実家の湯沸かし器が壊れる その1

今僕は名古屋に住んでいるが、僕の実家は東京にあり、新型コロナ・ウィルスのオミクロン株の蔓延もあって帰ることが出来ぬまま3か月が過ぎた。東京にはプリンス・イベントでどうしても行かなくてはならないことがあったのだが、このような状況ならば遠隔で仕方ないっすわ、と、なんとか了承を得ていた。

僕はあまりテレビを観ないし、ネットもチェックしないし、感染率とか重症化とか意に介さず、死んでいる人が少なきゃ大丈夫でしょ、ワクチン2回打っているんだぜ、と、のほほんと21年末、22年始を過ごしていた。実際その頃は世の中それ程ヤバそうなムードじゃなかったと思う。そんな僕でも22年1月半ば位から、何となーく気づき始めることになる。オミクロン株の猛威はもちろん、その次に潜む1.5倍感染率の高い存在や、ステルスなんちゃらとかいうPCR検査をスルーしてしまうエクストリームな奴とか、ぎょえーとばかりに脅威的コロナ・ウィルス事象が、妻が出社前につける朝のテレビではガンガン話されており、否が応でも僕の耳に飛び込んでくるようになるのだから。

実家の母はわざわざ東京に来る必要もない、本当にどうしても来なくてはならない事情があるのなら仕方ないが、オミクロン株のウィルスを持って東京に来られても、高齢な私に万が一感染したら、ブースターのワクチンとなる3回目打っていない状況では重症化してしまうわ、と、僕が東京に来るのを半ば拒んでいた。それならば仕方ないよね、名古屋で待機ですわ。ここでやることは沢山あるし。プリンスの調べることは無尽蔵。動かざること...えーっと、あまり良い言葉が浮かばないが、音無しの構え、とかそんな感じで過ごすことにした。

働きかけに対して反応を示さないこと、それが音無しの構え、の意である。僕も最初、母のこの言葉を聞いてさえ、その姿勢を自然に貫く所存ではあった。「お風呂の湯沸かし器が壊れて、今修理の人が来ている」。大変だ、とは言った。僕は知っていたからだ。半導体大国だったのは昔の話、今や東南アジアに多く依存している日本では、コロナのせいで働ける方が少なくなってしまっているヴェトナムで供給不足となっており、特に半導体を使っている湯沸かし器、その納期がとても遅れているのだと。実際名古屋の湯沸かし器を21年夏に変えていて、その時妻が、そんな状況になりそうだけど何とか交換してもらえたわ、と話していたからだ。

納期は2,3か月先だと東京ガスの人に言われた、最初のLINEの後直ぐに、そう母から連絡があった。え?と驚きはした。でもまだ僕の音無しの構えは続く。「お風呂が問題だよね」。「お湯をガスコンロで沸かして何度か浴槽に入れれば大丈夫じゃないかな、実家のは3口あるタイプだったよね」。高血圧気味な母が、そうだわね、と納得して答えた、僕にはそう感じられて、いつものようにLINEを終えた。

続く。

その2はこちら。
https://note.com/tomohasegawa/n/naf5e44adc409



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