NO.1 『憧』

初版2010年 ポプラ社から発行された『百年文庫1 憧』を読んだ。
この本では、太宰治の『女生徒』、ラディゲ作 坂口大學訳『ドニイズ』、久坂葉子『幾度目かの最期』の3作品が集録されている。

『女生徒』

素朴な人間であることを願いながらも実生活を知らず、小さな出来事に夢想をひろげる少女の内面生活を描いた(本書の裏表紙)

時代背景は、戦争中だと思われる。
なぜなら、この話である主人公の女の子は、この戦争が終わったらパリの下町で面白い傘を持って歩きたいという願望を見せているからだ。

歩いていてルンルンかと思えばバスに乗った途端、急に気分が落ち込んだりしていていつの時代も、女の子の気持ちは移ろいやすいものなのかと読んでいて面白かった。

『ドニイズ 』

翻訳のせいなのか読みづらかった。
作者のラディゲはフランスの詩人・小説家である。
腸チフスにより20歳の若さで亡くなっている。

ドニイズという女性に恋焦がれている男の話なのだが、オチが面白くて個人的には良かった。

『幾度目かの最期』

この作品は久坂葉子本人が最期自殺する前の日記のようなものであった。
複数の男性との関係を持ち、思いが揺れ動いている様子が描かれていた。太宰の『女生徒』に似たような感じがした。

太宰氏と久坂氏の共通点は、2人とも自殺してこの世を去ったということである。
人の心の移ろいの描写の仕方が似てるような感覚を受けたので、今も昔も生きる事は大変だな、と感じたのでした。

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