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「仕事乞い」じゃなく「営業」をしなきゃ。

25日。通帳には、残高が50,000円しかない。
目下、入っている仕事は来月いっぱいで約20,000円。1回5,000円の仕事が4回だけだ。

月末には家賃。10日には車のリース代、商材の支払い。少なく見積もっても15万円はないと支払いができない。携帯代金も、水道光熱費も。
なのに、仕事がなかった。

コンビニでスナックパンと、アルバイト情報誌を買う。

スナックパンをかじりながら情報誌を眺める。

英語力、PCスキル、高学歴。単発でできて時給のいいバイトには、何かしらのスキルが必要だった。
飲食店、コンビニ、レジ。時給はよくないがスキルがなくてもできそうな仕事には、数ヶ月以上の約束された時間が必要だった。

15年前。フリーランスとして独立したばかりのころ。
仕事のある月と、まったくない月との間でぼくは困窮していた。

アルバイト雑誌を一通り眺めると、どこにも電話をかけずにゴミ箱へ捨てた。
ソファに座って、タバコを吸いながら全部考えるのを辞めてしまいたいと思った。だけど、考えるのを辞めたいと思っている時点で、考えるのを辞めることはできない。
タバコのせいか、不安のせいか鼓動だけは忙しなかった。

ーだれの役にも立っていない。
ーだれにも喜ばれることなんてない。
ーだれかに迷惑をかけながら、なんとか生活してる。

投げやりな気持ちになり、取引先に電話をかけた。

「仕事が欲しいです」

と、懇願するように頼んだ。

「三木くんも独立したんだから、ちゃんと仕事取れるようにならないとね

そんなひと言と一緒に、本来なら外注しなくても構わない仕事を外注してくれた。

今思えばぼくがこの頃していたのは、「営業」じゃなくて「仕事乞い」だったのだ。

でも、当時のぼくはそんなこともわからず「どうすれば仕事がもらえるのか」なんてちっともわからなかった。

「なんでもします」が当時の常套句だった。けどその言葉は、「大したことはできませんが」の裏返しでもあった。本当に価値あることを提供できる人は「なんでもします」なんて言わない。

「営業」は、相手に喜んでもらえる提案をすることだと知ったのは、それからずいぶんと経ってからのことだった。

インテリアコーディネーターとして、商材の販売をしていたとき。
お客様が迷っていたある商品を押さずに「いらないと思いますよ」と購入を止めたのが、信頼につながったことがあった。

それから毎回指名してくれるようになり、その度にかわいがってくれた。

喜んでもらえる提案をするために、自分のことをアピールするよりも、相手の話を聞くことの方がずっと大切だと知ったのはそれからまたずいぶん後のことだった。


「いまの部屋で何に困ってますか?」
「どこが使いにくいですか?」
「講座の参加者には、どんなことを伝えたいと考えていますか?」
「パートナーとのコミュニケーションは何が不満ですか?」

いまでは、自分のプランや提案を話す前に必ず話を聞くようになった。
「とくに困ってない」という人には、ぼくからできる提案はとくになくなった。
無理に、自分のサービスを進めもしないし、必要なさそうな人にまで売りつけたいとも思わなくなった。

人の話を聞くことではじめて「自分が役に立てるかどうか」がわかるようになった。

自分が役に立てそうな人とは、何かしらの形で仕事を一緒するようになった。

15年前のあの日。
「仕事が欲しいです」と言ったぼくは、プライドも何もかも捨ててある意味では正直だったと思う。

けど、もっと「いま困っていることはありますか?」と聞けばよかった。
そうすれば、人に迷惑をかけながら仕事をもらってるなんて気持ちにならなくてすんだかもしれない。

「『仕事乞い』じゃなくて『営業』をしなきゃ」

あの頃の自分に、ひと言いえるなら、そう言って肩を叩くかもしれない。

では、また明日。

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