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「If I Ain't Got You」プロデューサーが解説!綾戸智恵ニューアルバム「Hana Uta」その5

アルバム・プロデューサー大矢朋広が楽曲ごとに制作のこぼれ話を交えて解説するスピンオフ的ライナー・ノーツ。今回はアリシア・キーズ「If I Ain't Got You 」です。歌詞については綾戸智恵が初回限定盤CDでたっぷりと書いていますので、ここではそれ以外の話をしていきます。

If I Ain't Got You

綾戸さんこの曲を歌うのを聴いたのはいつだっただろうか。アルバム「DO JAZZ GOKKO」の頃にはまだ歌っていなかったので、4年前くらいだったかな。「ちょっと練習してきたからこれ聞いてくれるか?」とリハーサルの合間にステージでさらっとワンコーラス演奏してくれたんじゃなかったかな。「最近の曲とか、やっぱりやった方がいいよね」と言ってたと思う。その時で既に10年以上前の曲だから、そこは曖昧に返事をしたような(笑)。すごく格好良かったんで「やりましょう!」と言ったのですが、”もうちょっと練習してから”ということで収まりました。その後、宮川(純)くんだったか(山田)玲だったかに二人にだったか「すごく良いじゃないですか!」と言われた記憶があるので、丸の内コットンクラブのRHでやったかもしれない。鈴木正人さんか大槻カルタさんにも気に入ってもらった覚えがあるので、うーん、それはどこでやったのだろう?でも、全てリハーサル。お客様の前でやったのはコロナ禍の直前にやったかなー、やらなかったかなー。もったいないと思っていました。

僕が初めて綾戸さんを聴いたのはEWE社長の守崎さんから「今度この歌手をやるから頼むよ」といってカセットテープを渡されたとき。1997年だったかな。レコーディング用のデモテープとかではなく、たぶん個人でリリースしていた「But Not For ME」か「Only You」だったんだと思います(記憶がおぼろげ)。その時の印象は”凄いジャズ・シンガー”ではなく”誰?この黒人みたいに歌う人”だったんです。ジャズよりもR&Bやロックが好きな僕にはそっちの方が入ってきちゃったんですね。それは今でも思います。Voもピアノも黒っぽいなと。だから、アリシア・キーズのこの曲を歌うというか歌いこなす綾戸さんは、悔しいほどにクールでソウルフルだなと思いました。
 

それくらい似合っている曲だと思うのですが、「これ、やった方がいいよね」とか「アルバムに入れたほうがいいよね」とか結構念を押されました。コチラ的には太鼓判なんですが。その証拠に先行配信の曲に選びましたから。”ジャズ・シンガー綾戸智恵がマービン・ゲイとアリシア・キーズで良いのかな?”なんて迷いながら。

少しレコーディングの話を。この曲は他の曲とVoマイクが違います。サウンド的にもR&B臭を漂わせたかったこともあって、このアルバムで多く使ったノイマンのヴィンテージ・マイクではなくSure社のSM7Bというマイクを使っています。オリジナルのSM7はマイケル・ジャクソンのアルバム「スリラー」のボーカル・マイクとして有名です。これは菊地成孔さんのプロジェクトをやっている時に、エンジニアの赤工(隆)くんとラップが格好良く取れるマイクなにかないかなあ、という話になって彼が探してきたものでした。ダイナミックマイクなんで、皆さんがよく知っている同じSureのSM58(ゴッパー)と同じ形式のマイクです。この曲を録る時、ちょっとマイク変えたいな、持ってきてないよね?と言ったら赤工は持ってきていなかったのですが、なんとスタジオのアシスタント・エンジニアさんが個人で持っていたのです。人気マイクですね~。貸してもらったらとてもバッチリ。二人で思わずニンマリです。
 
この曲もきちんとアルバムに収録したことで、これからはステージで定期的に披露されていくことになるでしょう。いつまでかは綾戸さんしか、いや綾戸さんでさえわからないとは思いますが、しばらくは楽しめるはずです。良かった、良かった。

アリシア・キーズの2ndアルバム「The Diary of Alicia Keys」(2003年)に収録され2ndシングル曲として2004年2 月17日リリースされました。歌手アリーヤの死や9.11同時多発テロなど彼女の周りで起こった様々な出来事に触発されて作ったというこの曲は、米国ビルボード ホット100で4 位を獲得、R&Bチャートでは2 年連続でトップとなり、アリシアは2005年のグラミー賞でBest Female R&B Vocal Performanceを受賞しました。

綾戸智恵 ニューアルバム Hana Uta 2022.11.1 ¥4,500(消費税込み) MYDO 006 発売元:㈲まいど

ミュージカル「レ・ミゼラブル」の「I Dreamed a Dream」で幕を開けアリシア・キーズの「If I Ain't Got You」やこの時代にもう一度歌いたかったマービン・ゲイの「What's Going On」、自身のリスタートと重ね合わせた「Let Me Try Again」、スキャットを軽快に聞かせる「Billie's Bounce」、ブルース・ロックに挑戦した「I Love You More Than You'll Ever Know」など、JAZZ、Blues、Gospel、Soul、Pops、バンドあり弾き語りあり、綾戸知恵が65歳でお届けする節目のアルバムです。オフィシャルサイトにて絶賛発売中!11月18日(金)にはグローリアチャペル キリスト品川教会にて共演者に宮川純を迎えリリースライブを行うことが決定!チケットはイープラスにて好評発売中。

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