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ラオ語の世界③:究極の合理的言語?

以前、ラオ語のナショナリズムとしての重要性について書いたが、ラオスの歴史上、ラオ語の正書法(公式な表記)を決める議論の中で、ラオ語がタイ語と比較して進歩した言語か、劣った言語かの議論があったことを簡単に触れた。

そもそも、ラオ語とタイ語のような似ている言語が無い日本語からすると、いまいちピンとこない話題だが、国境が脅かされてきたラオスからするとナショナリズムという意味で非常に重要な争点だったことが想像される。

さて、私自身、ラオ語を学び始めたとき、ラオ語のいくつかの特性から、シンプルで究極の合理的言語だと、勝手ながら思っていた。
文字に独自性があるので一見難しそうに見えて、そこまで難しいとは言われない理由は、そのシンプルさがあるからだと思っている。

自身の勉強体験から、ラオ語の合理的特性を考えてみた。

① 文字数(子音)が少ない

ラオ文字は27文字に対して、タイ文字は42文字ある。お近くのカンボジアのクメール語の文字数は35文字。
あらゆる言語が、子音と母音の組み合わせというわけではないので、単純な比較はできないが、アジアの言語の中では比較的文字数は少なそう。

② 発音の例外が少ない

知っている範囲では、英語などのように、発音における例外がかなり少なく、文字をそのまま発音すればよい。なので、文字を理解しているだけで、読み書きはできる。(その発音が難しいが…)
タイ文字は「語源型」ということもあり、語源言語の文字をそのまま踏襲しているために、発音しない文字が単語に含まれる。
一方で、ラオ文字は「音韻型」ということで、発音通りに文字表記される。
一見「音韻型」が優秀な表記に思えるが、同音異義語を文字にしたときの理解は「語源型」の方が理解がしやすくなっている。

③ 外来語もすべてラオ文字で表記できる

これは日本語のカタカナ英語にも似ているが、ラオ語は「音韻型」のため、発音通りに文字を当てればよいので、外来語もラオ語表記できる。
聞こえる音というのは、面白いもので、ラオ語的にはこんな感じになる。

Facebook ⇒ ふぇぶっ[ラオ語]
Christmas ⇒ きすまっ[ラオ語] 

④ 複雑な文法や細かい単語がほぼ存在しない

基本「SVO」の型。外国語を習うとき最も苦労するだろう複雑な動詞の活用は無い。名詞に複数形もない。なので、文法はとにかくシンプル。
それに加えて、単語も日本語のように、一見、同じ意味でも細かいニュアンスが違う単語(「本」と「書籍」みたいな)も多くないので、単語数も比較的少ない。


一方でシンプルが故の難しさもある。

例えば、同じ単語で複数のニュアンスを持つ単語があったり、ネイティブが日常や公的文書で使う独特の表現や言い回しがあったりする。それらの理解のハードルが高い。(今でも全然わからないことが多い)

このように、ラオ語はシンプル故の難しさがあるのだが、一方でコミュニケーションをするうえで、必要最低限の要素のみを詰め込んだ、究極の合理的言語だと思っていた。(以前の私の持論)

以前、ポルトガル語を勉強している友人が、ポルトガル語の時制は16種類もあるというのを聞いたことがある。コミュニケーションをする上でそんなに時制が必要なのか疑問だが、ポルトガル人からして見れば、その複雑性はある意味で「アート」なんだそうな。

「ラオ語は合理的言語!」と言いながら、元も子もないが、合理性とか非合理性とか、進歩した言語とか劣った言語とか、そんなことどうでもよくて、言語は文化。それぞれの国の人々に適した形で使われているのであって、勝手にそんなことを決める必要性も筋合いのないのである。

※参考文献


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