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20-21 ♯10 指導者学校で学ぶこと

元々、僕がスペインバスクに来た当初の目的の一つにスペインでライセンスを取るということがあります。3つのレベルに分けられた各ライセンスを1年間をかけて取得していくというものです。ある意味、専門学校に行くことや大学院でより専門的な知識を学ぶことに似ているというような感覚でしょうか。

そんなスペインのサッカー指導者ライセンスを取得できる機関は大きく分けて2つです。

① スペインサッカー協会が発行し、UEFAライセンスと互換性がある私立の機関
② 国や州の政府機関が発行し、体育の先生をできるようになる公立の機関

僕の場合は大学卒業と同時にスペインバスクへ渡り、①のスペインサッカー協会が発行する私立の機関でレベル1(UEFA-B)とレベル2(UEFA-A)を取得しました。

具体的にこの2つの機関の違いは、政府の公的機関が発行するライセンスかサッカー協会が発行するUEFAと互換性があるかといったような違いが主です。国内のサッカー現場や地域の育成レベルで監督をするのであればそんな変わりはありません。

そして、1つの目的でもあったレベル3(UEFA-PRO)を取得しようとした昨年、スペインサッカー協会の規制が厳しくなり、労働ビザを取得している外国人またはスペイン国籍を持つ者のみしか受講することができなくなりました。つまり、僕ら学生ビザで滞在していた外国人は受講できなくなったのです。

僕の場合、バスク州ビスカヤ県サッカー協会が滞在許可証であるビザを発行してくれていたため、当然ながら受講をすることができなければビザを出してくれません。ということは当然スペインに滞在できなくなるということです。

はて、どうしようと困っていた時に、②公立機関の指導者学校を受けるという選択があるということを知り、早速連絡を取ります。

返事としては労働ビザがない外国人も受講は可能であるということ。しかし、基本的にはそれらの2つのライセンスに互換性はないため、レベル1から受ける必要があるとのことでした。

そんなこんなで今シーズンはキロレネと呼ばれるバスク政府が行うサッカー指導者ライセンスレベル1を受講しています。

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スペインサッカーという言葉をよく耳にする日本サッカー界で、スペインでライセンスを受けるとなると特別なレシピが存在するような印象を受けます。

ほんとにそうでしょうか。

2つの機関でライセンスを受講してみて思ったことを書いていこうと思います。

まずは、当然のことながら先生の色が授業の良し悪しを左右します。例えば、戦術の授業があったとします。その教科を受け持つ先生が育成年代に長く携わっている人なのか、反対に大人のリーグを長く率いている人なのかで話す内容が多少変わってきます。

内容が変わるといっても全く異なるということではなく、授業中に挟んでくる例え話や教材のある内容に対しての目線が違うということです。

なので、担当する先生が誰なのかによって授業の内容や質が変わるということです。

感覚的には協会のライセンスの方が授業に対しての自由度が高く、公的機関のキロレネはある程度カリキュラムが整っているように感じます。といっても日本サッカー協会のライセンスより授業内容に自由度は高いのは間違いなく感じます。

次に一緒に授業を受ける仲間の存在も学びを深くする上で欠かせないものですね。受け取る側によっても授業の質が大きく変わると思います。講義の中で先生が話す内容や誰かが発表をする際に、その内容についての意見や議論から興味深い内容に発展することも多々あります。

そんなように授業を受けることで多くの学びを得ることができるのは事実です。

でも僕が思うスペインで指導者ライセンスを取ることのメリットってそれよりも先にあると思ってます。まずは単純に言語の違いです。これはサッカー的な学びというよりも現地の言葉で現地の人々とサッカーを学ぶことで、その土地の文化に触れることができるんです。つまり、同じ講義の内容やサッカー用語だとしても、その土地が持つサッカー観で異なる捉え方をするんです。

例を挙げるとすれば、ダイレクトな長いボールが飛び交うようなプレーってバスクでよく見られるプレーなんですが、それが一つのプレーアイデアとして構築されてるんです。しかし、判断がなくて選手が成長しないということで受け入れられない土地も必ずあるんですよね。

そんなサッカーアイデアを構築するため必要となるスキルも変わってきますよね。下手したらトレーニングの方法論や理論も変わってくるかもしれません。

そのような文化によってサッカーの捉え方に違いが生まれ、その土地に合うようにサッカー論も変わってくると思ってます。

なおかつ、母国語ではない言語で年間を通して勉学に励むことってかなりのストレスです。言語は学べることはもちろんですが、人間的にも成長させてくれます。

そして、何よりも同じ講義を受けている仲間ができるということですね。
そんな同志ができることでサッカーについて話したり、世間話をしたり、情報交換をしたりなど、彼らから学ぶことってとてつもなく大きいものだと思いますし、紛れもなく財産です。

最後によく言われることですが、

「指導者ライセンスは運転免許証みたいなもの。免許を取り立ての新人運転手が運転が上手いわけではなく、そこから知識と経験を積み重ねていくことで一人前になれる」

これが何よりも感じます。

学びを与えてくれるのは選手であり、ピッチ内やロッカールームで起こることだということですね。

どんなに長い時間サッカーの講義を受けて、理論を学んだとしても結果的に現象が起こるのはサッカー現場であるピッチということです。だからこそ、最終的にここに戻ってくるのかなと。

スペインで指導者ライセンスを取っていて感じることです。
また機会があれば授業の内容も書こうと思います。


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