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海外MBAから国際機関へ

海外MBA後の私のキャリアについて、多くの日本人にとって直接的な再現性が限定的であることは、自分が一番良く理解しています。

私が他者より圧倒的に優れているからとかでは全くなく、単に私の仕事が一般的に見て希少な仕事だからです。

また、そもそも、海外MBA後に、教授でもなく、たかが学校職員という権威も大してない仕事に就くというのも、この界隈からすると、やや異色な選択肢でしょう。

しかしながら、高等教育分野 x 入学審査という仕事という部分を取り除いた、一層根本的な性質にあたる部分で私の置かれている国際的環境に興味がある方に対し、海外MBAを絡めてそこに何かしらの示唆を提示することは可能ではないかと考え、本稿の執筆に至りました。

なお、本稿で国際機関を提示しているのは、多数派なき多様性という組織の近似性が主たる背景としてあり、その上で、高等教育の公的な性格が一定程度国際機関のそれに通じる点を副次的に鑑みると、イメージが繋がりやすいと考えたためです。

(これを踏まえ、お前の組織はそもそも国際機関ではないだろうなどの揚げ足取りはお控えください)

前提となる仕事環境

私の仕事は、入学審査とキャリアサービスの大きく2つの部署に対してのもので、時間の9割かそれ以上を前者に費やしています。

その入学審査のうち、日本に関わる仕事が25(-30)%程度ですが、日本に関わる仕事が直接日本語を使う仕事ということと同一とは限りませんし、この中に日本人がやり取りに絡まない仕事もあります。

日本人の同僚は別部署に1名いるのですが、全く違う仕事をしておりやり取りも限定的なため、事実上日本人が他にいない環境で仕事をしているイメージで差し支えありません。

IESE(イエセ) MBAの当時の日本人同級生の中では、定義次第ながら、一番か二番目くらいに国際的な環境で働いているような気がします。

同僚について、この2つの部署に関して共通しているのは、私を含む主たるメンバーは、IESE MBAの卒業生である点で、それ以外のメンバーが非卒業生であることです。

他方、2つの部署に関して異なる点は、例えば入学審査チームはバルセロナにも一定数のメンバーがいるながらも、世界中55カ国から学生を募る性質上、世界中に主たるメンバーが散っており、公用語は英語です。

それに対し、キャリアサービスは、バルセロナにメンバーの多くが所在していることもあり、公用語は英語とスペイン語のちゃんぽんで、それも含め、スペインの組織としての色が相対的に濃いです。

ちなみに、学校職員全体の会議は、主にスペイン語でやりつつ、稀に英語とのちゃんぽんということが圧倒的に多く、入学審査チームが組織内ではやや異色です。

ということで、全体としては、スペイン語ができた方が得な組織です。

私は一定程度スペイン語を習得しているのでさほど困らないのですが、スペイン語学習を放棄した私の入学審査チームの同僚が時折英語での要約を同僚に要求していたりします。

今日の表題である国際機関の性格は、見方によっては前述の両部署ともに有するのかもしれません。

キャリアサービスの、英語とスペイン語のちゃんぽんというのは、例えばその1つです。

しかし、全体的に見た場合には、多数派なき多様性の色が強い入学審査チームの方が一般的に想起される国際機関に様々な点で一層類似していると判断し、ここから先はそちらに寄せた考察にしていきます。

要求される英語水準

このようなチームで必要とされる英語の水準について、いくつかの観点で考察をしていきます。

まず、私自身についてですが、海外MBA前(6年勤務)時点で、海外で教育を受けておらず駐在経験もなかった一方、仕事ではそれなりに英語の四技能を使って仕事をしていたり海外は50カ国超渡航済だったという意味で、「広義の純ドメ」に当たるのだと思います。

そんな私が、英語圏ではない国ながらもチームワークの濃度と授業の参加期待度ではおそらく世界随一の海外MBAであるIESEにて、色々揉まれながら鍛え、この仕事を開始するに至っている、というイメージです。

そして、当然、この仕事をしながら更に英語を伸ばしてきている部分もあるし、英会話より一歩踏み込んだパーソナルトレーニングを受けていた時期も短期間ながらあります。

英語について、ある程度コツコツ努力してきている方なのかもしれませんが、MBA受験にせよ英語が絡む仕事にせよ、睡眠時間を極端に削ってストイックな努力をしてきているわけでもありません。

これらが私自身について、続いて、周囲の環境に関して言えることは、必ずしもMECEではないのですが、主に2つに分けられます。

まず、肌感覚で、IESE MBA中と今で、要求される英語の水準について特段差分を感じないということです。

言い換えると、IESE MBA中のチームワークとケースメソッドが基盤の参加型授業が英語環境面でこれ以上ない最適な練習環境だったと言えます。

次に、ネイティブ英語かどうかという点ですが、普段あまり意識していないものの、やはりネイティブ英語だらけの人たちに囲まれている環境ではありません

本稿執筆時点での入学審査チームのメンバーの国籍は、私以外だと、スペイン、英国、ポーランド、米国、メキシコ、ペルー、ブラジル、ナイジェリア、中国、香港、シンガポールなどです。

私は毎日EURO Newsのスペイン語版で世界情勢の情報収集をしており、国連やNATOのお偉い方の英語(ノンネイティブ多数)に触れたり国籍を観察する機会もそれなりにありますが、色んな意味で近さを感じます。

他方、対外的に文面で出すものでかつ内容の重要性も大きい内容、例えば一番わかりやすい例ですと合否通知レターのようなものは、原案を誰が作るにせよ、必ずこのうちの英語ネイティブ、特に米国人の同僚のチェックを仰いでいる印象です。

また、「これって英語で何て言うんだっけ?」みたいな発言も私ではないメンバーから飛び出すことも時々あります。

私も「あぁ、なるほど、そういう表現を使うのね」みたいなことを英語ネイティブのメンバーから仕事の中で学ぶことは、未だに時々あります。

例えば、"Cherry-pick"のような表現について、いつ覚えたか定かではなく、IESE MBA中の可能性も否定できないものの、おそらくこの仕事を始めてからではないかと思います。

ちなみに、"Cherry-pick"は、文脈にもよりますが、日本語で「厳選する」のような意味合いです。

ここで強調したい内容としては、英語自体が本職の通訳等は別として、このような国際的環境での仕事開始時に英語面で完璧である必要はないということです。

そんなことを追求していたら、永遠にこのような組織では働けません。

私も、海外で修士を2つ取得しているものの、日本で大学までの教育を受けてきた人間ですので、試験至上主義で、間違いは罪という観念に囚われていた時期もそれなりにありましたが、最近はそういう考え方をあまりしなくなりました。

但し、仕事の性質次第で英語の必要最低水準というものが各仕事に当然あるはずなので、それを満たしていることは必須です。

海外MBAを使ってそこに至ることを目指すのは、一定割合の方にとって妥当性のある話かと思われます。

アジア・中東統括が現在の立場ですのでその範疇に入るメンバーのマネジメントや支援もしていますし、受験生には見えにくい領域で結構ややこしい内部の議論も多いですが、英語がわからなくて苦労するという瞬間は、あまりないような気がします。

英語ネイティブではないので個別の単語等について理解が完璧でないこともあるでしょうが、文脈で十分補える程度の話というイメージです。

また、自分に馴染みの薄い英語アクセントを持つ同僚が新しく参画してきて聞き取りに注意を一層払う必要があるということは時折ありますが、これはもはや慣れの問題と常に割り切っています。

他方、前述の米国人の同僚が、皆がわかるよう若干易しい表現を使っているのだろうなと感じることは時折あります。

ただ、それが私一人のためだけになされているという場面はなく、周囲複数名の英語ノンネイティブに対してもということですので、これは安心材料となります。

英語ノンネイティブにも雲泥の差があるので、定義が難しいですが、私は常に英語ノンネイティブの中でできる限り高いレベルを目標としています。

もちろん、英語ネイティブから盗めるものは盗もうと思っていますが、その境地に辿り着くこと自体は不可能だし、そこを目指していて辿り着けないのは苦しいだけだと考えています。

英語環境という意味での欧州MBAやこういった組織の日本人にとっての非常に大きな魅力の1つは、ベンチマークできる対象が現実的なところにあることではないかと思います。

精神衛生上も良いです。

もちろん、周囲全部が英語ネイティブの環境で留学したり仕事をしている方が正確な英語を学べる精度が高いことに否定の余地はありません。

しかしながら、それすなわちそれを全て吸収してその境地に達することができる、とはなりません。

欧州MBAに比べて少ないとはいえ他にもノンネイティブの学生が一定数はいる米国MBAはともかく、真に英語ネイティブしか周りにいない環境で毎日働き続けるというのは、成長はするかもしれませんが、私が一方で求める心の平静とはかけ離れている印象です。

求められる行動様式

英語の話がずいぶん長くなってしまいましたが、このような国際機関的な色合いを持つ組織で語学面以外で何が求められるでしょうか。

色々あるでしょうが、一番のポイントは、全員がおよそ均等に努力を重ねた上で全員が合意・満足できる中間地点を求めることが多くの場合で要されることではないでしょうか。

多数派が存在する組織では少し色合いが変わるはずです。

努力の具体的な例としては、時差への配慮だったり、出産などの一時離脱が発生するイベントへの対応だったり、様々なレベル感で無数にあるでしょう。

他の事例として、最近特に意識しているのは、一貫性を柔らかい形で出すことで、周りにとって近寄りやすいキャラを確立することです。

これは言語や環境の国際性に関係なく、普通に振る舞っていると、若干真面目っぽくなってしまう自分の性質を意識しての部分もあります。

具体的には、仕事以外でディズニーと旅(とサッカー)という話題を振りやすいヤツというキャラにしています。

これらは嘘で塗り固めているわけではなく、実際好きなものでもあります。

サッカーは、チームに女性が多いせいもあって正直使い勝手がやや悪く使用を控えめにしているのですが、ディズニーと旅はかなり有効です。

ポイントとしては、文化の差に影響を受けにくくポップな内容であるということです。

チームのチャットでGIF(LINEスタンプのようなもの)が飛び交うのは往々にしてあることですが、そういった時に一貫してディズニーのGIFを使っていたりします。

そうすると、チーム内のシークレット・サンタでディズニー絡みのプレゼントを貰ったこともありました。

欧州のマスコットが日本人からすると全然可愛くなかったりと、アジアとアジア以外で可愛いものに対する感覚が相当違うと思いますが、子供っぽいと多少思われたとしても、ディズニーなら両者が同じ土俵に立てます。

アンチディズニーはどのコミュニティにも一定数いるでしょうが、そんなことは大した問題ではなく、全員が共通の土台で理解できるかがポイントです。

旅については、仕事とプライベート両面でチーム内で一番旅をしているのが私のような気がしますが、例えばバーチャル・バックグラウンドを相当多彩に用意して、毎回それを切り替えています。

それにより、「今日は(バーチャルな世界で)どこにいるの?」「クラクフだよ」「それ、私の故郷なんだけど、確信犯?」「次はそこに行くつもりなの?」「そういえば、ポーランドからももう少し出願があるといいね」といったところからチーム内での会話が和んだりといったことも、ままあります。

私の例はさておき、多くの面々が、スペインの組織だからといってスペインに合わせすぎるわけでもなく、あの手この手を使いながら歩み寄っているという印象を高頻度で抱いています。

利益を出すことに傾いた一般的な民間企業より公的性格が強いことも、そういった傾向に拍車をかけているかもしれません。

まとめとおまけ

色んな内容を記述してきましたが、以下を全体感として感じ取って頂けると幸いです。

・ 広義の純ドメからでも海外MBA経由で国際機関のような組織で働ける
・ そのような組織において、英語は最初から完璧である必要はなく仕事をする中で伸ばしていけば良い
・ 英語以外の行動様式として文化の差を埋める努力を誰もが均等にしていくことも期待される

これらの点は、人によっては当たり前に聞こえる部分もあるでしょうが、ただ逆にそう聞こえるということは再現性があるということでもあるので、是非近しいことを目指したり考えている方の励みになれば幸いです。

ちなみに、蛇足ながら、お気づきの方もいると思いますが、私がこれまで所属してきた組織(NTTドコモ、金融庁(出向)、IESE)は、全て公的性格を強く有しています。

こういった隠し難く強い私の嗜好からすると、海外MBA後に国際機関など公的性格の強い組織を目指す人はやや残念なレベルで少ないです。

国際機関における海外MBA経由の採用枠が必ずしも多くないのも事実ですが、いざ入ってしまえば、前述の理由で特に多様性を標榜する欧州MBAとの相性が良い印象を持っていますので、そういった方向性でのキャリア開発を目指される方も応援しております。



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