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20-21 ♯8 指導者が成長する上で欠かせないプロセス

みなさんは自分自身の成長や学びを獲得することとどのように向き合っていますか?

最も自分自身が成長していると感じる瞬間はどんな時ですか?

最近、自チームに起こった出来事がそんな疑問を与えてくれました。
今回はそんな現場でのリアルな話を書いていこうと思います。

まずはじめに、僕が住むスペインバスク地方ビスカヤ県では、アスレチック・ビルバオが主体となって街全体で選手・指導者の育成をしています。具体的にはアスレチック・ビルバオの約20名のスカウトが県内各地域に振り分けられ、街クラブの平日の練習をサポートしています。その目的については以前ブログにも書きましたので下のリンクからご覧ください。

僕が監督をするチームも例外でなく、アスレチック・ビルバオのスカウトが配属されています。彼の名前はラファ・アルテアガベイティア(Rafael ArteagaBeitia)、僕のクラブに配属される前はアスレチック・ビルバオの下部組織でU12年代の監督を務めていました。

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現在、スカウトであるラファの役割は基本的にU9からU14のカテゴリーの選手や指導者とコミニュケーションを取りながら、練習のサポートを行うことです。

基本的にバスク州ではU14までが育成カテゴリーと呼ばれ、選手に過度なプレッシューが掛からないように昇格・降格がないシステムを採用しています。

本来育成リーグに所属するカテゴリーを担当するのがスカウトの役割なので、僕が今シーズン指揮を執っているU16カテゴリーはそこには含まれません。

なので、僕はグラウンドで彼と会うといつも言うんです。

「いつ僕らの練習を見に来てくれるの?」

「いつ僕たちにフィードバックくれるの?」と。

そして、いつも担当ではないにも関わらず僕らの練習を見に来てくれるのです。

トレーニングへの介入

ラファがトレーニングを見に来てくれた先日の話です。

その日の練習メニューは、①ウォーミングアップ ②5対4+3ミニゴール ③クロスからのフィニッシュという3つの構成を予定していました。

僕のチームでは、基本的に最初の15分-20分間をウォーミングアップも兼ねてヘッドコーチが担当します。そのメニューについては、彼自身が考えたものがベースになりますが、僕から具体的なメニューをお願いすることもあります。

みなさんはウォーミングアップに対して、どのような意図を持って取り組んでいますか?

僕が大切にしていることは、まずはトレーニングにやってきた選手たちが急に激しい運動を始めて怪我をしないと言うことだと思います。つまり、怪我予防ということですね。

そして次に、学校が終わってトレーニングにやってきた選手のメンタルを切り替えると言う作業です。その後のTR2やTR3がより集中した研ぎ澄まされた状態で行える為に準備すると言うことです。

僕の中でウォーミングアップの狙いは後者の方をかなり大事にしています。だからこそ、その時間を選手が集中して取り組んでいるのか、チーム全体の雰囲気はどうなのかを観察するようにしています。それはメニューの話ではありません。取り組むメニューはフィジカルサーキットやボール回し、パスドリル、鬼ごっこのファンメニューなどどんなものでも構いません。もちろんバリエーションに富んだことに越したことはありませんが...

ファンメニューであれば笑いが起こることもあって、フィジカルサーキットでは文句を言い始める選手がいるのも事実です。しかし、それらのメニューを熱中して取り組んでいるのかということが大事なことであって、観察するようにしています。

その日のウォーミングアップは僕の方からパスドリルをやってほしいということを伝えていて、実際にどんなイメージのことをやってほしいのかと言うことを伝えていました。メニューは下のシンプルな Y字パスドリルです。

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そして、その日のウォーミングが始まってすぐに思うわけです。

「これはまずい」と。
トレーニングに活気もなければ、流動的でもなく、熱中してる雰囲気でもない。

どうしようかなと様子を伺っていると、それを察したのかラファがすぐさま僕の方に寄ってきて言うんです。

「このメニューは戦術的な意図を含めたものだよね?」と。

僕が「そう」と言って少ししてから、ラファがトレーニング中にフリーズを掛け、このトレーニングで引き出したい現象を整理して、選手たちに目的を伝えていきます。

この瞬間、僕は自分自身とかなり葛藤していました。

それはなぜか。

もし自分自身がメインとなって指導しているときに、横から他の指導者が許可なく入ってきたらどんな風に感じますか?その瞬間は、選手にとって学びがありより充実したトレーニングになることは間違いありません。しかし、ヘッドコーチの言葉に対する重みや選手からの信頼を損ねる可能性があるのも事実です。1年間チームを率いるという長い目で見たときに、ヘッドコーチの言葉に重みがないというのはチームを円滑に進めていく上でポジティブに捉えることはできません。
だからこそ、僕はこの時間なるべく介入せずに選手を観察することに徹しています。

そんなふうに入りたいのに入れない、でもメニューは全然上手くいってないということで葛藤していた時のラファの介入。

「( ˙-˙ )」

その瞬間の選手たちの表情はこんな感じでした(笑)
いきなり普段いない別の人間がトレーニングに介入してくるんですから当然です。ただ、伝える内容が的確なのと説明がわかりやすいからこそ選手に届いてるんです。

皆さんだったらこの瞬間どうしていましたか?

僕が介入すれば、ヘッドコーチと選手たちの信頼関係に傷をつける可能性がある。しかし、何も介入しなければ学びのないトレーニングになるという状況です。

フィードバックする時間

最も学びを得る瞬間というのはこのようなことが起きてから、そのことについて議論をする時間だと考えています。

練習後、僕はラファに「トレーニングどうだった?」と聞くわけです。

当然、全体のフィードバックの中でウォーミングアップについての話になるわけです。まずは、僕が思っていたことを伝えます。ヘッドコーチと選手の関係性を考えたときに僕は介入したくなかったこと。具体的なメニューの話で言えば、メンタルをトレーニングモードに切り替えるためにも、パスドリルの導入を簡単なものにして段階的に発展させていくこと。僕自身がヘッドコーチに具体的なトレーニング案を提案すればよかったことなどを伝えました。

そこで、彼が僕に言ったことは、
「トモがあの瞬間に介入するべきではないのは間違いないと思う。でも、選手に学びがないトレーニングというのもあってはいけないと思う。じゃあどうやってそれを解決するのか。1つの方法としてはトレーニング前のミーティングで解決するべきだったと思う」、ということでした。

彼のいう通りです。普段僕らコーチングスタッフは60分前から集まり、世間話から始まり、トレーニングの内容・意図を話していきます。しかし、事実としてその日のウォーミングアップはそのミーティングが機能していないからこそ起こった現象です。疑いようもなく練習前に解決できていた可能性のある出来事です。

このように練習後のフィードバックを通して振り返ることで、練習前ミーティングへの価値を高め、トレーニングがより学びがあるものへと繋がることになります。
そして、次の練習前ミーティングでトレーニングが上手くいくように、具体的に議論するきっかけとなるのです。
さらに再び練習後には、その日の練習について議論やフィードバックをすることで日々のトレーニングが効果的になっていくのです。

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それらのサイクルを作っていくために、そのような客観的な観点からフィードバックをくれる人の存在は計り知れません。アスレチック・ビルバオがあるバスク地方ビスカヤ県だからできていることではないと思います。身近にいるヘッドコーチやアシスタントコーチ、指導者仲間の存在とそのような相乗効果を生む関係性を作っていくことが指導者としての成長になるというのを改めて感じました。

みなさんは練習後のフィードバックにどれくらい時間を割いてますか?

後編はこちら↓


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