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【生きるための学びを!】『子どもが面白がる学校を創る 平川理恵・広島県教育長の公立校改革』(著:上阪 徹)を読んで

本書は、広島県の教育委員長である平川理恵さんを中心に広島県の教育改革について書いています。

平川さんはリクルート出身で40代で横浜市立の中学校長を歴任され方で、広島県の湯崎知事に依頼され、広島県の教育委員長に就任したそうです。

また、著者の上阪さんもリクルート出身のフリーの記者。専門はビジネスであり、「プロ論」と言うベストセラーも書かれています。

本書は広島県の取り組みを紹介しています。構成としては、
・イエナプラン導入
・国際バカロレア導入
・商業高校改革
・図書館改革
・高校入試改革
です。

個人的に一番最初に紹介したいのは、上阪さんの「おわりに」で書かれている点です。

『私(上阪氏)が見たのは、一流の大学、一流の会社などにいなくても、幸せそうに生きている人がたくさんいることだった。むしろ、そういうところから、スピンアウトした人も多かった。固定化された成功像に縛られていない分、自由に生きている人が少なくなかった。そして、実際に幸せそうに生きていた。もっといえば、大事なことは、果たして社会的に「成功」することなのか。そうではなくて、「幸せ」になることではないか。そのとき、本当に一流の大学や一流の会社は必要なのか。一流の大学や一流の会社でなければいけないのか。そんな思いを、取材を通じて強く抱くようになっていたのである。(中略)もちろん、勉強する努力を否定するわけではまったくない。だが、学力や学歴ばかりがモノサシになっていることの強烈な違和感を、ずっと感じてきたのである。学力や学歴だけが、人を幸せにしてくれるわけではない、ということも。そんな折、広島県で教育が大きく変わっているという話を耳にした。広島が向かっているのは、一つのモノサシではない多様な価値を認めようとしている取り組みだと感じた。そしてこれこそが、長く続いている日本の閉塞状況を大きく変える起爆剤になるのではないか、ということも。願わくば、このうねりが多くの県で起きてほしい。有名大学への入学者数などではなく、もっと本質的な問いを、本質的な価値を教育現場に持ち込んでほしい。そのためにも、民間を経験し、多様な価値観を持った教育長がたくさん登場してくれることを願う。』

子どもが面白がる学校を創る 平川理恵・広島県教育長の公立校改革

私も長年ビジネスの世界におり、同様の問題意識を持っており、当Noteで教育に関する記事を書き始めました。

それぞれ違った特徴を生かせる社会を作るはずが、教育ではある程度画一性を要求しており、子どもたちの行動習慣や思考習慣の形成に繋がっていると感じます。

子どもの育成は、「家庭教育」「学校教育」「コミュニティ教育」の3つで形成されると考えていますが、「学校教育」が変わるのは非常にハードルが高いと感じていました。

一方で、この様な広島県の取り組みが行なわれていることを初めて知るとともに、生きるための学びを考えるヒントがあると感じました。

イエナプランは個人的なツテで知っており、長野県に私立の小学校が建てられたことも知っていました。

社会では異年齢(と言うよりも若者からお年寄りまで)は当然ですし、保育園も6歳くらいのお兄ちゃん・お姉ちゃんが小さい子たちと交わることにより、多くを学んでいると実感していました。

それが、小学校に上がってしまうと、多くの学校では学年、それも教室の単位での閉じられた空間での教育となってしまいます。

イエナプランは3学年くらいできって、同じ部屋の中で、別々の学習を個々の子どもたちが進めていきます。先生はファシリテーションを行い、自ら学ぶことを助ける存在です。

「自分の学びに責任を持てる人を育てるのが目標」と以前、関係者の方に伺ったこともありました。

また、国際バカロレアについても調べたことがあり、面白い取り組みだと感じました。こちらは別の機会に紹介したいと思います。

平川さんの取り組みで触れたいのは、「商業高校改革」と「高校入試改革」です。

「それはもう、商業高校もったいないですよ。もともと商業というのはダイナミックで面白いものです。私自身、20代はリクルートで営業職をやっていて、30代は起業して会社を経営していましたから、ビジネスは人生そのもので、身震いするくらい楽しいものだと思っていたんです」
「いつの時代ですか、と思いました。マーケティングや国際ビジネスの授業もあるんですが、、実際のビジネスとは程遠かった。もっとエキサイティングな授業ができるはずだ、と感じたんです」
「商業高校もそうですし、工業高校や農業高校、いわゆる専門高校の子どもたちの進路を見ると、だいたい県内なんです。広島県に残ってくれて、生活して働いて、家庭を持って子どもを育てる。つまり、県の未来を担ってくれているのは、その多くが専門高校の卒業生なんです」

子どもが面白がる学校を創る 平川理恵・広島県教育長の公立校改革

多くの高校が「普通科」というのが我が国の高校事情ですが、「普通」であることは、ビジネスを行っていく上ではむしろデメリットではないでしょうか。技術やスキルを得た上で大学に行って、より深い学びを続けるというのは大いに有りだと感じました。

また私自身、国内や海外旅行を趣味にしていますが、我が国の長所は地方都市のサービスレベルが非常に高いことだと感じています。

食やホスピタリティの高さを感じますし、そうした人材は平川さんが仰っているように、地元の人たちが支えているのではないでしょうか。

また、学び直し(リカレント)がキーワードになっていますが、高校を卒業した後に、地元で就職したとしても、その先に必要性を感じれば、大学などで学びをやめないことが重要です。

学ぶことの意義を知っている人、楽しさを知っている人が育成されれば、人材の高度化に繋がっていきます。

「個人があって、組織があって、社会があって、その中で充実した人生を送っていくためには、自己認識、自己開示、自己表現、自己実現の4つのステップが必要なんです。15歳までに身に付けておいてほしいのは、自己を認識し、自分の人生を選択し、表現することができる力だと考えました」
「自分でアピールすればいいんです。勉強に関係ないことでもいい。何をしてきたか、自己表現です。これまでは子どもたちが大人の顔色ばかりをうかがってきたような気がするんです。それが、忖度するような人間を生んできたんじゃないかと。これからは、自分をもっともっと自由に表現していってほしい」

子どもが面白がる学校を創る 平川理恵・広島県教育長の公立校改革

平川さんは横浜市の中学校長時代に「内申」の存在に疑問を抱いていました。当時は中学校の一校長という立場であったため、内申の改革には至らなかったのですが、

教育委員長となった現在、必要な改革に着手しています。

廃止という訳ではなく、試験との比重を変えたり、自己表現の重要性を打ち出しています。自分は何者であるのかを考え、将来どうなっていきたいから、その過程としての高校という存在を意識するのかが問われています。

平川さんが書かれた校長時代の書を読み始めました。いずれこちらも紹介したいと思いますが、これまでに感じたのは、
・子どもファーストを徹底している
・現場(先生)を尊重し、校長ができるそれ以外のことを徹底的にやろうとしている
という点です。

さすが元リクルートの優秀な営業員だった方であり、馬力を発揮して、グイグイと進めていく姿は好印象を抱きます。

一方で、そうしたマインドの持ち主の方が行政に入る良さ並びに難しさも感じ、その点は上阪さんも案じています。

今後の教育を考える上で参考になる書籍ですので、こちらの本を是非読んでみてください!

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