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アイスを食べたい娘は。

大きな室内プレイランドで目一杯遊んだあと。
「あー、アイス食べたいなー」
と娘が言った。目の前にはセブンティーンアイスの自販機。

子どもの頃、思いっきり遊んだあとに食べるアイスは格別だった。
ポカポカと熱くなった身体に、冷たくて甘いアイスがたまらない。

まさにいま。アイスを食べたら最高な気分になるだろう。

ぼくは、娘を見下ろしてニッコリと笑いかけ、150円を渡した。

娘の目が自販機に映るアイスを見つめる。プレイランド内のジャングルジムに登るときと同じ、真剣な目つき。

「パパ、どうしよう。迷っちゃう」

どのアイスにするのかは、彼女にとってとても大きな決断なのだ。ぼくも子どもの頃、なにを選ぶかずっと決まらずに、親にヤキモキされていた。


はやる娘の指がイチゴ味に向かい、引っ込んだ。
そしてそのままソーダ味に向かい、ピタリと止まる。

大きなため息をひとつ。

彼女は気がついたのだろうか。

彼女は、改めて自販機を見つめる。

握りしめている手に、ギュッと力が入る。

「決めた」

小さく呟くと、再び彼女はボタンめがけて指を伸ばす。

やっぱり彼女は気がついてはいなかったようだ。
まだ、渡したお金がその手の中に握られたままであることに。

※※※

今日も見に来てくれてありがとうございます。
ボタンを押してもアイスが出ない自販機に向かって「壊れてんで! これ!」と憎々しげに呟く娘のことが、ぼくは大好きです。
ぜひ、明日もまた見に来て下さい。



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