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20-21 ♯9 壁に話しかける

先日の続きを書いていこうと思います。
前回の記事ではウォーミングアップとフィードバックについて書いていきました。

前回の記事はこちらから↓

 今回はその後のトレーニング1について振り返っていきたいと思います。
ウォーミングアップが終わり、身体の準備とメンタルの準備ができた状態でその日のトレーニングを通じて獲得したいことに着手していきます。ここからは僕が中心で構成するパートです。

 次のメニューで行ったのは、5対4+3ゴールというものです。(写真参照) 常に黄色チームからプレーが開始され、奥側に設置してあるミニゴールにシュートまたはサイドにあるマーカーゴールをドリブルで通過することが目的です。ゴールを決める、もしくは外に出た際には再度黄色ボールからプレーを開始します。赤チームがボールを奪った際には、3ゴールが設置してある反対側の辺へライン突破で得点となります。攻守は時間で交代。トレーニングの意図や獲得したいコンセプト等に関しては今日は置いておくことにします。

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 トレーニングを行う際に大事にしていることは、選手が夢中になって躍動する空間を作り出すということです。他チームのトレーニングを見にいくと”ピリッ”とした張り詰めた空気感を作り出せる指導者の方を見かけます。その指導者の方がいるだけでその場の雰囲気が締まり、選手が高い強度でトレーニングしなければいけない空気感です。

このような空気感は僕には作り出せません。

だからこそ、大事にしていることは自分自身が高い強度でいることで選手に対してその空気感が伝わり、無意識的にトレーニング強度が高くなっていくような空間にするということです。

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トレーニングへのフィードバック

練習後、いつも通りラファに質問します。

「トレーニング1はどうだった?」と。

彼がフィードバックを送るときはいつもサンドウィッチの技術を使ってきます。受け取る側が嫌な気持ちになることなく、また攻撃されていると感じないためにポジティブなことから伝えてきます。

「まずはトレーニングの強度は非常に高く、選手との関係性が適した距離感だと思う」

この場合の距離というのは、良い意味で選手の上に立つという意味です。ある意味、選手との関係性は対等にならないということです。かといって、マウントをとるために一方的に命令や恐怖を与えることでもありません。
あくまでも一つの方向に舵を切るときに、その判断に選手が同じ方向を向きやすい関係性を作っていくということです。

それは練習メニューや試合中の指示、ピッチ外でのマネジメントなど、様々な局面に対して共通するだと思います。指示に対して選手が反応するために、信頼関係を構築していくことです。当然、その関係性の作り方が百人百様であることも事実です。

さらに続けて、「選手に伝えるメッセージも質問を投げ掛けたり、直接的な指示を与えたりしてるからとても良いと思う。少し感情的すぎるかもしれないけれども、それは僕がトレーニングしている時も同じだから人に言える立場じゃないんだけど(笑) でも自分が選手の立場だったら、指導者が黙って見ているよりかは、共存のしてくれる人を好むかな」

そのようにして次のネガティブなことに耳を傾けやすい心理状況を作り出します。

ただ、裏を返せばそれらはネガティブなことではなく、自身が成長するためのヒントが隠されている部分です。

「常に同じ強度で同じテンションでいるのではなく、あるタイミングでは少し遠い距離感をとって選手を観察する時間も必要だと思う。つまり、練習メニューの最初の2-3分で選手の雰囲気を感じて、彼らが起こしてるエラーを分析し、それに対して落ち着いた心理状態でフリーズを行う。そうすることで、選手が落ち着いた状態で起こっている現象を分析することができる。こんな異なるスタンスを持つことでトモの幅も広がると思う」

その通りだと思います。
自身の引き出しを多く持つことで、選手の引き出しを開けられることに繋がります。

そう思う一方で、練習メニューの始まりの段階でトレーニングに介入し、高い強度で行うことで、選手に対して基準を作ることにもなると思います。その後にフリーズやレストを挟んだとしてもその求められる強度を知っている状態で取り組むことになります。
しかし、最初のタイミングで様子を伺うことで、低い強度で始まった場合にその最初の数分を失うことになるのも事実です。さらに、もしかすると求める強度まで上がることに苦労するかもしれません。

おそらくどちらの方法も正解であり、間違いはありません。
だからこそ、選手の様子や特徴、練習の雰囲気、指導者のスタンスや考え方によって臨機応変に使いこなせる引き出しを持つことで、日々のトレーニングに色を付け、刺激を与えることに繋がると思います。

何よりもこのような客観的な意見は新たな疑問を生み出し、自身の指導に関して深く考えるきっかけになります。

壁に話しかける

最後にラファに言いました。

「ヘッドコーチにもフィードバックを送ってくれないか」

するとラファは僕にこう言いました。

「それはできない。彼自身の中にフィードバックを受け取る空間がないんだ」

つまり、興味関心がない状態では何もできないということです。学びを得るということは本人から行動を起こす必要があるということです。この場合でいえば、僕からではなく、ヘッドコーチ本人からラファに対してコンタクトを取らなければ、どんなに的確なフィードバックだろうと、それを受け取る空間が彼にはないのです。

「壁に話し掛けても返答は戻ってこない」

そう言われた時に、ハッとしました。
これこそ”ありがた迷惑”と言うやつです。まさに、暖簾に腕押し状態です。

良かれと思ってやったことが彼にとっては違うかもしれない。
学びというものは成長したいとか、上手くなりたいという感情とセットになったときに最も効力を発揮するということでしょう。

それは選手に対しても同じです。ある選手は上手くなるためにトレーニングを行い、ある選手は試合に勝つためにトレーニングをします。
試合で勝つためにトレーニングする選手にとってみれば、試合に出るために日々のトレーニングに取り組みます。そこに、自分自身の成長への興味関心はないのです。上手くなりたいという欲が無ければ、学びを受け取る空間は残っていません。

でも僕たち指導者からすれば、試合に勝つために自身を研磨し、成長することがチームとしての成熟を促し、勝利に繋がることを知っています。それを伝えていくのも指導者の責任だと思います。でも、スペイン人を率いていて感じるのは、文化的な観点からもそこに対して全てを理解し合うのは並大抵のことではありません。それは、リーグが中断している今だからこそ尚更感じる点でもあります。

それらはメソッドやプレーモデルなどのように紙上のことではありません。

そんな彼らとどのように接していくのか?


そんな日々の彼らとのやりとりも今後書いて行けたらと思います。


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