『建築・まちづくりプロジェクトのマネジメント』を書き終えて
著書『建築・まちづくりプロジェクトのマネジメント』に関しての備忘録。
お世話になった人たちへの献本に同封した送付状には、本には載せられなかった個人的な想いや動機を書いたのですが、折角なので下記に。
本の企画開始から約3 年、⼤学院の恩師の野城智也先⽣、ランドスケープアーキテクトの徳永哲⽒、私との3 ⼈の共著『建築・まちづくりプロジェクトのマネジメント』ができあがりました。これまで公私ともにお世話になった⽅々、⼀緒に仕事して頂いている⽅々、本作りに協⼒して頂いた⽅々に、感謝を込めてこの本をお送りします。
本書を書くきっかけであり、著者3 ⼈で⼀緒に取り組んできた陸前⾼⽥のまちづくりでは、私が発注者、設計者など様々な⽴場で経験した全ての経験知、スキルが試される総決算のようなプロジェクトで、四苦⼋苦しながらも真剣に取り組みました。普段よりも幅広く、様々な専⾨性の⼈々と短期間でプロジェクトを推進する濃密な時間をともにするなかで、何度も困難にぶつかり、その度、どうすればよいのか周りに相談してきました。幸いなことに、的確なアドバイスをくれたり、共闘する同志がいて何とか進めることができ、そこで実践した⽅法や考え⽅は貴重なもので、私だけに留めておくのはもったいないものでした。
これらの困難は私にとって⽬新しいものもありましたが、プロジェクトの性格や関係者が違っても、私がこれまで遭遇した落とし⽳や袋⼩路に同じようにはまって⾝動き取れない状態も⾒受けられ、なぜ、建築プロジェクトの失敗は繰り返されるのだろうか、そして、どうしたらプロジェクトは上⼿くいくのだろうか、という⻑年の素朴な疑問が何度も頭をよぎりました。他⽅で同時期に、迷⾛した新国⽴競技場建設の様々な段階に関わった⼈たちと情報交換するなかで、新国⽴競技場と陸前⾼⽥には、規模や種類は違っても、相似形の課題・メカニズムがあり、⺠間や公共、規模の⼤⼩に関係なく考える必要のあること、上⼿く進めるコツがあるのではないかという直感が育ってきました。
そうした経緯があり、それぞれ強みの異なる著者3 ⼈が揃うせっかくの機会なので、プロジェクトマネジメントという切り⼝で本にまとめることにしました。本を書くにあたり、直近では陸前⾼⽥市役所や内藤廣事務所の皆さんから多くを学びましたし、奥村祐介⽒と続けていたPM 勉強会もなくてはならないものでした。もちろん、難題に取り組むことができたのは、これまで皆様と⼀緒に仕事するなかで、専⾨知識だけでなく、仕事の進め⽅など多くを学んできたからに他なりません。直接、間接に教えて頂き、多様な知識・経験や視座を与えて下さったお陰で、この本を世に出すことができました。
本書の内容は、決して絶対解ではなく、こう考えられるのではないか、こうすれば良いのではないか、という提起になります。建築・まちづくりプロジェクトのマネジメントを⾔語化、概念化、体系化することは、決して⼀⼈では挑戦できず、全貌もルートも分からないほぼ未踏の⼭でした。ただ、著者3 ⼈の経験知をもって、新しい集合知を⽣み出せれば何とかなるかもしれないという希望をもって始まりました。⼀⽅で3 ⼈の共著のため、意⾒が異
なるところや整合性の取れないところも残りましたが、それは建築・まちづくりプロジェクト同様の複雑みや⼈間らしさとして楽しんで頂き、皆さんと意⾒交換して切磋琢磨していけたら嬉しいです。また、読み返せる蔵書にして頂けるなら有り難いことですが、次世代を担う⼈に渡して頂くのも嬉しいです。⽇本のプロジェクトマネジメントを担う⼈材が増え、良いプロジェクトが増えることを切に願っています。多くの⼈が、建築・まちづくりプロジ
ェクトを理解し、上⼿く進めることに役⽴ててもらえたら幸いです。
2022年8月1日
飯田智彦
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