実家の湯沸かし器が壊れる その2

その1はこちら。
https://note.com/tomohasegawa/n/n59bcd0be61d7

母親のLINE後、ふと気がついたことがあった。「電気ポット、実家になかったよな、お湯が常に沸騰してある状態にいれば安心するのでは」。Amazonで購入、明日そっちに届くからと、母にもう一度連絡する。その際、東京ガスの人と母が再度話し、2,3か月と目途が立たない納期だが湯沸かし器をとりあえず注文し あさってに見積もりにやって来る、そう言われる。「こっちでも、あさってまでに、どこかに湯沸かし器が売っていないか、レンタルとかでも、中古品だっていい、ネットで探してみるから」、そう彼女に伝え、LINEを切る。音無しの構えはもうお終いだ。

湯沸かし器は、どこのネットショップも、納期がいつになるか確定していないがそれでも良ければ注文してください、といった文句ばかりが並んでいる。その検索の最中に、湯沸かし器が盗難された、とか、去年の10月に突如湯沸かし器が壊れたので申し込んだが、今年1月の終わりにガス屋さんがやっと設置しに来てくれた、といった話を見つける。事態がとても深刻であることだけしか分かる事実がない状況。焦りつつも、東京の湯沸かし器を扱っているお店を重点的に再度探してみる。怪しそうな所もあって、湯沸かし器ありますよ、と言ってくれても、壊れたのを送ってきたり、商品を送らずにとんずらする、そんな湯沸かし器詐欺に遭うのでは?と心配になり、僕の心臓が高鳴ってくる。また週末だったのもあるのだろう、電話しても休みで連絡がつかずという所が多く、メールだけは送っておいて返事待ち、というのをいくつかしておく。

やることをすると少し落ち着き、ビールを呑んでみる。それでもまた不安が押し寄せ、ネット検索を再度続ける。その内に眠くなってきた。そんな時母から連絡がまた入る。「子供用のプールを深くしたような、簡易的な浴槽を探して欲しい、お風呂の浴槽では大き過ぎるから」。「明日探してみるよ、お風呂の浴槽でもなんとかなるとは思うんだけどなあ」。「いや、絶対に無理よ、お湯を薬缶で何度入れることになると思っているの」。酔いの力で、また音無しの構えに戻りつつある僕。

真夜中。どこかで聴いたことがあるようだけどあまり聴き慣れていないアラーム音が鳴り、目が覚める。妻のスマホからのようだ。妻が起きて弄っている。ふと気になり僕のスマホもつけてみる。画面には朝5時5分の表示。するとLINEではなく、携帯電話としての母からの呼び出し音が鳴った。こういう超イレギュラーな時間にかかってくるのは、緊急事態であり、絶対的な不吉さを感じさせる。「...もしもし」。母の弱弱しい声が聞こえてきた。そんな声だというのになぜか僕は少し安心する。生きているとわかったからなのか、母の声そのものに僕の不安を和らげる効果があるのか。「体が震える、動悸がする」。母がそう僕に告げる。その症状は、母が年末に病院へ運ばれた際と同じものだった。その時は妹が母の所へ直ぐに駆け付け、タクシーで二人で病院に向かい検査してもらって、血圧が170くらいあって、高血圧性脳症になっていたかもしれないが、CTスキャンで見ても脳などに異常はない、と薬をもらって帰ってきた、そんな経緯があった。

「まずは落ち着いて、また血圧が高くなったんだろうね。ゆったりとリラックスすれば...」。「新幹線で直ぐに来て」。「わかった、用意して向かうよ」。

続く

その3はこちら。
https://note.com/tomohasegawa/n/n1a4bac5b28fa


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