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『舞台メディスン』私の頭の中の記憶の戯曲

ジョン・ケイン/田中圭
メアリー/奈緒
メアリー②/富山えり子
ドラム奏者/荒井康太
(敬称略させて頂いております。)

※上手(かみて):舞台向かって右側
※下手(しもて):舞台向かって左側


開演
🕐13:00 (舞台の上の時計)

客席電気ついたまま 遠くからドラムの音

電気の消えた何やらパーティをした後のような荒れた部屋。

(13:02頃) 廊下からジョンがやって来てこの部屋で間違いないかキョロキョロしながら確かめて入ってくる。

部屋に入りパチンと電気をつける。
希望に満ち溢れ、ニコニコしていた笑顔がみるみる曇り、今見ている情報が間違いなんじゃないか?と電気を消してもう一度つけてみる。

(眩しそうな顔※信じられない、信じたくない)
そ~っと目を開けてみる…
しかしやはり部屋はぐちゃぐちゃのまま…

イライラしながら持ってきた衣装をシングルハンガー(上手(かみて)手前)に引っ掛ける。
(元々掛かっていたカラフルなワンピースを見て苦々しい顔。床に叩きつける。)

フットサルのコートを作るために貼られた白いビニールテープ。途中で絡まってぐちゃぐちゃに丸められ、床に落ちている。白いビニールテープを剥がして奥のゴミ箱に乱暴に投げ入れる。

音響機材を軽く見て、ドラムのシンバル(低音→高音)を軽く叩いてみる。
(ジャーン、シャーンと金属音)

金属の欠片落ちる(ボルト)

ドラムの横の机の上に自分が書いた台本を見つけ安堵。何枚かめくって見てみる。愛おしそうに抱きしめる。

TITLE『case John・Kane』

(下手ベンチ奥)床に散らばった複数のカラフルなボールを拾って(取手の着いた)紙袋型の物入れに片付ける。

(舞台真ん中)パーティのテーブルとして使われたであろう(紙コップや紙皿、クラッカーや風船などが散らばっている)卓球台を奥に追いやる。

オレンジのチェックのテーブルクロスが重い荷物に引っぱられ机の上の物と共に落ちる。

テーブルクロスにクラッカーのテープや皿などを包んで奥にやった卓球台に投げ捨てる。

(上手)小さなブースの近くの床に落ちている風船を掴む。

両手で風船を割ろうと何度か力をこめる。

割る。

苦々しい顔で部屋に掛かった『Congratulation(おめでとう)』の幕を睨む。
小さなブースのランプが灯りジョンは片付けを諦め、マイクを掴む

ジョン「もしもし聞こえますか?」
天の声(質問者)「うん」
ジョン「ボクは息が聞こえます。」

質問者「今日の調子はどうですか?」
ジョン「いいです、あの昨日この部屋が何に使われたか聞きたくて!部屋が臭うし散らかっていて…」

質問者「今日の調子はどうですか?ジョン」

ジョン「緊張していますw声で分かると思いますがw」

「あの、スタッフさんも息抜きが必要なのは分かっています!でも僕がこの部屋に来れるのは1年に1回しかない!(大切な)僕の時間を片付けに使いたくない…」

と早口で訴えるが天の声の主には届かない。被せるように、

天の声「調子はどうですか?」
答えようとするが録音する自分の声にかきけされる

(録音された声)
ジョン「元気です、はい」

「あなたはどれくらいここに居ますか?」「わかりません」「どうしてここに来たのですか?」「うまく答えられません」「ここにいることを決めたのは誰ですか?」「僕の両親と、町のお医者さん」その後も録音された天の声とジョンの会話が流れ続ける。

ジョンが小さなブースの中に入りヘッドホンをつける。(質問など聞いてこれから行われる準備をしている※音声は聞こえない)

(13:07頃)老人のマスクをつけたメアリーが慌てた様子でやってくる。
雇い主(?)から電話。

メアリー「すいません!バスが遅れて!…え?遅れてない?…ここで間違いありません!はい!分かりました!」(携帯を切る)

音響機材のところへ行き、自身のスマホで音楽をチョイスして流す

曲《インスタント・リプレイ》(13:10頃)

舞台奥)大きなガラス張りの(衣装部屋兼小道具部屋の)ブースのブラインドが上がると中にロブスターの着ぐるみを着たメアリー②がいる

メアリーはロブスターの着ぐるみを窓越しに見て、それから(上手)小さなブースの中に今日の対象者がちゃんといることを確認してホッとする

ノリノリに踊りながらマスクをはぎとり(痛そう)持ってきた大きなカバンに放り込む。
(ここからの動作、踊りながら)

テーブルのルコゼードを飲むが甘味料がキツイのか《うぇっ》とした顔をして吐き出して投げ捨てる。

寝転んで勢いよく脱いだ男物の大きな靴のかわりに動き易そうな靴に履き替え、服を脱ぎ、腰に巻いた偽の太鼓腹を外してカバンに全て放り込む。
(黒いレ・ミゼラブルのTシャツ、黒いパンツ姿になる。)

右の着け眉毛を取る(痛そう)しかし左の眉毛がどうしても取れない。

ルコゼード(体に悪そうな甘味料たっぷりなジュース)を掛けて取ろうとする。目に入り痛くて寝そべってもがくが取れない。

ビニールテープ等が入ってる小道具箱を音響機材から引っ張り出す。(小道具散らばる)
その中の引き抜きバサミで引っ張る。

取れない。

メアリー②(ロブスターの頭は取っている)はブースの中で軽快にテニスラケットを振ったり、寸胴鍋の中をラケットでかき混ぜたりしている。

メアリーは音楽に合わせ、踊りながらドラムに触り、質問者の席(下手)に座ってマイクの調子を確認する「ワンツー、ワンツー(質問者っぽい声色で)ジョン・ケイン。実に興味深い…。ちょっとお話聞かせてくれるかしら」よし!と頷きマイクを下げる。

音楽に合わせマイクのコードを波の様に縦に振動させながら伸ばしていく。

音響機器の音源をチェックするメアリー
(スイッチを押す)

マクマーン神父「皆さん、おはようございます。」
村人「おはようございます。神父さま。」

父「この子はどうしたんだ?マーガレット!」
母「馬鹿な子ね~ 馬鹿な子ね~」

フィリップ「やれよ、ジョン。早く服を脱げよ」

リアム「生意気な奴らを俺がどうするか知ってるか?」

よし!と頷くメアリー。

ロブスターの着ぐるみを着たメアリー②がブースの扉を開けると暴風が吹き、壁に打ち付けられる。

そしてロブスターの頭を小脇に抱え、部屋に入ってくる。

メアリー②「あなたが音響オペレーター?」
挨拶をするメアリー
メアリー「ええ。あ、あと役者も!」
メアリー②「あ~役者は2番ね。私は役者しかしないわよ。私はえぇ~それ…(何だったかしら?と音響機材を指差して)」
メアリー「音響機材」
メアリー②「そ。それ触らないからw」

自分の方が役者として上だとマウントを取るメアリー②

(下手)ブースを覗いて
メアリー②「彼がジョンケイン?」
メアリー「ええ、今質問を受けて準備してる」

ロブスターの頭をベンチ(下手)に置く

下手で両手を広げるメアリー②「ハッ!」
ちょっと違うかな?と首を捻って
上手で両手を広げるメアリー②「ハッ!」「ハッ!」「ハッ!」(色んな感情でポーズ)

メアリー②「うん。ここかな?」

メアリーがメアリー②が指さした場所にジョンのマイクの立ち位置のバミリを貼る。

(上手)ブースに座るジョンをチラっと確かめてメアリー②「彼の台本を読んだ?」
メアリー「バスの中であらすじだけは…。まあ、普通ね」
メアリー②「言葉がちょっと過剰だけど(笑)彼が書いたんだから仕方ないw」
メアリー「わかる!カットする?」
メアリー②「もち(ろん、カット)するわ~!3時から子供パーティがあるの!」
メアリー「おめでとう!」

メアリー②「音の準備は出来てる?」
メアリー「ええ、ここに音源が入ってる」
メアリー②「ドラマーは?」
メアリー「さっき連絡があってバスが遅れてるって」
メアリー②「あー…ミュージシャンぽい…(苦笑)」

メアリー「いかにもって感じよねw」

メアリー②あたりを見回して

メアリー②「ところでこの散らばった風船やらお菓子やらは何なの?」
メアリー「夜にスタッフがパーティしたんじゃない?」
メアリー②「ゲロとキャラメルポップコーンの臭いがする(うぇ~)」
メアリー「ここら辺ではそういうのが楽しいのよw」(ピンクのフワフワした巻き物を汚そうに手で触らないように奥に運ぶ)

(舞台中央)メアリーが頭の上で手をパンと叩いくと照明が消え、もう一度叩くと再び着く。

ブースの中のヘッドフォンをしたジョンが電気が消えて直ぐに着いたので2人の存在に気付いて振り向き笑顔で舞台の上を確認して、再び机の前を向いて質問に戻る。

メアリー「ところでなぜカニみたいな着ぐるみを着てるの?」
メアリー②「私はロブスター!」(大きく手を広げて)
メアリー「なぜロブスターの格好を?」
メアリー②「あぁ…何だか~自慢みたいになっちゃうから~言いにくいんだけどぉ~」
メアリー「子供パーティーの?」
メアリー②「そう、テーマがあって♡」
メアリー「リトルマーメイド?」
メアリー②「当たりっ!」
メアリー「… でもセバスチャンってカニじゃなかった?」
(メアリー悪い顔をして笑う)
メアリー②「………クソ!」

メアリー②「ところで何なのこのテープ」(苦い顔)

メアリー「フットサルか何かじゃない?」

メアリーは床のフットサルのコートに使った白いビニールテープを剥がして準備を進める

メアリー②「あなた役者に必要なモノ、わかる?」
メアリー「動きやすい靴を履け!(自信満々に)」
メアリー②「あー大事」(うんうん)
(でもこれ)「役に、立て。」
メアリー「あー…。分かってる。」
メアリー②「ここで私達がやろうとしてることはとても重要!世界中が今とても生きにくくて混乱している。私達のようなミュージカルに携わる人間が演技という素晴らしい力で感性を呼び起し人生の意味や目的をクリアにさせる!

…で何なの?その眉毛?」

メアリー「…? あー!これ!前の仕事で…!めちゃくっついてて取れないのよ」
メアリー②「除光液は?」
メアリー「無い。ここにあるのはルコゼードだけ(苦々しく)」
メアリー②「ルコゼード!だぁ~い好き!でもルコゼードじゃ取れなさそうねw」
メアリー「知ってる。もうやってみた。」
メアリー②「ま、それは後でなんとかしましょ。」
「ところであなた名前は?」
メアリー「メアリー」
メアリー②「メアリー?」
メアリー「ええ」
メアリー②「それは違うわ」
メアリー「はあ?」
メアリー②「メアリーは私の名前よ!」
メアリー「私の名前もメアリーよ!」
メアリー②「呼ぶ時ややこしいからアナタ名前を変えたら~?」(ロブスターの爪でメアリーの首を挟む)
メアリー「嫌よぉ~あなたが変えたら?」
メアリー②「も~っとあなたにふさわしい名前が見つかるかもよぉ?」

いがみ合いながらも発声練習や準備体操を始める2人

メアリー②が大きな爪で脇の下をトントン
「イヤサッサ、  イヤサッサ♪」

メアリーも卓球のラケットを持って腕を回したり、大きく屈伸してベロをレロレロしたりしている

質問が終わったジョンが2人に近付いて「こんにちは、役者さんですか?」とニコニコしながら二人に声をかける

メアリー②の愉快な着信音が鳴る

大きな爪があってズボンのポケットから取り出せない
「ちょっとごめん、これ出して」とメアリーに指示する
急いでポケットから取り出しメアリー②の耳に当てる

(ドラマーが入ってくる。ジョンと目を合わせて挨拶する)

メアリー②「はい。彼も彼女も今揃いました。はい。今です。はい。大丈夫です。準備出来てます。どーも、ど〜も、ど~~~~も!」

メアリー②「さ!始めましょ!」

え?え?(着替えた方がいいの?)と焦るジョン

(上手ビニールのパーテーションで作られた)小さなブースのところに走る

メアリーが手を叩いて電気を消す

ズボンをおろして着替えようとしている

メアリーが手を叩いて電気が着く

(パジャマのズボンを下ろしている)…が間に合わない!と諦めて急いでパジャマのズボンを上げて舞台真ん中まで戻ってくる。

メアリー②はロブスターの殻の中に椅子の背もたれを入れ、トントントンと椅子を引く。
電動鉛筆削りで鉛筆を削り、フッフッと木屑を飛ばす。

ジョン、メアリー②と対面で椅子に座る。

メアリー②「こんにちは、ジョン。ジョン・ケイン。」

ジョン「こんにちは~(ニコニコお手振り)」

メアリー②「私はメアリー。素敵なパジャマね、それは綿かしら?」

ジョン「ありがとうございます。え? そうかな?多分…それが何か?」
メアリー②「彼にはパジャマが木綿かどうか分からない、と。(メモ)」
ジョン「(慌てて後ろのハンガーを指さして)あ、でも衣装ならちゃんと持って来てます!でも着替える時間がなくって…」

(スタンドマイクをバミリを貼った場所に用意するメアリー。後ろずさりすると椅子に座っているジョンとぶつかる。)

メアリー「ああ~ごめんなさい!」
わあ!と立ち上がり、いえいえ、とジョン。

ジョン「あ、あの、今まで僕とあなたは会ったことないですよね?」
メアリー②「ええ。ないわ。」
ジョン「良かった~(心底ホッとして)」
メアリー②「最初に会った時少し心配してたでしょ?さっきあなたの声を聞いてああ~心配してるな~って思ったわ。」
ジョン「忘れっぽくなっていて。」
メアリー②「会ってなくて安心した?」
ジョン「すぐに忘れると思われたくない」
メアリー②「それはあなたにとって重要なのかしら?」
ジョン「第一印象はとても大切だし、すぐに忘れてしまうことはあまりいいことじゃないから。もし会ったことがあるならあなたは僕があなたのことを覚えてるほど面白くない人間だと判断したと思うだろうからそう思われたくない。ンフフ…」
メアリー②「じゃあ、他の人から見たあなたの第一印象はどんなだと思う?」
ジョン「僕は男で…ンフ」
メアリー②「まあ、そうね(笑)」
ジョン「背が高くて…くせっ毛。肌が青白い。」
(観客を指差して微笑みながら)
「まあここの人は皆青白いけどw」
メアリー②「あなたの性格は?」
ジョン「礼儀正しくて穏やか。大抵の場合は。汚い言葉は使いたくない。」
(メンバーに握手して回るジョン)
「あ、それを怖いと言う人もいるけど」
メアリー②「あら、それは何故かしら」
ジョン「ここら辺の人は乱暴な言葉が好きなんだ。だから使わないと普通じゃないと思われる。気をつけないと。」
メアリー②「ここにはあなたの夢は作家だと書かれている」
ジョン「あの…僕は…作家だったことは1度もなくて。だってここには紙も鉛筆もない!!………アナタは持ってるけど…(チラリ)」
メアリー②(驚いて自分の鉛筆を見る)「ああ…まあそうね。でもまあそれは仕方ないんじゃない?(苦笑)」
(メアリー②オーバーに目や脚、首を刺す仕草)
まあ、うん…と頷くジョン。
ジョン「あなたの名前は何ですか?」
メアリー②「私の名前はメアリー」
ジョン「僕はいつもは人に自分のことを考えて欲しくない。」
「もちろんちゃんと存在はする。でも自分に注意を引かれない程度に存在するように気をつけてる。その方が生きやすいし楽だと思わない?」
メアリー②「人から見えなくなりたいの?それであなたは平気なの?ジョン。」
ジョン「見えなくなるのが僕の夢…」
メアリー②「見えなくなる夢は良く見るの?」
ジョン「そんなに頻繁には…でも見たことはあります!(嬉しそう)」
メアリー②「それは誰かに言った?」
ジョン「ここに来た俳優さんに言ったかもしれない、その昔。」
メアリー②「それで彼はなんて?」
ジョン「彼にはピンと来てなかった…見せることが彼の仕事だから…でも彼の仕事ぶりは最高だった」
メアリー②「…ああ、でしょうね」
ジョン「メアリー、あなたには繰り返し見る夢はありますか?」
メアリー②「………………………………。」

長考、ひらめいて

メアリー②「ええ!あるわよぉ~!(ニヤリ)」

え!?あるの?とメアリーとドラマーが顔を見合わせる

ジョン「僕の人生の物語についてみんなで語る前に聞かせて!その方が僕らの信頼関係も深まると思うし!お願い!」
メアリー②「………。そうね!そうかもしれないわね!」

メアリー②「私が繰り返し見る夢はね…、ジョ~ン」

(ドラマーに指さし、音の指示)

(13:17頃)

まるで夢の導入のようなコーン、キーンとした神秘的な音

メアリー②「私はロブスター!!」

メアリーとドラマー(ロブスター!!!???)

メアリー②「私は牛乳の入ったバケツを持って砂浜を1人で歩いている。たっぷり入った牛乳がユラユラ揺れてバケツの側面にこぼれている。ジョン、そこにはだ~~~れも居ない、私だけ。小~さなカニだけが砂浜を這っている。(お~い元気ぃ~?(小声で手を振る))」

ピュ~~~~~ンとカニを表した可愛い笛の音
ジョン、音のしたドラムの方を見る

メアリー②「そこに1頭の大きな馬が私に向かって走ってくる音がする!」

メアリーに音!と指示する

(慌ててメアリーがプラスチックのカップ2つでパッカパッカと蹄の音を鳴らす)

メアリー②「私は牛乳が入ったバケツを砂浜の上に置き、駆けてきた大きな馬を見上げる。誰も乗っていないはずなのに何故だかそこにはハンサムな男の顔が見える!」

メアリー②「そう!それはケンタウロスだったの!」「半分人間!半分馬!」

メアリー②「彼は大きな舌で私が持って来た牛乳を舐め出した!」

メアリー②とても険しい目つきで、大きく舐める仕草

(…シャッ!! …シャッ!!)

ジョン、メアリーにもするように促す。

(舌なめずりするメアリー)

メアリー②「ミルクの粒が飛んで周りの砂の上に染み込む。そしてね、ジョン!私は自分の殻を脱いでいる!

ジョンにマイクを渡してロブスターの着ぐるみを脱ぐ

メアリー②「ああ…私、どうしちゃったの?神様!」

ロブスターの殻をベンチに掘り投げる

メアリー②「そしてケンタウロスが牛乳を舐めるのを止め、私を見上げて叫ぶ」

メアリー「一体何をしているの、メアリー?」

メアリー②「でもケンタウロスの声は私には聞こえない!だって硬い殻をバリバリと剥がしているから!もっと大きな声で!!!」

メアリー「(ケンタウロスのようにより大きく太い声で)一体なぁ~にをしてるんだぁ!メアリィィ~!!??」

メアリー②「その声は確かに聞こえたわ。でもねジョン。私は答えることが出来ない。何故ならその厚~い厚い殻を脱ぎ捨て真っ裸!3年間の俳優養成所で培った身体表現を駆使して踊り狂う。子供パーティでカフェインでハイになった子供達の様に!(イエ~イ♩)」

ケンタウロスがまた私のバケツに入った牛乳を舐め始める。

メアリー②「ペロペロペロペロ」

ジョンがメアリーにもするように促す

メアリー「ペロペロペロペロ」

メアリー②「彼の舐めるのが早くなるほど私の踊りも早くなる!」

メアリー②「もぉ~っと早く!」
メアリー「ペロペロペロペロペロペロペロペロ」

メアリー②「高速にかき混ぜられたミルクがだんだんクリーミィになってバケツから飛び散り、彼の髭を伝っている!そして彼は笑い始めた!」

メアリーはケンタウロスのように笑い始める
メアリー「は!は!は!は!は!は!」

メアリー②「更に大きく!」

更に音を大きくしてたか笑いするメアリー
メアリー「ふわっ!はっ!はっ!はっ!はっ!はっ!はっ!」

メアリー②「彼が大きな頭を振り上げるとチーズの粒のようになった塊が彼の顎髭から飛んで汗だくで表情豊かに踊る私のナイスバディな裸の体に上に飛び散る。」
「そして彼は私に向かって叫んだの!」

メアリー「メアリー!俺の背中に乗れ!乗れ!乗ぉ~れ!!!」

メアリー②「私は彼の大きな背中に脚を振り上げ、飛び乗った。太陽が無邪気な海を燃やしていった…」

四つん這いになって馬になるメアリー
その上にメアリー②がまたがり2人で腰を振って馬が駆ける動き
メアリー「おうおうおうおうおうおう…」
(いつまでもケンタウロスをしてるメアリーに素に戻って、冷静に終わりと告げるメアリー②)

はぁ~やり切った、と席に戻ろうとするメアリー②

メアリー②(ドラムを見て)「ドラム、最っ高!今度知り合いのバンド紹介する。今探してんのよ。」

メアリー②「即興、演技の基本!演奏もね!」

席に戻ろうとしたジョンが、ん?となって尋ねる。

ジョン「どうしてロブスターのカッコしてたの?」
メアリー②「? ああ、衣装は時に役者を助けてくれる魔法」
ジョン「でも夢の話をする前からロブスターの衣装を着てここにやって来るのはなぜ?」
メアリー②「…………。家を出る時レインコートが見つからなかったの」
ジョン「でもロブスターの衣装は見つけた…?」
メアリー②「いつもマネージャーに言われてるの。家を出る時はコートを忘れるなって。……あとロブスターの殻とか?(んふふ)」
ジョン「どこかへ行く途中じゃないんだよね?(不安気)」
メアリー②「…………ん?それはどういう意味かしら?」
ジョン「前に聞いたんだ。ここに来る役者さんはホントはここはどうでも良くって終わったらさっさと子供パーティに行くって…」
メアリー②「……………」
「私達がここにいるのはね、ジョン。ジョン・ケイン。あなたの為。他には何もないわ。皆だってそうよ。ね?」
(頷く一同)
メアリー②「安心した?」
ジョン「うん。分かった。」
メアリー②「ちゃんと聞いてくれたかしら?」
ジョン「うん。ありがとう。メアリー」

メアリー②「素晴らしかったわ、ケンタウロスのアドリブ」
メアリー「ありがとう」
メアリー②「私が、よ?」
メアリー「え?あ~…おつかれぇ…(苦笑)」

メアリー②「太陽がわがままな海を燃やしていった…(噛み締めるように)」

(ジョンに向かって惚れ惚れしながら)
メアリー②「なんて凄い台詞…。人並み外れた身体能力と誰も思いつかない凄い台詞…」

ジョン愛想笑い。

メアリーがジョンを呼んでマイクのところに立たせる

昨夜あったスタッフのパーティについてメアリーにはなすジョン

メアリー②はルコゼードをちゅぱちゅぱ飲む

メアリー②の独特な飲み方にびっくりするジョンとメアリー

メアリー②はルコゼードを赤ん坊のように抱きしめキスをする
メアリー②「私も愛してるわ~ちゅきちゅきちゅき♡♡♡」
メアリー②をひきながら見る2人
見るに見かねて夢中なメアリー②に声をかけるメアリー

(気持ちを切りかえて)
メアリー②「さ、初めましょ」

ジョンはマイクの前に立ちセリフを言おうするが緊張してなかなか第一声が出ない。

ジョン「いつも始めは緊張してw」
メアリー②「大丈夫。私達はこれをもう100回もしているから。任せてちょうだい。」

メアリー②「いつでもどうぞ」

メアリーが緊張しているジョンに優しく声をかけてあげる

メアリーがパンっと手を叩くと照明が消えジョンにスポットライトが当たる。

ジョン、独白。
「僕の名前はジョン・ケイン。2月7日ラスティーニ村のセントマイケル病院で生まれた。」

メアリー②、鉛筆の芯がボキッと折れる
メアリー②「あらやだ…何これ?(小声)」

新しい鉛筆に持ち直して、フッフッと木屑を飛ばす。

(ジョンは一瞬気を取られるが気を取り直して続ける)

両親は若い20代前半の夫婦で僕は最初の子供で一人っ子。父は田舎町の労働者。母は主婦で今は母…。

メアリー②「音楽!」(とドラマーに指示)

メアリー②とメアリー、奥のブースにダッシュで戻ってメアリー②は母親、メアリーは父親の衣装に着替える

「そして僕はこの世界に産まれた。母さんは難産で僕は産まれた時長い間ずっと息をしてなくて、何度叩いても産声をあげず青い死んだ魚みたいだったんだって。僕が冗談が分かる歳になると母さんは僕に繰り返し言った。」

(母音声)「言ったかしら?ジョ~ン。青い泣かない赤ん坊は、死んだ魚みたいだった…死んだ魚みたいだった…死んだ魚みたいだった…」

ジョン「うん。もお100回聞いた…」

スポットライトがメアリーズを照らす
メアリー②は母親、メアリーは父親の衣装を着てジョンの両親を演じている。

客席に背を向け、椅子に置かれた赤ん坊のジョンを置いて去って行く(ような足の動き)
(メアリー②キューピーちゃんのような手、お尻を振って、メアリー大股ガニ股歩き)

僕は病院の小さなベッドに残された。

二人が病院の廊下を真っ直ぐ歩いて去っていく。僕は小さなベッドの中から2人が離れて行くのを見たんだっけ?
ポケットの紙煙草を探す父さんの湿った上唇は紙煙草の粉で汚れてまっ茶色。
母さんは看護師の小さなお尻をバカにする。

(母親音声)「な~によ気取っちゃって!小さいお尻しちゃって…小さいお尻しちゃって…」

数週間が経ち、春が早く来て、開いた病院の窓から外の世界がこんにちは~って挨拶する。小鳥がさえずり風がそよぎ牛が草を食べている音がする。僕の小さなベットから想像する。僕は酸素をいっぱい吸って僕の青い肌がピンクに変わった頃父さんと母さんはもう一度病院にやって来た。

(再びメアリーズの両親にスポットライト)

だんだん2人の足音が病室に近付いてくる。
そして僕はついにベットから持ち上げられ
初めて母さんの胸に抱かれた。

母さんの肌からはバラと煙草の匂い

両親と僕、病院を3人で歩く。無視された看護師達が僕の未来を見るかのように口々に嘆いてる…
(音声)「ジョン…」「ああジョン…」「可哀想なジョン…」「さようならジョン…」「ジョン・ケイン…なんて頼もしい名前」

外の世界はキラキラ眩しくて、早く野原をかけたり木に登ったりしたい!

バス停で母さんは僕を父さんに手渡した。見上げた虚ろな父さんの目、煙草で茶色に汚れた湿った唇は2匹の不幸なナメクジが這っているみたい(嫌なものを見た顔)

母さんは小さな村の嘆きの女王
父さんは愚痴ばっかりの無学な田舎者

(マーガレット(母)音声)「さあ!不幸な我が家に帰りましょ!」

(父音声)「おおい、変わってくれ、マーガレット。またうんこしやがった!クソばっかりしやがって」
(ジョンを受け取り睨む母)

照明が消える

そして僕は家に帰った。でも僕には抱っこもおっぱいもない
僕は牛乳を飲まされて育った。父さんは牛の乳って呼んでた。僕は牛乳でどんどん太った。

(メアリー②、ルコゼードをミルク瓶のように赤ん坊の人形の口に当てる)

(父音声)「おい、マーガレット。この子に牛の乳を飲ませろ。みろ良く飲むぜwうわ、またクソしやがった!」

僕はあっという間に沈黙になれた

一人でベッドに寝かされた2階の小さな部屋は孤独で静寂に包まれる。家はうめき声をあげ、壁には沈黙が降り積もり、1週間もしないうちに真っ黒に染まった…

(遮るようにメアリー②がジョンの所へ来る)
メアリー②「ここから特に大きな動きもないし5ページほど飛ばしましょ(ニッコリ)」

ジョン「え…?でも…」
メアリー②「ああ~!誤解しないでね!と~ってもいいのよ、詩的だし。何より言葉が綺麗!でもそれは重要じゃないの(大袈裟に申し訳なさそうに)」
ジョン「重要じゃない?(は?)」
メアリー②「台所でお風呂のところから始めましょ」
ジョン「でもそれじゃここの大切な部分が飛ばされてしまって…(焦)」
メアリー②「ああそうね!でもその方がドラマチックだし…エピソードが際立つと思うの!」
ジョン「まあ…そう言うんなら…」

(両手をグッと握り、怒りを収めようとするジョン)

メアリーはバケツに入った赤ん坊の人形を前方下手机の横に設置

メアリー②「もうすぐ1歳の冬…」←マイクを取って勝手に進めようとする

(ジョン慌ててマイクを奪い返し)
ジョン「分かってる!」

メアリー②「とても素晴らしかったわよ~」
ジョン「ありがとう。そちらも。」

(13:30頃)
改めてジョン、客席の方を向いて

ジョン「もうすぐ1歳の冬。台所の流しにお湯を溜めて母さんが僕をお風呂に入れる。」

(お湯をためる音)

ジョン「僕は水切り台に膝を立てて湯気で曇った窓ガラスに指で線を描く。」
母「ジョン!じっとして!動かないで!それ止めて!」
ジョン「僕は面白がって線を書くのを止めない。」
母「それ止めてって言ってるでしょ!」
ジョン「お母さんがとうとう僕を掴んでお湯につける。台所は寒くてお湯の温度はちょっと熱い。僕は足がヒリヒリしてショックで涙も出ない。」

「お母さんが僕を台所の流しに残したままパタンと部屋を出て行く」
「僕はお皿や鍋を洗うピンクの石鹸をぐにゃぐにゃにして遊ぶ。僕は1時間以上その冷たく濁ってよごれた液体の中にいた。母さんが出ていったキッチンの扉を見てみる。そして母さんの部屋を想像する。母さんはベッドに腰掛け煙草を吸っている。反対の手は額を覆い失望している。

曇った窓ガラスの向こうの真っ暗な外の庭の様子は僕には記憶がない。でもきっと隣の人がいて野原と木々に囲まれてしーん…と静まりかえっている。丘の上にはきっと雪…」

「背中には、お母さんの手」

ジョン「分かっていたんだ!ここから落ちたらどうなるかなんて!床の上が真っ赤な血で染まるだろう…でも父さんと母さんの温もりをもう一度感じたくて。」

「僕は落ちた!」

メアリー②がバケツを倒し、赤ん坊の人形が床に投げ出される

父(メアリー)と母(メアリー②)が慌ててかけてくる。メアリー②が人形を抱き上げる

父音声「この子はどうしたんだ?マーガレット!もういっぺん流しで洗うか?wうわ、頭に血がついてやがる」
母音声「バカな子ね~」「バカな子ね~」

メアリーがパンと手を叩いて照明がつく。
ここで一旦(長い)休憩タイム。
ドラマーが部屋から出ていく。

メアリー②「素晴らしかったわ~ジョン!」
ジョン「ありがとうございます。」
メアリー②「状況が違ってたらあなたはきっと素晴らしい作家になっていたわ!編集者もついて多くの人に感動を与えてたに違いないわ!ねぇ!そう思わない?」
メアリー「え?ええ、そうね。良かったわ!」
(親指をグッ)メアリーを掴んで
メアリー②「私はあなたと初めましてで会ったばっかりだけど、私、『良かった』って言葉が世界でイッッッッッチャン嫌いなの!分かった????」
メアリー「そうなの???」

メアリー②「ナイスだったわよぉ~!!お、と、は!!(嫌味っぽく)」

メアリー②は赤ん坊の入ったバケツを持ってブースに着替えに戻る。
暴風が吹いて中々入れない。
中に入ると風が止む。

ジョンは忌々しい『Congratulation(おめでとう)』の横断幕を見上げ、下に椅子を置く。

ジョン「ところでなんでそんな眉毛してるの?」
メアリー「え?(眉毛を触って、ハッとして)ああ~(苦笑い)まだ途中なのw」
ジョン「俳優の仕事の?」
メアリー「ええ」
ジョン「役作りか何か?」
メアリー「う、うん…まあそんな感じ?(笑)」
ジョン「きみの名前は?」
メアリー「メアリー」
ジョン「え?!彼女もメアリーだよね?」
メアリー「ああ…そうねw」
ジョン「じゃあ2人でメアリーズ?(笑)」
メアリー「そう、二人でメアリーズ…(苦笑)」

ブースの中からメアリー②が2人で仲良くお喋りしてるのをイライラしてテニスラケットで窓をコンコンと叩く

ジョンは椅子に乗って(これ外しちゃいますねとジェスチャー)横断幕を外す

メアリーが音楽をかける。
《セプテンバー》(13:40頃)

メアリーが部屋の外からトレイに乗ったお薬と白いカップのお水、ご褒美のマンゴープリンを持ってくる。
ジョンがお薬を飲んで舌をべーっとしてちゃんと飲んだよと見せる。

(上手ブース前で)ご褒美のマンゴープリンを食べる。

メアリーがコップを持ってきてもっと飲む?とゼスチャー

要らない。と首を振って断る。

メアリーは扉を開け、食器を片付ける。(舞台裏にポイと投げる)

踊るメアリー

ジョン再びプリンを持ってブースを出る。

それを見て揺れながらプリンを食べるジョン

メアリー②が薔薇柄のサークルドレスに金髪ロン毛のウィッグを着けて出てくる。

メアリー②、ノリノリで踊るメアリーを見ている
メアリー②がメアリーの踊りに参戦し競い合う。
メアリーは踊るのを止める。

セプテンバーが終わり謎の音

メアリーは音響機材に戻る

メアリー②歌う
マイクがハウリングしたみたいな(超音波)声

食べかけのプリンを机の上に置き、そうだ着替えなきゃとブース入口のパーテーションを広げ、ジョンは持ってきた着替えと靴を取り、ズボンのベルトを外す。
パジャマのズボンを下ろし、持ってきたズボンをはく。
サンダルから靴に履き替える。
パジャマの上を脱いで、カッターシャツを着てズボンの中に入れチャックをあげる。
ベルトをする。

超音波のような歌声に両手を耳に当て、あわわ…と震えながらジョンはブースに戻り再びヘッドフォンをつけ、質問者とのやり取りを始める。

メアリーはジョンの後ろ姿を見つめている

メアリーが手を叩いて電気を付ける。
メアリー②「どうだったかしら?私の歌(自信満々)」
メアリー「自分では歌わない方がいいwあなたの声にあってないし…あ、それを分からせる為だったらいいと思うけどw」
メアリー②「貴重なご意見どうもありがとう(怒)」
(手の甲でメアリーの顔を撫でる)
メアリー「いつでもどうぞ~w」
メアリー②「それはどうも!」
(片眉の付け眉毛をひっぺがす)
メアリー「痛ぁぁーーーーーい!!!あ!取れた!」
メアリー②、メアリーに眉毛を渡す。メアリーポケットにしまう。

メアリー②「あなた私よりちょ~っと、若そうね!」
メアリー「そう見えるだけで実際はそうでもないのw」
「あ、オヤツ食べるの忘れてた。これ美味しいのよ、食べない?」
メアリー②「いらない。もう固形物は10年食べてないの。」
メアリー「嘘でしょ!?何で!?」
メアリー②「何で?演技に支障が出るから。胃がもたれる、腹が張る、ガスが出る!」
メアリー②「で、ほんとは何歳なの?」
メアリー「演じる役は25歳から45歳。」
メアリー②「私も同じ!」
(メアリー、え、そうなの?意外!って顔)
メアリー②「あなた付き合ってる人はいるの?」
メアリー「まさか~!いないいないwww」
メアリー②「あら?それはどういう意味かしら?」
メアリー「だってこの仕事してたら他のことしてる時間なんてないじゃないw」
メアリー②「あら、私にはもうひとつあるわよ。」
メアリー「そうなの?なにしてるの?」
メアリー②「アレとか、コレとか?フフ」
メアリー「ないんじゃな―いw」
メアリー②「ありすぎるのよ」
メアリー「あなたは恋したことあるの?」
メアリー②「私は恋なら毎日してるわよ。私の物語は全部がラブストーリーだから」
メアリー「子供パーティー、とかw」
メアリー②「そうね、演技が上手ければね(皮肉っぽく)」
メアリー「私は自分だけのラブストーリーが欲しい。」
メアリー②「嘘でしょ?この仕事を楽しんでないの?」
メアリー「ま。でも、ちょっと疲れちゃった…」

メアリー②「………。私達このまま、いがみ合ってるつもり?」
メアリー「まさか!?そんなエネルギーないwww」
メアリー②「今日はジョンが主役で1番大事!あなたでも私でもない!」
メアリー「ええもちろん。分かってるわ!」
メアリー②「なら良かった。」
メアリー②「私達は見られてるのよ。」
メアリー「それ、信じてるの…?」
メアリー②「私達がやっていることはとても重要。そして見られてる…」

メアリー②に電話がかかってくる。
ほらね、という顔をして電話に出る。

メアリー②「ええ、ええ。大丈夫です。はい。彼女も大丈夫です。何の問題もありません。ありがとうございます。どーも、どーも、どーーーも。」ピッ

メアリー、ジョンに近付いてを心配そうにしている。

メアリー②はメアリーを舞台中央に引っ張り戻す。

メアリー「あなたって噂信じる人?」
メアリー②「いいえ。………でもどんな噂?」
メアリー「この前同じ音響オペレーターの仕事をしている友達と仕事の合間に自由意志と決定論について話し合ったの。もう決まっている運命を変えることは出来るのかどうか…」
メアリー②「それで答えは出たの?」
メアリー「いいえwどっちも答えにたどり着く頭がなくて。食べたケーキがムカムカして治まるのを待った…」
メアリー②「で、心配なことって何なのよ?」
メアリー「あ~…」
「彼女の知り合いの話なんだけど、その人も私達とおなじ仕事をしてる役者の女の人でね…」
メアリー②「私と同じね。あなたは音響兼役者。言わばエキストラ。はい続けて。」
メアリー「その女の人がある日仕事に来なかったんだって。彼女はバスに乗ったまま下車しなかった。そのまま姿を消してしまったって!」
メアリー②「………。死んだのよ!役者だって人間だもの!死ぬことはあるわ!私達だって死ぬのよ!…………何でそんなこと言うの?」
メアリー「ちょっと心配になって…」
メアリー②「何が心配なの?!」
メアリー「私達のしてることって本当に正しいのかな…」

メアリー②「……………」
「ルコゼード飲みなさい!」
メアリー「もう甘い物は要らない(うぇ)」
メアリー②「みんな甘い物が大好きよ」
メアリー「昨日は歯が26本あったのに今朝数えたら25本しかなかった!」
メアリー②「あら、心配事が1つ減って良かったじゃない?w」
メアリー「歯が25本しかない役者に来る仕事なんてないでしょ!?メアリー!?」
メアリー②「確かにそうねwでも音響の仕事では歯が25本なのは必要条件で、完璧だわ!」

ジョンがブースから出てくる。

メアリー②「さ、(音響機材へ)戻って」

ドラマーもコーラを持って戻ってくる。
メアリーは音響機材の場所へ戻りルコゼードを飲んでみる。やっぱり嫌いで無理矢理飲み込む。
メアリー「うぇ~何入ってるのぉ!?」

メアリー②は電動鉛筆削りで鉛筆を削り、ジョンの脚本に大きくバツを入れている

メアリー②がバツしてカットした脚本の部分をやぶって丸めてポイっと地面に捨てる

それを見たジョンは慌てて拾ってメアリー②にジェスチャーで必死に訴えかける。メアリー②は、え?あー大丈夫、大丈夫とジェスチャー。

メアリー②「さ!続きを始めましょう!」
頭の上でパンと手を打ち鳴らす

照明は消えない

首を捻ってもう一度パンと打ち鳴らす

消えない

メアリーがパンと鳴らすと照明が消える。

ジョンは(ステージ上手)自分の椅子の上で半泣きで必死に破り捨てられた台本を手でシワを伸ばす

ジョンのマイクにスポットが当てられる
ジョン、慌てて立ち位置に戻る

が、スタンドにマイクが刺さっていない
んー!!!もお!!!とスタンド蹴り飛ばす

マクマーン神父(音声)「やあジョン調子はどうですか?」
ジョン「こんにちは。神父さま。」
神父(音声)「町中の人達が君のお母さんは生涯をかけてマグダラのマリアの準備をしてきたと言っている。そしてみんな今晩教会で君の母さんがマグダラのマリアを披露するのをとても楽しみにしているんだよ。お母さんは一緒かい?ジョン?」

ジョン「お母さんはお化粧があるから遅れてお父さんと後ろを歩いています。」

マクマーン神父(音声)「お母さんは今日も何か歌ってくれるんだろ?」
ジョン「はい。何か歌うと思います。」

マクマーン神父(音声)「マグダラのマリアが自分の髪の毛でキリストの脚を洗う。それにぴったりな曲はたくさんあるんじゃないかな?ジョン?」
ジョン「はい。神父さま。たくさんあると思います。」

メアリー②「音楽!」

ドラマー演奏を始める。

ジョン「僕はマクマーン神父の横を通り過ぎ、教会の後ろに立つ。隣人同士の頷きともうすぐお母さんが祭壇でマグダラのマリアをするのではないかという抑えきれない恐怖で僕の体はいっぱいになった。」

マクマーン神父(音声)「皆さん、おはようございます。」
集まった人々(音声)「おはようございます。神父さま。」

ジョン「僕は頭の中に閉じこもって違うことを考える。」

ジョン「そして僕は過去に戻って傷ついた記憶をえぐり出す!僕が過去2000回朝起きて思い出した記憶というのはこれだ!」

急いでドラムの前に立つジョン 。白いスモークがドラム下の管から吹き出す

メアリー②「フラッシュバック!ジョン。あなたは13歳。思春期の少年時代ね。」

ジョン「そう僕は無口な13歳。ぼんやりとしたセピア色の世界の中、僕は自分の部屋に1人で立っている。僕がいつものように父さんと母さんに無視された週末。そして月曜日の朝。」

ジョン「薄い壁からは父さんと母さんの喧嘩の声が聞こえる」

(2人にスポット)

父「どうしてもぉやらないんだ、マーガレット!」
母「分かるでしょ!?」
父「ああ、あんなガキなんか作るんじゃなかった…あの子が生まれてから災難続きだ!!」
(スカートぴら)
母(ペシッ)「私に触らないで!」

ジョン「そして僕の部屋のカーペットの上に白い蛾みたいに広がった僕の言葉がビッシリ書かれた小さなノート達がみんな僕を見上げる。それからそこに書かれた言葉達が僕に難しい質問をし始める。家はいつものようにうめき声をあげ、それぞれの表面が僕の太った人生を嘆き始める」

僕はカーテンを開け、鍵を外し、窓を少し開ける。外から湿った朝の空気が流れ込む。

セイラ(音声)「(幻聴のような少女の声)ジョ~ン…」を呼ぶ声

メアリー②「初めてじゃないんでしょ?いいのよ、正直に!」

ブースでは肩を剥き出しにしたメアリーが背を向けて服を着替えている。

ジョン「そう!初めてじゃない!!」

ジョン「向かいに住むセーラが窓際に立ってるのが見える。歳は僕と同じ13歳。カーテンが薄いから僕とおなじように朝目覚める輪郭が見える。体を起こし、スカートのファスナーを上げて腰の位置で止める。」

ジョン「そのイメージがノートを持って1階の小さな台所へと僕を運ぶ。床に座り小さなノートにセーラへの伝えることのない愛の詩を書く。」
父(音声)「ジョンは牛の乳が嫌いなのか?マーガレット!?」
「見ろよ!?黙ってその小さなノートに何を書いてやがるんだ~?」

ジョン「ただの詩だよ。」

父(音声)「詩ぃ~?聞いたかぁ?マーガレット!詩だとよぉwww」
母(音声)「ジョンにかまわないで!街に行ってきます!この家にいると息が詰まるわ!」

バタンと扉をしめる音。

ジョン「母さんは家を出て憎悪を抱きながら街を歩く。バスに乗りもう1人の自分を作り出す。男達の\おー/や\あー/の言葉を合図にかりそめの愛に溺れる。家に帰るのは夜。一人で自分のベッドに横たわり薔薇の香りと小さな声をあげる。僕は喉の奥に溜まった薔薇の香りと小さな声を庭に吐く。そしてセーラの部屋を見上げ赤いワンピースから覗くむき出しのセーラの腕を想像して抱きしめる。
こんな澱んだ我が家の中でもセーラは天使のようにいつも僕の上で清らかだった。」

メアリー、学校の先生役(ジャケットにネクタイ)
授業(音声が流れる)

先生(音声)「声に出さずに読むように」

ネクタイを後ろに回し、キャスケットの帽子をかぶる(メアリー、フィリップ役に衣装チェンジ)
※ジョン、台詞を言いながらメアリーのジャケットを脱がす。

ジョン「ある日向こうの席のフィリップという男の子が僕に声をかけてきた。放課後フィリップは僕に言った。」
フィリップ(音声)「や、やあジョン。これから、ぼ、僕のウチで一緒に遊ばない?」
ジョン「信じられない。他の男の子達や、もっと大きくて優秀な男の子達は僕が学校に入学した頃から\セクシー母ちゃん/とか言って僕には近寄らないのに。いつも牛乳臭くて太った僕を馬鹿にして笑っている男の子達は振り向いて目を丸くしてる。」

フィリップ(音声)「か、か、母さんが車で迎えに来るから一緒に行こう」
ジョン「どこに住んでるの?フィリップ」
フィリップ(音声)「ま、町から遠く離れた場所だよ」
ジョン「町から遠く離れた場所!なんて素敵な言葉!」

並んで車に揺られる(動きの)2人

フィリップ(音声)「僕の好きな車分かる?フェラーリ250-GT」
ジョン「聞いたことない。」
フィリップ(音声)「あんまりこの辺じゃ見かけないからさ。 ジョンの父さんは車乗ってないの?」
ジョン「うん。歩いてる。」
フィリップ(音声)「べ、勉強出来るんだね、国語。」
ジョン「たまたまだよ(照れ)」

車を降りて二人でペコリとお礼

フィリップ(音声)「あそこの森に遊びに行こう!ジョンは村で知ってる女の子はいるの?」
ジョン「僕の家の向かいにセーラっていう同い年の女の子が住んでる」
フィリップ(音声)「へ、へぇ、セーラってどんな子?」

ジョン「僕は僕から離れてフィリップと並んで歩いている僕を見てみた。森の木々が揺れ、僕らを冒険に誘ってる!僕からフィリップ、フィリップから僕。僕らは新しい会話と笑いで途切れることなく会話した。」

「でもそれから僕がセーラについてありもしない作り話をしたところから話が変な方へ向かっていった。セーラの話に母さんの部屋で見た変なイメージを付け加えて話した。フィリップが笑ってもっと聞いてくる。話はどんどん歪んで下品になってくる。僕の作った出たら目なセーラの嘘の作り話で友情が固く結ばれていく。僕とフィリップの間で会話がバンバン飛び交ってる!いつもと違う自分!そこには古い町もない!古い自分もない!沈黙の過去とはおサラバだ!13歳、僕はこの新しい自分に目覚めた!」
(メアリーとダンスしてくるくる、ハイタッチ!イエ~イ!)

そしていつも聞いてる学校の声も『町の外』にやってきた。

少年(音声)「やあジョン。こんな町から離れた森で何してるんだ?」
ジョン「フィリップと遊んでる。」
ケビン(音声)「服、脱げよ。そうすればこのナイフで殺さないでやる。」
ジョン「脱がない!脱ぎたくない!こんな所で裸にならない!刺せばいい!」
フィリップ(音声)「何してるんだ!早く、ぬ、脱げよ…ジョン」
ケビン(音声)「おい、こいつの服持って来なかったっけ?」
少年(音声)「お前の向かいのセーラちゃんのワンピース、物干しから盗って持ってきてやったぜw」
フィリップ(音声)「ああ!ジョンの彼女の!だったらいいだろ?!着ろよ!早く!」
ケビン(音声)「これ着たら友達にしてやる。ジョン。約束するよ(ニヤリ※音声のみ、イメージ)」

服の上から赤いワンピースを着るジョン

少年(音声)「見ろよ!こいつ!母ちゃんにソックリだwww」
ケビン(音声)「お前のちっこいノートに書いてある愛の詩を読めよ」
フィリップ(音声)「よ、読めよ、早く!!」
ジョン「そして、僕は自分の詩を読んだ」

その後僕は赤いワンピースを着たまま家まで6キロ歩かされた!

だんだん僕の頭はセーラについてついた嘘の言葉について自分を責める言葉でいっぱいになってくる。

それでも足が僕を家まで運ぶ。
道が世界と結託して僕を町まで連れていく。町中の僕を嫌いな人達が並んで赤いワンピースを着た僕を見て笑ってる。

メアリー②(母親の扮装)、(下手)柱に貼ってある鏡を見ながら赤い口紅をさしている。
そして小さな注射器を用意する。

ジョン「それから6年間僕は毎朝そのことを思い出して目を覚まして吐いた。」

「そして痩せた。」

ジョン「お母さんのマグダラのマリアをみんなと待っている間中、僕は怖くて怖くてたまらない。復活祭のあの日、教会ではいつものようにみんなが19歳の僕に注目している。

マグダラのマリアは元娼婦。だから町の人達が皆母さんをそういう目で見ている。
町中の人達が僕の悪口を言ってるのが聞こえる。

僕は頭の中に閉じこもって違うことを考える。

すると突然ある考えが弾丸のように頭の中を撃ち抜く!

これまでの人生の沈黙の瞬間が集まってくる。どれもどんよりとして薄ぐろい。それは大きな塊になり色を変えて黒い塊を作る。

町の人達や両親がずっと僕を馬鹿にして見てきた。僕は赤ん坊のように泣きながら叫んでる!!(遠くで叫び声…)
僕は大きな黒い塊に向かって叫んでる!!

僕はずっと感じてた!

僕の頭は僕のじゃなかった!!!
1度も自分のだって感じなかった!!!

見るな!見るな!見るなーーーー!!!
(ジョンの腕に注射するメアリー②)
メアリー②「よし…」
目を回して倒れるジョン
助けに駆け寄るメアリー
肩を貸して椅子に腰掛けさせる。

メアリー②音楽をかける
《エモーションズ》(14:00頃)

メアリー②、歌に合わせて歌うマネ

ドラマーはそっと部屋を出る

メアリー②(下手、カバンのような形をした物入れから取り出した)羽のついたピンクのふわふわしたストールを首にかけ黄色いミニポンプをマイクのようにして歌う(マネ)。
ジョンの前に座り『髪の毛でキリストの脚を洗うマグダラのマリア』のようにピンクのフワフワでジョンの足を撫でる。
うな垂れるジョンの首にピンクのフワフワを巻き付ける

メアリー②は胸の谷間から赤い風船を取り出し小さなポンプで膨らます

赤いハートに膨らんだ風船をメアリーに手渡す

メアリー②が手でピストルを作り赤いハートを撃つフリをすると風船が割れる

悲しげにこちら(客席)を見つめるジョン

メアリー②ブースに戻る
暴風が吹く
なんとかブースに戻る

服を着替える

メアリー(中央下手側から)声をかける

メアリー「大丈夫…?」
ジョン「ここから出ていいって、言ってくれるかな…」
メアリー「……………」

「そう願うわ…」

メアリー「外に出ることはあるの?」
ジョン「前はここの中にある庭に行ったりしてた。……でももうあそこには行きたくない!(怯えたように)」
メアリー「ジョン、あの森で…あなたがみんなに読んだ詩はどんなだったの…?」

ジョンがメアリーに近寄り話そうとする

メアリーが勝手にジョンと話すのを阻止しようとするかのようにラケットで窓を叩いて『次の音源を鳴らせ』と(ブースの中から)指示を出す。

メアリーは話すのを諦めて音響機材の音源を鳴らす
「調子はどうですか?ジョン。」
メアリーブースへ

天からの音声が流れ続ける。

ジョン「元気です、はい」

薄暗い照明
蛍光灯が切れそうな感じでチカチカしている。
(ドラマーではない音楽が流れる。少し怖い)

「あなたはどれくらいここに居ますか?」「わかりません」「あなたはどうしてここに連れて来られたのですか?」「上手く答えられません」「あなたがここに来るのは誰の判断でしたか?」「僕の両親と町のお医者さん」
「あなたはどうしてここにいるのですか?」「みんなが僕はここに居る方がいいと決めたから」「その理由を誰かがあなたに説明しましたか?」「いいえ、しませんでした。」

ジョンはしばらくぼんやりと空を見つめ(録音の)声を聞いているが、フワフワをはずして、赤いワンピースを脱ぐ。

(天からの音声が続いている)

質問者「あなたにはその理由が想像出来ますか?」
ジョン「はい。」
質問者「その理由は何ですか?」
ジョン「僕が他のみんなと違うから」

メアリーはジョンの脚本をそっと手に取る。
さっきの場面でジョンがセーラに書いた愛の詩のノートの小道具として使った(メアリー②がバツをして破り捨てた)ジョンの脚本の1部を大切そうに拾って見つめ、それと一緒にメアリー②から見えないように脚本を床の上に置き物語の先をこっそりと読む。

メアリー②はブースで男の格好に着替えている。メアリーが脚本を読んでいることに気付く

ジョンは部屋の奥に追いやった卓球台の上のコップにペットボトルに入った水を入れて飲むと乱暴に投げ捨てる

テーブルの上の物を荒々しく床に落とす

自分のブースに戻りヘッドフォンをつける

メアリー②は『リアム』の衣装を着ている。
(くすんだ緑色の作業着に帽子、口髭、腕にはタトゥー(柄の腕カバー))
着替えが終わってブースから出てくる

ルコゼードを飲んで床に置き、腕立て伏せをする
メアリー②「いーーーーーーっち!」
「にぃーーーーーー(…く……苦し…)じゅっ!!よし!」

会場から笑い

メアリー②はメアリーのところにいってルコゼードを突き付ける。
メアリー②「飲んで!」
メアリー「飲みたくない…」
メアリー②「つべこべ言わずに飲め!」
メアリー「いらないってば!」

メアリー②はルコゼードを口に含みメアリーの顔に吹きかける
メアリー「きゃ――――!!!???何するの!!??」

メアリー②「さっき私達の仕事が心配って言ってたわよね?」(少し苛つきながら)
メアリー「ええ…」
メアリー②「どうしてそんなこと私に言ったの?」
メアリー「需要なことなんじゃないかな~と思って…」
メアリー②「それで?今はどうなった?」
メアリー「同じ」
メアリー②「同じように心配?」
メアリー「さっきよりちょ~っと心配になったかなw」
メアリー②「具体的には何が心配なの?!」
メアリー「分かんない!上手く説明出来ない!」
メアリー②「嘘よ!」
メアリー「嘘じゃない!」

メアリー②「さっきなんで脚本読んでたの?」
メアリー「別に。先の部分を確認してただけ…」
メアリー②「それ以外の理由はないのね?」
メアリー「どんな?」
メアリー②「あなたが今まで一緒に仕事した人達の中で私が1番プロフェッショナルで、最高の俳優だと思わない?」
メアリー「ええそうね、良かったわ」
メアリー②「『良かった』って言葉は嫌いだって言ったでしょ?!!」
メアリー「ああ…そうだったわね…」
メアリー②「『良かった』は『最高』からかけ離れていて全然違うの!『良かった』は役者の顔をぶん殴って口にうんこを詰め込んで目ん玉をひん剥いて脳みそにオシッコをかけるみたいなもの!それが良かった!!」
メアリー「一体何が言いたいの?!!!」
メアリー②「何も!!私はただ会話に色を添えてるだけ!!」
メアリー「私達は一体さっきから何について話してるの!?メアリー??!!」
メアリー②「ほんとにね…」

メアリー「…悪かったわ!あなたに心配の話なんてするべきじゃ無かった!」
メアリー②「そうね。私に余計な心配を増やしてくれてありがとう(皮肉たっぷり)」
メアリー「ええ。ほんっと、ごめんなさい!」
メアリー②「外の考えを持ち込むことはジョンにとって残酷なことだって分かってる?」
メアリー「ええ!分かってる!」
メアリー②「あなたのやってることはそれなのよ!」
メアリー「さっきも言ったじゃない!考えたんじゃない!そう感じたの!!(叫)」
メアリー②「何について?」
メアリー「私達の目的はなんなの?メアリー!??不規則な生活!不安定な仕事!こんなミュージカルの公演のTシャツなんか着ちゃって!(Tシャツ脱ぎ捨て)私達が最後に実生活で経験したような何かを感じたのはいつ?!ほんとの感情を感じたのはいつ!!??」

メアリーに平手打ちする。
メアリー「なんてことするの!?酷い!!」
そして腹蹴り。
メアリー①膝を付き咳込む、泣く

途中からジョン戻ってきて、2人のやり取りを見てる。

メアリー②「私達は見られているのよ!!あなた信じてないの???!!!」
メアリー「そんなのホントかどうか分かんないじゃない!!!」
メアリー②「プロデューサーがどこからか監視していて実際私達に電話もかけてきた!」
メアリー「それは、ええ、確かに!」
メアリー②「これはチャンスなのよ!私達の目的は分かった!?」
メアリー「ええ」
メアリー②「この重要な仕事を依頼してきた人達と私達との取引!ビジネスなの!そのことを忘れないで!!」
メアリー「私達がジョンにしてることが残酷なことだって気付いてる人は他に誰もいないの!?」
メアリー②「いいから最後までちゃんとやれ!!!」
メアリー「うわぁぁぁーーーーー!!!(泣き叫び)」
ドラマー帰って来てドアを開けてと叩くジェスチャー。メアリー泣きながらドアを開けてあげる。ドラマーお礼にルコゼードをあげる。それを見て『もお!やだ!』とメアリー泣きながらブースに入って次の衣装に着替え始める。
メアリー②ちゃんと着替えてるかメアリーを監視する。

メアリー②手を叩いて照明を消そうとする

照明消える

メアリー②「よし!」

リアム(以下音声に合わせてメアリー②)「廊下で何してるんだ?ジョン?」
ジョン「散歩に行くところだよ」
リアム「どうだ、いい子にしてたか?」
ジョン「もう僕は子供じゃないよ。リアム」
リアム「俺のことを名前で呼ぶことは禁じられてる。俺のこと舐めてんのか???」
ジョン「そんなことないよ」
リアム「生意気な奴はどうなるか知ってるか?」
ジョン「うん」
リアム「どうなるんだ?」
ジョン「殴られる…」
リアム「俺がお前を殴ったことあったか?」
ジョン「うん…何度も」
リアム「俺が殴る時はいつでも正しかったよな?当然だったよな?」
ジョン「うん、そうだね…リアム」

メアリー②「音楽!」

(不安そうに)
ジョン「ねぇ、もう1人のメアリーはどこ…?」

メアリー②ジョンの頬にキスして(フリ)
メアリー②「やって…さあ!」

(再びジョン正面を向いて)

ジョン「硬い床、壁とひび割れた天井に取り残された人達の泣いたり叫んだりしている声が響いてる。長い廊下の微妙な傾斜が僕を庭まで運ぶ。その途中通り過ぎる部屋部屋で僕のような不幸な人達が背中を丸め作りかけの銅像のように薄いベッドの上にうずくまっている。彼らは薬のせいで泣いたり叫んだりしている。彼らと同じように僕も薬のせいで過去と現在が曖昧になりながらなんとか歩く。」

メアリー、金髪のツインテール、青い小花のワンピース ブースから出てくる。

ジョン「古い血とリアムの匂い。それが空中で固まって廊下に溜まってる。僕は壁に囲まれた中の庭への扉を開ける。」

優しい風の音、小鳥のさえずり。

メアリーがジョンの横に(前向きに)椅子を並べて置く

(14:10頃)

ヴァレリー(音声)「いつもここに来て座っているあなたを見ていたの。あそこの上の私の部屋からここが見えるのよ。あなたはほとんど毎日ここに来ていたわ。私はあなたが帰ったらすぐにここに降りてくるの。」

ジョン「へぇ…」

ヴァレリー(音声)「あなたに会いたくないからじゃないのよ。その反対なの。あなたと話す自分を想像して楽しんでいたの。」

ジョン「へぇ…(ちょっと照)」

ヴァレリー(音声)「2ヶ月間、私はあなたがここに来てこのベンチに座ってるのを見てたわ。ここに1時間座ってるあなたが帰ったらすぐ私の部屋を出てここに来て座ってみるの。それであなたが何を考えていたかについて考えてみるの。」

録音された音声だけでなくメアリーが声を合わせ台詞を言う。
どんどんメアリーの声が先行していく。
自分の意思を持って想いを伝えるかのように。
メアリー②がそれに気付いて眉をひそめる。

ヴァレリー(音声)とメアリー「どれくらいここにいるの?」
ジョン「わからない。病院の中のおなじ温度で生活していると時を数えるのが難しいw暑いとか寒いとか感じられたらもう少しカレンダーが進む感覚があるんだろうけど…w 僕の名前はジョン。」

ヴァレリー(音声)とメアリー「私の名前はヴァレリー」

メアリー、ジョンの手を握る。
ジョン、メアリーに握られた自分の手を見つめる。

ヴァレリー(音声)とメアリー「ジョン。このベンチに座って何を考えていたの?」
ジョン「ここにいる時は何も考えたくない。考えるとどこにたどり着くか分かってる。昔の僕はいつも考えるのを止めたかったけどうまく出来なかった。」

メアリー、握った手を見て涙ぐむ

メアリー(強く)(とヴァレリーの音声)「大丈夫。私を信じて。私はあなたの友達よ。」

メアリー(とヴァレリー音声)「心配ならリアムに私とあなたが仲の良い友達だってことは言わないで」

メアリー②ブースへ戻る。
警戒するものの暴風は吹かず、そのまま中へ。

ジョン「僕達はここを出て何をするのか、どこへ行くのか、ここじゃない場所で見える新しい世界について話し合った。」

(ヴァレリー音声)「私がここにいるのはほんの少しの間だけ。家の準備とかあるからって。家に帰ったらここでのことは全部忘れよう…ってお父さんが言ってた。」

メアリーはブースの前に椅子を置いて鍵をかけてメアリー②が出て来れないようにする

戸惑うジョン「何をしているの?メアリー?」

メアリー(とヴァレリー音声)「それから私はここに戻ってきてあなたを迎えに来る!そしたら私と一緒にここを出ましょう!父さんがここの人と話をして出して貰えるようにお願いしてくれるわ、ジョン!」

メアリーが音源をオフして曲を流す

《tell it like it is》(14:15頃)

歌に合わせてメアリーが口パクする

メアリー②がこれを見て慌ててドアを開けようとする(開かない!)

音楽に合わせてブースの窓を3ヶ所バンバンバンと叩く。
(ドラマー合わせてシンバル叩く)

ブースの光が消える

メアリーとジョンにスポットが当たる

メアリー、歌詞を読み上げる。
時に歌い。
情熱的に。

舞台にひっぱり出した卓球台の上に登り歌うメアリー

人生なんて短くて
明日はどうなるかなんて分からない!
だから欲しいものは我慢しないでその手で掴まなきゃ!
後悔しないように思うままに生きて!

ありのままに、感じたままに、
恥ずかしがらないで!
自分の心に素直になって!
私はあなたが愛してくれてると信じてる!
愚かなプライドなんか捨てて!
そう!捨てちゃって!!

オレンジのチェックのテーブルクロスをジョンに投げる

受け取り戸惑うジョン
でも笑顔になり、くるくる回して布を投げ捨てる

そうよ! ありのままに!!
言ってほしいの! ベイビーベイビーベイビー

メアリーを抱き抱えてクルクル回りながら地面に下ろすジョン

アタシに向かって
ありのままに! 今すぐに! ねえ!
心のままに話せばいいのよ
アタシが聞いてるから

あなたが言わないなら私が言うわ!

「愛してる!!!」

キーーーーーーーーーーーン!!!!!

マイクがハウリングを起こしたような音が世界を切り裂く

パニックでカオスなドラムの音が鳴り響く

ブースを脱出したメアリー②がメアリーの髪を掴みブースに引きずり戻し、床に叩きつける。

テニスラケットで何度も殴る

(リアムの衣装で帽子は脱いでいる
メアリー②の髪型)

鍵をかけ、音響機材をブースの扉の前に置いて出られないようにする

ブースのブラインドが降りて、中が見えない

ジョンはパニックになって(下手)ソファに駆けて頭を抱えて小さくなったり、自分のブースへ駆けて助けを呼びたかったか、キーーーンという音を消したかったのかマイクのスイッチ(らしきもの)をパンパン押したり、入り口のドアから脱出しようとガチャガチャ、窓をバンバンしたりしているところをメアリー②に捕まり真ん中のジョンの椅子に座らされる。

メアリー②は台本の最後の数ページをむしり取り、自分の机のマイクを掴んでジョンに歩み寄る。

ドラムの音が止む

対面し尋問するようにメアリー②も腰掛け続きをジョンに言わせようとする。

(14:20頃)
メアリー②手に持った破った台本の最後の部分の続きを一気に読み上げる。

メアリー②「次の日もその次の日も僕はヴァレリーのことを考えながらベッドで横になった。かすかな庭の匂いがまだ僕の周りに漂っている。気付かないうちにリアムが廊下に立っていて彼は僕が長い廊下を通って中の庭に歩いているのを見ていた。その後ろをヴァレリーがキラキラした笑顔でついて来ていたことも。」
メアリー②「それから何!?(怒)」
(怯えるジョン)
ジョン「どういう意味…??(パニック)」
メアリー②「次に何が起こったの?!」
ジョン「え…次は…何だっけ……(アワアワ)」
メアリー②「他の人達と一緒に食べます」
(ジョンは怯えながら)ああ…(そうだった)と前を向いて私達に伝えようとする
ジョン(前を向いて)そして硬い床を叩く音…

メアリー②、ジョンを無理やり自分の方に向かせて「私に!!」
ジョン「何…?!」
メアリー②「私に言うの!!」
ジョン「そして硬い床、壁、ひび割れた天井にぶつかる音。そして向かい合う音。」
メアリー②「そして食べ物と呼ばれる薬!」
ジョン「そして僕達は食べ物と呼ばれる薬を口に運ぶ。…欲しくもないのに!!」

ジョン「薬が僕の頭を占領していく。僕は急いで薬の手の届かない頭の角(すみ)に逃げ込みヴァレリーの声を探す!」

メアリー②「そして約束通り?」
ジョン「どういう意味…?!(半泣き)」
メアリー②「翌日、中の庭で!?」
ジョン(怯え)「……もう一人のメアリーはどこ…?!」

メアリー②(叫び声)「音楽っ!!!!!!」

メアリー②(再び脚本を朗読)「次の日も廊下を歩いていて、また気付かれないようにリアムがそこに立って僕を見ている。そしてまた僕は扉を開けて塀に囲まれた中の庭に足を踏み入れる。」

ジョン「そして約束通り彼女はベンチに座って僕を待っていた」

メアリー②(可愛らしい声を作って)「こんにちは、ジョン」
ジョン「こんにちは、ヴァレリー」

メアリー②「二人で何について話していたの?」
ジョン「僕たちは外の世界のことについて。ここから外に出ることについて。自由になったらどこに行くかまだ見たことない場所について話した」

メアリー②「「お父さんがもうすぐ迎えに来る。」その後は?」

ジョン「それから、何?」
メアリー②「「そして僕はベッドに戻る。そこにはリアムがベッドに座って待っていた。」
それでリアムはあなたになんて言ったの?」
ジョン「ヴァレリーとは二度と話すな」
メアリー②「俺は人を殴りたくない。だけどやる時はやるぜ。ジョン。」
ジョン「でも僕は彼の脅しを聞かなかった。長い廊下をどんどん歩いた。微妙な傾斜が僕を運ぶ。口の中の血が乾き、呻いたり泣いたりしてる人達の部屋の横を通り過ぎて、僕は彼女が待っている庭の扉を開けた。」

メアリー②「あなたが考えているだけで、彼女にも決して言わなかった秘密の夢は何だったの?こっそり抱いていた夢。」
ジョン「自分の生まれた町やそこの人達、自分の故郷に戻る夢。両親や若い頃の深い沈黙が降り積もるあの家に戻る夢。」
メアリー②「それから?」
ジョン「ヴァレリーと手を繋いで町の中を歩くこと。僕を作った母親を見返して、自分を父親と呼ぶ男を見返すこと。」

メアリー②「そしてその後も、そしてこれからも」
ジョン「僕とヴァレリーは中の庭で会った。僕らはここから出た後の未来のことを話し合った。退屈な季節はあっという間に過ぎ去った。」

メアリー②「あなたが感じていたのは愛だった…」
ジョン「雨が降るあの日まで、僕と彼女の間に感じていたのは愛だった…」

メアリー②(台本読み)「そして長い廊下を歩く。微妙な傾斜が早くヴァレリーに会いたいという気持ちが僕を早足にする」

ジョン「神の雨が雷を落とし、古い僕の頭の残骸を打ち砕く。雨の中僕はベンチに座っていた。雨が頭から腕と脚を通って過去を洗い流す。そしてそれは地面に染み込んだ。」

「僕は生き返った!!!」

メアリー②「でも彼女は来なかった」

雨の音が激しくなる

ブースのガラスを雨粒が流れている。
暗いブースの中でメアリー(ヴァレリー)が窓を叩くパントマイムをしている。(手には血がついている)

ジョン「僕が彼女の部屋を見上げると中で何かが動いているのが見えた。それから窓を叩きながら叫ぶ彼女が見えた。彼女が僕に向かって何かを叫んでる。でも声は聞こえない。そしてヴァレリーの後ろにリアムの影が見えた。彼女が僕に助けて!ここに来て!って言ってる。そして彼女はリアムに引っ張られ、見えなくなった……」

悲しげなメアリー(ヴァレリー)の姿がだんだん沈んでいき、窓から見えなる。そして姿が消える…

メアリー②「彼女を助けに行った?」
ジョン「そんなの…怖くて出来なかった…」
メアリー②「その後彼女とは会ったの?」
ジョン「1度も会わなかった…」
メアリー②「彼女はどうなってしまったの?」
ジョン「分からない…」

メアリー②「彼女と2人で会って、夢を語り合ったのは間違いだった?」
ジョン「…………」「はい…」(泣いている)

メアリー②「ジョン、あなたはここにいるべき?」
ジョン「……………」「はい…」

メアリー②「あなたがここにいるのは当然なこと?」
ジョン「…はい…」

メアリー②「私達やここにいる人たちがあなたをここに閉じ込めて、こうやって助けていることは正しい?」
ジョン「…そう…」
「……正しい…!!!!!」(震える声)」

ぼんやりと1点を見つめるジョン

メアリー②「…………」

メアリー②は携帯を取り、依頼人に電話をかける。
メアリー②「もしもし、私です。はい、全て終わりました。」
任務が終わりメアリー②は3時からの子供パーティに行くため、ロブスターの衣装に着替えて身支度をする。

(誰かに聞かせるわけでもなく)ジョンが1人、頭の中の記憶をリフレインする…

ジョン「冬になりお母さんが台所の流しにお湯をはる…」

身支度をしていた(下手ベンチ、壁の方を向いたまま)メアリー②の動きが止まる
ドラマーもジョンをじっと見ている

ジョン「湯気で曇った窓ガラスに小さな指で線を描く。ジョン、それやめて、そんなことしないで。それから僕を掴んで熱いお湯に漬ける。じっとして!それやめて!僕はショックで涙も出ない。僕はお皿や鍋を洗うピンクの石鹸をぐにゃぐにゃにして遊ぶ。僕はその冷たく濁った液体の中に1時間以上座っていた。真っ暗な外の庭の様子は僕には記憶がない。でもきっと野原と木々に囲まれてしーん…と静まりかえり、丘の上にはきっと雪。そしてセーラの赤いワンピースを着て家まで6キロ歩かされた!

ジャーン!(ドラムが勝手に演奏を始める)

僕の頭はセーラについたでたらめな嘘の言葉を責める言葉でいっぱいになる。

見るな!見るな!見るな!

道が世界と結託してあの町に連れ戻す。そして足が僕を家に運ぶ。復活祭の教会でみんなが19歳の僕を見てる。僕にはいつもあの場面が見える。僕の人生のあらゆる沈黙の瞬間が集まってきてだんだん黒に染まる。僕は教会の1番後ろからその塊に向かって大声で叫んでる。
(叫び声)
僕は赤ん坊のように泣いている。両親や町の人達がいつも僕をそう見ているように!そして僕は暗闇の中で叫んでる!

見るな!見るな!見るな!

母さんが僕を流しに置き去りにする。水が熱を奪っていく。後ろで母さんがパタンと閉めたドア…僕の頭は僕のじゃなかった…1度も自分のだと感じたことがなかった!見るな!見るな!見るな!僕は頭の中に閉じこもる。僕は薬の届かない頭の隅に逃げ込む。誰にも見つからない場所で僕はまたヴァレリーの姿と声を見つける。いつもの庭で会って別れる。僕らは外の世界がどんなに自由かについて話し合う。まだ見たことのない場所について…それ止めなさい!じっとして!ジョン!それやめて!!僕はそのぬるく汚い液体の中で1時間以上座っていた。足が熱くてショックで涙も出ない。ジョン、止めて!それ止めさない!見るな!見るな!見るな!!窓の外の真っ暗な庭の様子は僕には記憶がない…僕の頭の中は責める言葉でいっぱいになる!水が熱を奪っていく…母さんが後ろでバタンと閉めたドア…セーラの赤いドレスを着て家まで6キロ歩かされた…道が世界と結託して僕を町まで連れ戻す…見るな!見るな!見るな!僕は暗闇の中で叫んでる(叫び声)きっと丘の上は雪…僕は薬から逃げて隅に逃げ込む…動かないで!じっとして!ジョン!

メアリー②は狂うジョンを見つめて涙を流している
それでもメアリー②は意を決するような険しい表情で携帯で精神のバランスを崩したジョンの動画を撮る

メアリー②が音響のスイッチを押すと今までの
人生の登場人物たちがジョンの言葉を切り取り、口々に言っている音源が流れる…

ジョン倒れる

メアリー②がブースを塞いでいた音響機材をどけて鍵を開けてやる。

ドラマー部屋から出ていく

メアリーがブースから出てくる…

音源が流れる

質問者「今日の調子はどうですか?」
老人のジョン「元気です。」
質問者「あなたはどれくらいここにいますか?」
老人のジョン「分かりません。」
質問者「どうしてあなたをここに連れてきたのですか?」
老人のジョン「それは答えるのが難しいです。」
質問者「ここに来るのは誰の判断でしたか?」
老人のジョン「私の両親と町のお医者さん」

メアリー②が音響機材のスイッチをオフにしメアリーとジョンを見て「じゃあ、これで…」と部屋から立ち去る

ジョン「あれは…僕?」
メアリー「ええ…」
ジョン「続きを聞かせて…」

メアリーが音響機材に近づくがボタンを押す前に音源が流れ出す…

質問者「誰かがその理由を教えてくれましたか?」
老人のジョン「いいえ」
質問者「理由はわかりますか?」
老人のジョン「はい」
質問者「それは何ですか?」
老人のジョン「他の人と違っていたから」

音源が止まる

ジョン立ち上がる

ジョン「僕はどれくらいここにいるんだろう…」

ジョン「誰も聞いていなかったんだ、初めから
。僕と君達みたいな人達だけ…」

ジョンはメアリーに詩を読む

じっと身体を丸めるあの傷の中
暗闇の中で何百万回
やがて雲の向こうから太陽が現れて
彼の姿を見た
そしてその形を知る
するとなんて輝きだ

太陽の中で過去は消え去り
悲しみが作った沈黙は消え去る

少年は生き
日々はやすらぎ
そして愛が歩きだす
風に乗って

メアリーが胸の前で小さく震えながら拍手する。
ジョンは胸に手を当ててお辞儀する。

メアリー「私にいてほしい…?居れるだけ…」
ジョン「うん…お願い。メアリー。」

二人は部屋の真ん中に椅子を並べ座る
オレンジの光が世界を照らす

ジョンが恐る恐るメアリーの手を握る
メアリー微笑み、両手でジョンの手を包み込む

二人手を繋ぎ、前を向いてただ優しい時が流れる

(長い時をかけて、暗転)

終演(上演時間 95分、休憩なし)

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