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博士課程学生の就職ストラテジー

少し前にこんな記事を書きました。

問題提起だけでは味気ないので、「自分が現在、博士課程に在籍している学生だったらどうするか」という観点で少し考えてみます。

前提:国内博士号取得者を取り巻く状況

冒頭でご紹介した記事に、「日本の博士号は企業目線で相応の価値を認められていない」と書きました。
また、日本という国全体の成長鈍化で科研費は頭打ちとなり、大学のポストは限られています。

少子化の影響もあって大学がどんどん統廃合されているので、むしろこれから国内の研究職ポストはどんどん減っていくことでしょう。

「博士号取得者を増やそう」という政策が取られたこともありましたが、博士号取得者(供給)に対してポスト(需要)が見合わず、研究員や特任教員といった非正規雇用ポストが量産される結果になりました。

博士課程の入学者数推移(21世紀初頭がピーク)
国別の人口あたり博士号取得者数(他国比較で少ないと言われるが・・・)
学歴別の雇用状況(博士の非正規雇用・それ以外の割合が目立つ)

研究職としてのキャリア

こういった厳しい環境でも「博士号を取得して研究者として活躍したい」場合の就職戦略を最初に考えてみます。

まず、国内市場が頭打ちであれば、海外市場に目を向けるということです。
自分の専門分野への研究費投下を増やしている場所がよい市場です。

主要国の科研費推移

ただ、当然ながら海外の研究室に突然「雇ってほしい」とドアノックしてもなかなか難しいものがあります。実績のある研究室には、世界中からそういったオファーがあるからです。

「学会で一度面識があるだけの海外の先生に熱心にアプローチして、ポストをもらった」という話を聞くこともありますが、珍しいケースです。
受け入れてもらえても、「研究室から給与は出ないので、PD学振なりフェローシップなり、自分の人件費分は確保してから来てね」という厳しい条件でオファーされる場合が多いように思います。

堅実なのは、「海外の研究室と共同研究している国内の研究室を探し、そのプロジェクトを担当して博士号を取る」ことです。そうすれば、博士研究の先に海外研究室での就職が見えてきます。
共同研究の有無は教授に直接聞いてもよいですが、既に成果として発表されている論文や学会発表の共著者を見た方がよいでしょう。

共同研究を進める中で、お互いの相性や実力値も見えて来ることでしょう。相手先の立場で考えると、採用候補者に見ず知らずの人間と共同研究者が並んでいた場合、後者を優先的に選ぶのが自然です。

つまり、研究室選びとプロジェクト選びが重要になってきます。
海外との共同研究が難しい場合は、企業との共同研究を積極的に行っている研究室がよいでしょう。教授も学術系純粋培養よりも、企業出身者の方がよいです。
これも海外研究室との共同研究と同じく、博士課程での研究が就職に直結します。

共同研究先にそのまま就職して研究を続けるのが収まりがよさそうですが、重要なのは「企業側が強い需要を持っている分野で研究する」ことです。
ホットなテーマを扱っていれば、海外研究室でのポスト獲得や世界中の企業への就職がしやすくなります。

「自分は大学教授を目指す」という場合でも、今後は企業での経験があった方が有利かもしれません。
別記事で書いた通り、今後は大学側が自立して産学連携プロジェクトから研究予算を獲得していく必要があります。その場合、有利なのは相手(企業)の手の内を知っている教員です。
企業で経験を積んでから、実務型教員として大学に戻ってくる手もありだと思います。

企業研究者の道

研究職として企業に入る場合でも、私なら国内企業より外資系企業を優先的に考えます。
国内企業は研究開発予算を絞る傾向にあり、研究畑の人間が会社のトップになることも稀です。(最近は少し増えてきたように思いますが)
また、日本のGDP成長に陰りが見えるということは、国内企業にとってお膝元である国内市場が縮小することを意味しています。

でも一番の理由は、国内では(修士号はともかく)博士号の価値が認められにくいことです。
一方で、博士号は万国共通の学位です。世界中のどこに行っても博士号(Ph.D)として扱ってもらえます。
つまり、価値が十分に認められていない国内での博士号を、海外の人は非常に高く評価してくれます。ここにチャンスがあります。

外資系企業でも、日本の事情をよく知っているところは国内企業と似たような採用活動を行いますが、グローバルで採用基準を統一している会社は「研究職であればPh.D(博士号)は必須で修士以下はNG」という要件で、学士や修士より魅力的な給与を用意している会社が多いです。

少し長くなったので、続きは別記事で書きます。

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