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OKRの正しい使い方:OKRとMBOの併用アプローチ

「OKRを導入した!(導入したい!)」という企業が増えています。

しかし、間違ったやり方で導入を進めてしまった結果、組織の綻びを招いて取り返しのつかない事態に陥る会社も後を絶ちません。

少しでもそういうケースが減るとよいなと思い、本稿を書きました。

OKRのよくある間違い

その1:OKRを導入し、代わりに既存の目標管理制度(MBO)を廃止する

OKRは、挑戦・創意工夫が必要な目標管理に絶大な効果を発揮します。
しかし、「当たり前のことをしっかりやる」種類の目標管理を行うためのものではありません。

ここを誤解していると、「OKRを導入する!」と息巻いて「当たり前のことをしっかりやる」型の目標管理もOKRに担わせる設計にしてしまいます。
そして、目標管理の仕組みが崩壊し、「こんなんだったら、OKRなんて入れなくてよかったじゃないか・・・」という結果になってしまうのです。

正しい使い方は、既存の目標管理制度(MBO)で管理するべきものは残し、これまで上手に管理できてこなかった「挑戦や創意工夫を促す」タイプの目標管理だけをOKRに担わせることです。

その2:OKRの達成率をもとに、人事評価や給与を決める

OKRは「挑戦や創意工夫を促す」タイプの目標を扱うものであることは既に述べました。
しかしこれを人事評価や給与制度と直結させてしまうと、社員は評価ばかりを気にして保守的になり、思い切った挑戦ができなくなってしまいます。

正しい使い方は、OKRは大幅未達であっても決してマイナス評価にはせず、特筆すべき貢献があった場合のみ、プラス評価の材料とすることです。

その3:OKRありきで考える

OKRは非常に有効な手法ですが、必ず導入するべきものでもないし、向き・不向きがあります。
特定の手法に肩入れするのではなく、メリット・デメリットを理解した上で「自社に合うか」を考えつつ、他の目標管理手法も併せて検討しましょう。

「時期」の問題もあります。
ある企業に「OKRを導入するべき」と提案したのですが、「今はとてもそんな余裕がない」ということで見送ったことがあります。その企業にとって、OKR導入は間違いなく強力な武器になる施策ではあったのですが、中途半端な状態で導入を進めて現場に混乱を招くよりは、機を伺った方が賢明です。

そもそもなぜOKRなのか?:従来の目標管理制度(MBO)の限界

一般的な目標管理手法は、「ノルマを設定し、達成度合いに応じて評価を行う」ものです。

例えば・・・

営業:月間売上高〇〇万円以上、訪問件数〇〇件以上、CS〇〇%以上
製造:月間生産台数〇〇台、不良率〇〇%以下、在庫回転日数〇〇日以内
人事:新規採用人数〇〇人、離職・休職率〇〇%以下、ES〇〇%以上

これらの数字は、経営計画に基づいて設定されたKPIをブレークダウンして決められることが多いです。
しかし、大きな弊害もあります。それは、「目標達成という手段が目的化してしまう」ということです。

もう少し具体的に説明します。
社員の立場からすると、この目標を「確実に」達成するためには、最初の目標値は「低い」に越したことはありません。
また、目標を達成してしまうと、「それ以上にがんばる」ことをしなくなるという、手抜きのインセンティブが発生してしまいます。

例えば、営業の目標値を「対前年度比」で設定した場合、300%達成などしてしまうと翌年以降が大変なことになるため、105%達成などで留めておく方が「安全」ということになります。

しかし、こういうことを繰り返していると、組織はだんだんと息苦しくなり、「挑戦心」や「ワクワク感」が失われていきます。

図7


OKRとは何か?

この目標管理制度(MBO)の弊害をカバーし、組織にチャレンジ精神や活気を取り戻すための目標管理手法が、OKRです。

OKR関連の記事は世の中に多数あるので詳細は割愛し、ここではエッセンスをまとめた比較表と比較例を掲載します。

図8

図1

また、目標管理制度(MBO)では「達成率」は「高ければ高いほど良い」ものですが、OKRの場合は真逆で「達成率が100%を超えるのは最悪で、60~70%前後がよい塩梅」となっています。

これはなぜかと言うと、

OKRの達成率が100%を超える
⇒当初目標が低すぎた
⇒挑戦的な課題を設定しなかった
⇒ゴール設定が根本的に誤っていた

と見なされてしまうからです。

結論:OKRとMBOの役割分担

・OKRとMBOは、得意・不得意が違うので併用して使い分ける
・OKRには、「挑戦や創意工夫を促す」タイプの目標管理だけを担わせる
・残りは、既存の目標管理制度(MBO)を中心に回す

というのがこの記事の結論です。

図2

別の言い方をすると、アップサイドを取りに行く「攻め」の目標管理がOKRであり、ベースラインを着実にクリアする「守り」の目標管理がMBOです。
両者の違いは、動機付け理論とも密接に関係しています。

※続編を書きました。


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