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マーク・ロスコの魅力を探る旅。

マーク・ロスコ。その作品は「瞑想する絵画」と評される。

大きなキャンバスを数色に塗り分けている抽象的な絵。
一見すれば子どもでも絵の具でベタベタと描けそうなその作品に、なぜか惹かれる。

マーク・ロスコの作品を見るために、千葉にあるDIC川村記念美術館へ見に行くことになった。

はじめて実物を目にする。
個人的には抽象画はあまり好みではない。それでも魅入ってしまうその理由を、自分の中で見つけたいと思った。

千葉県佐倉市。佐倉駅から無料送迎バスで約20分。
街からはだいぶ奥まった自然豊かな森に囲まれた美術館。

美術品の鑑賞だけじゃなく、庭園を散策するだけでも気持ちがいい。
人も少ないので、失礼してマスクを外し大きく深呼吸をする。近づく台風の影響で湿気った空気に強い草の匂いが混じる。

マスクをしていると感じない、生の匂い。蝉の鳴き声とともに、静かな夏を感じる。

いま開催されている企画展は「カラーフィールド〜色の海を泳ぐ」。

カラーフィールドは1950年代後半から60年代にかけてアメリカを中心に発展した抽象絵画の傾向です。 大きなカンヴァス一面に色彩を用いて場(=フィールド)を創出させることで、広がりある豊かな画面を作り出しました。

https://kawamura-museum.dic.co.jp/art/exhibition/
川村記念美術館HPより

ロスコの絵画も「色彩」。
今日は、徹底的に色に囲まれる日になりそうだ。


絵画を見るにあたり、事前に調べたロスコについて思い出す。

「私は悲劇、忘我、運命といった人間の基本的な感情を表現することだけに関心があります」

マーク・ロスコ

絵画は難しいことなど考えずに、ただ見て、感じたこと。それが全てだ。という意見もあるかもしれない。とくに抽象画は左脳で理解しようとするよりも、右脳でぶつかるほうがいいのかもしれない。

だけど、アーティストが何を感じ、考え、表現しようとしたのかを知っておくことは、自分の中の感性を掘り起こすための呼び水となると思う。

抽象画は、歯車のような部分がある気がするのだ。
その絵と自分の感性が少しでも引っかかり、回り始めると魅了されていく。けど、少しも引っかからなかったとき、ちっとも意味のわからない落書きか、意味をもたない染みみたいに思えてしまう。

アーティストを知ることは。ぼくのような美術ビギナーには、楽しむための取っ掛かりになってくれるのだ。

ロスコは、1958年11月プラト美術館で講演を行い絵を描くさいに慎重に計算している7つの成分について語った。

1:死に対する明瞭な関心がなければならない。命には限りがあると身近に感じること。悲劇的美術、ロマンティックな美術などは死の意識をあつかっている。
2:官能性。世界と具体的に交わる基礎となるもの。存在するものに対して欲望をかきたてる関わり方。
3:緊張、葛藤あるいは欲望の抑制。
4:アイロニー。現代になって加わった成分、ひとが一時、何か別のものに至るのに必要な自己滅却と検証。
5:機知と遊び心。人間的要素として。
6:はかなさと偶然性。人間的要素として。
7:希望。悲劇的な観念を耐えやすくするための10パーセント。

https://www.artpedia.asia/mark-rothko/

これらの成分を基に、色を構成していったらしい。

もちろん、すぐに理解できるようなものではないし、絵を見たからといって「この部分がアイロニーだな」なんて思うわけではない。けど、ロスコが色を重ねている時、こうしたことが彼の脳裏にあったことだけは間違いないのだ。


川村記念美術館のロスコ展示最大の特徴は、「ロスコ・ルーム」。

DIC川村記念美術館の「ロスコ・ルーム」 撮影:渡邉修 ©️1998 Kate Prizel & Christopher Rothko / ARS New York / JASPAR,Tokyo C3036

ロスコは作品をまとめて展示することにこだわっており、単体での展示を拒否していたとのこと。
その意志を実現したのがロスコ・ルーム。
壁1面に1枚の絵を飾る部屋。全部で7枚の絵を飾るこの部屋は変形7角形という特殊な形になっています。


いよいよ美術館内へ。
お目当てのロスコ・ルームにたどり着く前に、色をテーマに振り分けられた様々な絵画を鑑賞。

ヨーロッパ近代絵画の部屋。レンブラントの肖像画が1点だけ飾られた部屋。
階段をのぼり、いよいよロスコ・ルームへ。


中は薄暗く、中央にひとつのソファ。
7面の壁には、赤褐色のロスコの絵画。

はじめて実物を見る絵は、想像を越える圧倒的な大きさ。音もなく、仄かな明かりの中浮かぶ巨大な絵画。全面を絵に囲まれた空間は、緊張と緩和が同時に存在するような不思議な感覚になる。

ソファに座って、絵画を眺める。

ずっと眺めていると、次第に濃淡はコントラストを増し、フラットなはずの色彩に奥行きを感じるような気がする。
これだけの大きさを、極限まで薄めた油絵の具を塗り重ねていく。その膨大な作業を思うだけで気が変になりそうだ。

でも幾重にも塗り重ねられたその色彩は、眺めるほどに複雑さを増していくのだ。

「瞑想する絵画」

ロスコの絵を紹介する企画展に、その名をつけた理由がわかる気がした。
一枚の絵ではなく、空間としての作品。

その空間に感じた緊張と緩和の感覚。
それはまさに、心地よい瞑想に入り込むような感覚。

ロスコが絵を描くときに大切にしていた7つの成分。
絵を見ながら、少しだけ思い起こしてみる。
「わかった」とは言えない。けど、ロスコの絵に惹かれる理由は、少しわかった気がした。


では、また明日。

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