のピンチを乗り越えるべく、勇敢で、ポジティブな様を書きました。その結果、多方面から様々な反響を頂きました。しかしそれはA面だけのお話。今回の1ヶ月にも及んだ密着取材で、私自身が普段表に出すことは決してないB面の感情に向き合う機会を頂きました。

A面とB面があってはじめて「真実の物語」が成立するのだとすると、私はまだA面のお話しかしていない。本noteではV字回復を成し遂げた力強い発信の裏側にあった、もうひとつの、不安で、孤独で、葛藤の中で進んでいった不格好なB面の感情を、記録として記載したいと思います。

これは一握りの、力強い、選ばれたリーダーとチームが成し遂げた奇跡ではありません。どこにでもいる普通の、葛藤を抱えたリーダーとチームが成し遂げた物語です。その真実が、どこにでもいる普通の…と思っている多くの皆さんの力になれば、これほど嬉しいことはありません。

■B面の感情

 1.不安

2020年3月上旬あたりからステークホルダーの方々から日々の連絡が増えていきました。

「どうなりそうですか?」
「どうするつもりですか?」
「やばくなると思いますよ?」

そんな予想は日々の報道と流通額の推移を見ていれば自分でもわかっていました。しかし、それらの言葉は日に日に具体的に、そして強くなっていきました。

「お出かけや旅行すること自体がなくなる!」
「金融市場がクラッシュする!」
「会社の売却先を検討したほうがいい!」

嘘なのか本当なのか、そんな言葉が電話・メール・Messengerなどを通じて各所から集まってきました。あの頃はみんな不安で動揺していました。

どうなってしまうのか。
何をどうすれば良いのか。
そんなことはこっちが聞きたい。
せめて提案がほしい。
時間が欲しい。ちょっとまって欲しい。
かけて欲しい言葉はそれじゃない。

「信じてる、応援してる、一緒に頑張ろう」

そんな寄り添ってくれる言葉はどこにもなく、各所からの連絡に追い詰められ、不安で押し潰されそうでした。

 2.孤独

会社は2月末から早々にリモートワーク体制に切り替えました。ボードメンバーは私以外は全員子どもがいる状況で保育園・学校が閉鎖。共働きだと役割分担が難しく、家だと仕事ができないメンバーの苛立ちが伝わってきました。独り身で身軽な自分がやらなければいけない。毎日一人で自転車でオフィスに出社。誰にも会わない日々が続きました。

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当社オフィス(2020年3月撮影)

オフィスに居たのは、何かあった時に自分が目印になる場所にいないといけない気が勝手にしたから。そんな合理性は一切無かったのですが。

リモート会議中にオフィス解約の議論。賛成多数。初めて自社で契約をした間借りじゃない誰も居ないオフィスの窓から、本来賑やかになってたであろう新国立競技場を見つめながら、一人で立ちすくんでいました。

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オフィスから見える新国立競技

 3.葛藤

数字がゼロ行進していくなかで、積み上げてきたものが予期せぬ出来事で終わりを迎えることを知り、先が見通せない状況で「倒産」の文字が頭をよぎりました。

終わったら楽になるかもしれない。
倒産か、縮小か。
せめて、縮小したら変数が減り、経営の難易度は下がる。

倒産したら従業員はどうなる?
ご期待頂いているお客様は?
連帯保証の借入はどうする?
縮小して同じことまた10年頑張れるだろうか?

一度も諦めなかったといえば格好が良いかもしれません。しかし、実際のところは最悪の事態が常に脳裏にちらつきつつ、葛藤を抱えながらの日々でした。

 4.無力さ

業務委託・アルバイト・インターンの方々とは契約延長の提案ができず、3月末ですべて契約満了、解散となりました。古参の業務委託やアルバイトのメンバーには私から直接連絡しました。

これは創業して一番悔しく、不甲斐なくて、申し訳ないと思った出来事でした。そんな状況の中、多くのメンバーが理解を示してくれ、中には励ましのメッセージをくれるメンバーもいました。それが尚更、不甲斐さを痛感させました。せめて一言文句を言って欲しい。なんなら罵倒でも良い。己の無力さを痛感した瞬間でした。

 5.怒り

これはいったい誰のせいなんだ?

段々と悔しさがこみ上げてきました。

こんなの不条理だ。
積み上げてきたものがこんなに一瞬にして無くなっていいのか?
そもそもこの感染症って一体なんなんだ?
感染症で終わるはない。
嫌だ。やってられない。
それは自分の語れる起業家人生になるか?
全力でやったか?
本当に何もできないのか?

悔しさは段々と強くなっていき、いつしか怒りに変わっていきました。怒りは時に人を動かすモチベーションになります。この時の私の原動力はここにありました。

このままじゃ終われない。
ダメだったらその時だ。

 6.かすかな希望

<運転資金(ランウェイ)の精査>
全ての経費項目を自ら確認しました。その時、有事の今となっては削減できるコストがある事に気が付きました。また、支払いの多少の遅延を承諾してくれる会社も出てきました。販管費を切り詰めるだけ切り詰めたら、キャッシュアウトまで7ヶ月。さらにネガティブシナリオの中でも妄想が全部うまくいったら、この有事が続いても2年は生き延びられるかもしれないという微かな光が見えてきました。

<雇用シェア>
販管費削減の手段として、雇用シェアのアイデアを思い付きました。

でもそんなアイデアを受け入れてくれる会社があるのか不安でした。恐る恐る経営者の友人を食事に誘い、構想を共有してみました。返ってきた第一声は、「なにそれ、めっちゃいいじゃん!うちがやるよ」。社員を解雇をせず、生き延びる可能性があるかもしれない。かすかな手応えを感じた瞬間でした。

その後、出向受入先が水面下で増えて行った時を同じくしてnoteを公開しました。情報がシェアされていく中で、応援してくれる人が沢山いることを知りました。ひとつひとつの応援が嬉しく心の支えになりました。

特記すると、まずは一番はじめの灯火になってくれたのはランサーズCEO秋好さん。上記の雇用シェアの相談時の全面的な承認がなかったら、この物語はありませんでした。
Marketing Force代表 西口さん。定期的な打ち合わせで「良いね。素晴らしいね。山野さんなら絶対大丈夫」と言い続けてくれました。稀代のマーケッターに褒められ続けたことが、どれだけ励みになったか。
そしてオイシックス・ラ・大地代表の高島さん。真っ先に連絡をくださり「本当に会社の存続が危うくなったら俺がなんとかするから遠慮なく言って」とかけてくれた言葉が心の最終防波堤でした。
Z venture capital代表 堀さん・COO 都さん。リード投資の意思決定をしてくれた2020年6月3日は一生忘れません。
その他、愚痴を聞いてくれた83年世代経営者の仲間たちにも感謝です。

■人にスポットライトを当てるヒーロー

そもそも、このカッコ悪いエントリーをなんでしようと思ったか。それは逆転人生のディレクターの田中さんの存在があります。田中さんはおよそ1ヶ月もの間、会社か私の家にいました。

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ディレクターの田中さん

その間、彼がずっと求めきたのは、V字回復を成し遂げた力強いリーダーの意思決定ではなく、人としての私の感情でした。広報的な格好付けたA面の言葉を発する度に、

「本当はどういう気持ちだったんですか?」
「辛かったですよね?」
「本心を教えてもらえますか?」

と、しつこいくらいに喰らいついてきて、他人に言いたくないB面の感情を聞いてこられました。そんなことは他人に簡単に話をすることでもないので、初めはすごく嫌でした。でもいつしか田中さんの真摯で真面目な姿勢に心を許すにようなりました。
密着取材中に田中さんに聞いたことがあります。どんな想いでこの番組をやっていますか、と。彼はこう教えてくれました。

「勇気を与えたいんです。この状況下で『ピンチをチャンスに』と言われて傷ついている人達がどれだけいるのか。現実はそんな言葉で終わらせられるほど単純なものじゃないと思います。今回の山野さんたちの真実に触れ、伝えることでどれだけの人が救われるのか、そのために、決断や感情に触れ、そのヒントを見つけていきたいんです。だから本音を教えて下さい」

人は真実に心を動かされるのだとすると、真実とはA面とB面の両方が必要だったのです。田中さんの情熱に心を揺さぶられました。

■おわりに

企業のリーダーとして、49%の負の感情と51%の責任感と希望の間でゆらぎながら、挫けそうになりながら、かすかな希望のかけらを集めてなんとか生き延びてきました。チーム全体で、ステークホルダーの皆さまと共に物語を紡いできました。

どんなに完璧に見える人も、強く見えるリーダーも、当たり前ですがみんな人間であり、常にB面の感情を抱えて生きています。役割上でそれを伝えたくなかったり、距離の関係で感じられなかったりするだけです。

「電光石火!コロナ禍で売上ゼロからの逆転」これは田中さんの渾身のドキュメンタリー作品。主演はアソビュー株式会社とステークホルダーの皆さんです。この作品がコロナ禍を生き抜く皆さんにとって少しでもヒントになれば幸いです。

■緊急告知

放送終了後、4/12(月)22:50〜 Clubhouseでお友達(先輩)と公開裏話会を開催します。ご興味ある方は是非遊びに来てください👋

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