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正義の偽善(中編)

翌日、昨日のひたすら街を歩き回るというやり方に限界を感じた私たちは、自転車を1日レンタルすることにした。

ようするに原始人が火を発明することに成功したわけである。

カンボジアの自転車の1日レンタル料金がなんと3ドル(300円)だった。
案の定ペダルが外れているなどの些細な故障はあったが歩くよりは断然マシだった。

自転車は借りたものの、どこに何があるかを知らなかった私たちはひたすら街を自転車で走り回ることしかできなかった。

残念ながら原始人から人類への進化はできなかった。

自転車を走らせて数十分後、学校を見つけた。そして、何も考えずサッカーボールを手に取り中に入っていった。

すると、瞬く間に子どもたちが集まりサッカーボールを指差し、「サッカーしようよ」と訴え始めた。

振り返ると、日本だったら不法侵入、不審者扱い、最悪の場合だと警察に通報されるような行為だったなと思う。

文化の違いなのか、教育の違いなのか考えさせられることが多かった。

その後、教室にまで招いてもらいサッカーボールをプレゼントをさせてもらった。

学校を出た後、少し休憩を取り最後のサッカーボールを届ける為、自転車を走らせた。

すると、公園で親子連れの中国人がサッカーをしているのを発見した。

私たちも混ぜてほしいとお願いし、一緒にサッカーすることになった。
30分ほど熱中していると周りに子どもたちが集まってきた。

そして、この旅の恒例となりつつあるストリートサッカーが始まった。

暗くなるまで汗を流した私たちは、別れ際に最後のサッカーボールを配り終えそこを後にした。

少しの時間だったが少年に戻れた気がした。

全てのサッカーボールを配り終えた私の中には今まで感じたことのない幸福感があった。

誰かを幸せにしようすることは、自分自身を幸せにする。

サッカーボールをもらって喜ぶ子どもより、サッカーボールを渡して喜ぶ子どもを見る私の方が幸せを感じることができた。

いわゆる、発展途上国と言われる国に来て、自分自身の考えと改めて向き合うことができた。

日本にいると恵まれた環境やお金というしがらみの中で本当の幸せを感じることが少なかった気がする。

幸せを感じることがこの世に生まれてきた最大の目的だと私は思っている。

そういった意味では日本はまだまだ発展途上国なのかもしれない。

つづく…
#サッカー #カンボジア #正義 #偽善

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