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非伝統的な職歴は海外MBAで門前払いか

非伝統的な職歴は海外MBAで門前払いなのでしょうか。

結論、学校によるが、多くの場合門前払いではないと思います。


伝統的な職歴

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そもそも伝統的な職歴とは何かを定義しないことには議論を始められません。

海外MBA入学以前にありふれた職歴ということになりますが、海外MBA界隈の暗黙の了解としては、世界規模で見て業界ということで定義づけると、コンサルティングや金融がそれに当たるでしょう。

日本で見れば、商社がそこに追加されるでしょう。

メーカーが含まれないのかというと含まれる気がするし、日本の場合国費派遣もあるし、とか、細かく追求していくとキリがありません。

とりあえずここでは、伝統的な職歴を大雑把に「大手企業等でビジネスに携わる仕事」と定義することにします。


非伝統的な職歴で海外MBAを卒業して活躍している事例

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以降、実例で示していきますが、入学できただけでは何ら成功の証明にはならないとの考えから、全て在校生ではなく卒業生の事例です。

また、海外での勤務経験などが変数に入ると議論が別の方向に行くと判断し、海外MBA前後ともに日本で働かれている方々の事例に絞りました。

例1(男性):航海士→IESE(イエセ)MBA→外資系戦略コンサルタント

これはIESEの卒業生の一人、清水さん(2016年卒)の例です。

海外MBAに必要な知識は独学で航海士としてのキャリアの間に時間をかけて学んでいたこと、ビジネス経験に基づいた他者への貢献という点では在学中苦労する部分があったことと、IESE MBAなしには外資系戦略コンサルタントになることは不可能だったこと等が記事には書かれています。

ちなみにLinkedInで追ってもらえばわかりますが、彼は既に外資系戦略コンサルタントの仕事を離れて、次のステージに移っています。

前職である程度の期間キャビンアテンダントだったり勤務先が内装施工会社だったりIESEの例だけでも他にも色々あります。

ただ、客観性と透明性を保つべく、ここから先は、私自身の過去の記憶も手繰り寄せつつ、LinkedInで自分で確認した他校の情報に基づきます。

例2(女性):ジャーナリスト→米国M7 MBA→外資系戦略コンサルタント

大学の卒業後は、テレビ局にてジャーナリストとして5年働かれていて、米国の7つのトップクラスの学校としてカテゴリー化されるM7の一角を卒業し、その後は4年ほど外資系戦略コンサルタントとして勤務され、現在は別の仕事をされているようです。

外資系戦略コンサルティングファームの中にも、こういったユニークな職歴を受け入れるファームとそうでないファームがある中で、前者にうまくはまった形でしょう。

例3(女性):大学職員→シンガポール/フランスMBA→日系メディアコンサルタント

大学の卒業後は、某大学職員としてマーケティング等の仕事に5年程度従事され、その後、シンガポールとフランスのMBAのジョイント・ディグリー・プログラム(?、INSEADのことではありません)を卒業し、その後は日系メディアコンサルタントとして活躍されています。

例4(女性):教育系スタートアップ→米国M7 MBA→テック系スタートアップ

米国の大学卒業後、教育系スタートアップで8年程幅広い業務を担当し、その後、米国M7のMBAを志し、卒業後はテック系スタートアップに参画され、現在は別の仕事をされています。

スタートアップは、ここで述べる5つの中でおそらくビジネス色が一番強いですが、大手企業と比較して、扱うビジネスの規模が小さくとも一人あたりのカバー領域が広くなる傾向もありますので、中身と見せ方次第では効果的に働く場合があるでしょう。

例5(男性):医者→米国M7 MBA→医療系スタートアップ

大学卒業後、医者としてのキャリアを6年重ね、米国M7のMBA卒業後は、医療系スタートアップで役員ポジションに入り、その後、自らが起業した会社を運営されています。

医者すなわち頭の良い人ということだし、社会的地位も高いし、海外MBAにはフィットがあるだろうという指摘は一定程度正しいかもしれません。

しかし、人によるでしょうが、ビジネスの実務を積んでいないという点においては前述の方々とは何ら変わりはありません。


非伝統的な職歴の卒業生の探し方

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非伝統的な職歴の人を除外することで保つ「純度」を学校の品格として事実上打ち出している学校も複数あると私は認識しています。

したがって、非伝統的な職歴をお持ちの方の場合、手間はかかりますが、現実的な学校ごとの実際の合格可能性については学校ごとに確認するのが望ましいでしょう。

日本人ではない入学審査官で特にキャリアサービスを担っていない方の場合に、日本人のそんな細かい事情に精通しているかは怪しいです。

ただ、私のような人間がいる学校はそういった人間に頼るべきですし、そうでないならば日本人在校生サイトを見たりそこから在校生宛に問い合わせることで確認できます。

また、私の上記の調査がLinkedInによってなされていることからも明らかな通り、LinkedInの最良な活用法の1つが卒業生・在校生の検索です。

LinkedIn上で色んなキーワードを使えば、私が例示した方々を読者の皆様が特定することも可能でしょう。

無料プランを使っているうちは相手のページを見た時に足跡をつけてしまうことが懸念と感じる方もいるようですが、極めて些末な話なので、得られる利点を優先して、むしろ足跡をつけまくるべきでしょう。

更に踏み込んで本人に話を聞いてみるべく直接連絡してみて、最悪反応がない場合はあるかもしれませんが、それで失うものはないはずです。

また、次世代へバトンタッチしていくpay forwardの精神が強いのが海外MBA在校生・卒業生の特徴ですので、LinkedInを定期的にチェックしていて且つそもそも依頼が失礼な形でなければ、それなりの可能性で返信を得られるのではないでしょうか。

海外MBAの世界は自分を売り込んでなんぼであり、それは受験の段階から既に始まっています。

また、私だけではないと思いますが、LinkedInのページがない受験生を若干警戒しますし、素性(経歴)の知れない人には、在校生や卒業生を含めた学校関係者は一歩踏み込んで支援しきれない場面があります。

なお、学校のイベントに出て卒業生の話を聞くのももちろん一般的な学校に関する情報収集手段としては適当です。

しかし、誰が出てくるかは運次第で、自分にとってピンポイントな関心となる方が出てくるかは何ら保証されていませんので、目的に鑑みると最良の手段とは言えません。


海外経験がないことは非伝統的なのか

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「海外経験のない日本人」は非伝統的な職歴と言えるのでしょうか。

「海外経験のない」を海外での就業経験より一層広い意味で海外とのやり取りが仕事で特に発生しないと位置づけたとしても、海外MBA前に海外経験のない日本人で世界トップ20の学校に在籍・卒業している人は、ある程度います。

したがって、私の感覚では特に非伝統的な扱いとはなりません。

会社派遣の方の場合、社費派遣元が、選抜候補生選定にあたり、最終的に海外経験を積んだ社員を増やすこと(ないし、キャリアが強すぎる人を選んで卒業後に転職されてしまうリスクを排除すること)を目的に、海外経験がないことを選抜にあたり優先しているケースも一定数見受けられます。

そもそも、良く言われることですが海外に身を置くだけで英語が身につくというのは壮大な勘違いで、海外経験がなくても、海外経験がある人より英語が流暢な方はたくさんいます。

また、海外経験の有無とGMAT/GREの高低に相関関係はあまりないはずです。

また、見方によっては海外経験があっても海外経験がない人より英語能力が低いと、海外経験がネガティブに働き得るとも言えるでしょう。

このあたりは経歴だけ見ていると本当にわからないもので、実際に面接などで英語で話してみて、特に日本人の場合どちらの意味にも驚かされることがそれなりの頻度であります。

但し、英語力とは別に、海外経験、一層具体的には国際的な舞台でのリーダーシップは当然あるに越したことはないのも間違いないでしょう。

実際、確かに海外経験を明確に優遇すると見受けられる学校も一部あるのでその点には注意を払いつつも、海外経験がなくても力技で合格できるだけの努力を今この瞬間にすれば良いだけの話かと思います。

CVは過去の経歴×磨き方次第で性能が決まりますので磨き方に一層力点を置いてみるとか、GMAT/GREはもっと単純に現在の努力次第です。

細かい話、私大文系卒で数学が大学受験に不要だったために国立大文系卒の受験生より元々の数学力が弱くGMATの「Q」で苦労するなど、スタート地点で当然差はあるでしょうが、その分、努力すれば良いだけの話です。

変えられない過去をどうこう言うより、変えられる現在を変える努力に全振りする方が賢明ではないでしょうか。



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