家に帰りたくないことと、帰る家がないこと『地下道の少女』

酷寒のストックホルムに置き去りにされた43人の子供たちと、病院の地下通路で発見された女性の遺体。

彼らをめぐり、地上で警官たちが右往左往するあいだ、地下ではそこに住む人々が生活の糧を求めて行き交います。

アンデシュ・ルースルンドの作品では、追う者と追われる者がいつも善悪で対立しているわけではありません。

たとえ加害者であっても、その人の暮らしや感情の揺らぎを丹念に追うなかで、加害者が追いつめられていく過程や、なぜ加害者は被害者を選んだのかがわかってきます。

加害者がまた被害者でもある事実は、いやおうなく読者の目を社会問題へ向けさせます。

スティーグ・ラーソン亡き今(『ミレニアム』が出版されたときには既に他界していますが)、社会問題のあぶり出しとエンターテインメントが両立した作品にはもう出会えないかもしれないと思っていましたが、そうでもなさそうです。

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