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自分の内面をえぐりだすグルメ番組。ハイパーハードボイルドグルメリポート

誰とでも、歓びを分かちあい、困りごとに手を差し伸べられるだろうか。
例えば初対面で、自分の人生の中のほんの一瞬を通り抜けてしまうだけの関係のなかで。自分の命を繋ぐようなものを、なんの見返りも求めず、分けることができるだろうか。

ネットフリックスで見られるハイパーハードボイルドグルメリポート。マジでヤバイグルメリポートとして知る人ぞ知る恐ろしい番組。

「ヤバい世界のヤバい奴らのヤバい飯」というコンセプトのもと、番組プロデューサーが世界中のヤバいところに潜入し、そこにいる人たちの食事をリポートする。

リベリアの元人喰い少年兵、ケニアの山奥で肺を病みながら暮らす青年、カルト教団、難民、ギャング。ハンディカメラ一台と、現地コーディネーターだけを引き連れて文字通り命がけの取材。

この番組を見ながら、食べることは生きることであり、歓びであり、ステータスであると知った。

番組はシンプルな構成のため見る人によって、様々な角度から見ることができる。センセーショナルな現場にハラハラ楽しむことも、こんなところにまで入り込む必要があるのかと嫌悪感を抱くこともできる。

ぼくは、この番組を見ながら冒頭の「分かち合い」をいつも考えさせられた。

人を殺していたり、不安定な情勢の中、生きるために幾度となく犯罪を繰り返し、麻薬を売買し自分も中毒である人たち。難民生活の中、もう何日も食事をしていない、仕事などなくその日身体を売ることができたら何とか200円の食事にありつける元戦争兵の娼婦。

その日の食べ物に困り、明日からの食べ物だってどうなるかわからない彼らはいつも「これ食べてみなよ」と、自分の食べ物をディレクターに差し出す。

ようやく手に入れたなけなしの食べ物。
同じように困っている人同士で分け合うのとは、少し違う。食べ物にはまったく困っていない、日本からやってきたテレビのリポーターに、快く差し出す。そして「うまいだろ?」とニヤリと笑うのだ。

食べ物だけじゃない。
ディレクターが褒めたベルトを、「これ気に入ったならあげるよ」と差し出そうとするホームレス。
警察にバレたら捕まり、暴力を受けるリスクだってあるなか自分が眠っているアジトへと案内してくれる難民の少年。

人は、富み、余っているから人と分かち合うわけではないのかもしれない。
自分にとって大切な人だから、見返りのメリットがあるから、分かち合うのでもないのかもしれない。

ぼくは、自分が何も持っていない中、何かを誰かと分かちあうことがてきるだろうか。
多少何かを持っていたとして、ぼくは誰かと分かち合えてなどいないのだと思った。

彼らと同じ状況になったとして、ぼくは見も知らぬ日本から来たテレビのディレクターと、しかも食うに困ってなどいない人と、大切な食事を分かちあうなど、できないかもしれない。

この番組を通してぼくは、エンタメとしての面白さよりも、自分の内面を見せつけられたような気がしている。

では、また明日。

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