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🧙平安時代に孊ぶ🥷第䞀印象にだたされない人間芳察術🌈認知バむアス【ハロヌ効果】🌈

【ハロヌ効果】

 人は、他人や物の䟡倀を、䞀郚の目立぀特城によっお決めおしたいたす。ハロヌずは「Halo」で、埌光ずいう意味です。䞀を芋お十を知る思考の働きですが、少ない情報で刀断しおしたうず誀った結論に陥っおしたいたす。

ima蚳【因果応報に陥る法垫】巻二十九第九話阿匥陀聖人、人を殺しお其の家に宿り、殺さるるこず 29-9

 今も昔も、聖人ず思われおいる人ほど、その行いが傍若無人になっおいっおしたう堎合がなきにしもあらず。ここでも、阿匥陀仏の教えを説いお回っおいたはずの法垫が䞀倜の宿を求めおいたす。

 「こんな時分に突然蚪ねお申し蚳ない。それがし、阿匥陀仏を説いお歩く法垫にござる。今宵䞀倜、宿をお借り出来たせぬか」
 䞊端に立掟な鹿の角を぀けた鹿杖かせづえが目に぀く客人たれびずであった。䞻人が出掛けおいお䞍安であったが、法垫の願いを無䞋に断るのも気が匕け、䞀倜だけであればず泊めるこずにした。
 小さい草庵なので客間などもなく、竈かたどの前に座っおいただき、飲み物を差し出した。
「これは、かたじけない」
 法垫が湯呑を受け取るその袖口に気を取られた。法垫様がお召しになる垃衣にしおは庶民的ずいうか、普通の狩衣のような気がし、さらにどこか芋芚えがあるような気がした。䞻人の、染め革を瞫い぀けた袖に䌌おいる。
 盆を片付けるふりをしお垭を立぀。法垫の目線から倖れるように、背䞭偎の棚に回り蟌む。袈裟の䞋に着おいる衣に目を凝らす。やはり、䌌おいる。今朝、䞻人が着お出おいった衣ず同じ色、同じ柄の衣である。銖の蟺りの汚れ具合や、右偎の糞がほ぀れたずころも。

 気づけば、隣の家に走っおいた。
「あれ、こんな時分にどうした」
 気心の知れた声を聞いお膝に力が入らなくなる。
「おいおい、どうしたんだ」
 い぀の間にか竈の前に座っおお茶を受け取っおいた。そうだ、竈だ。
「䞀晩泊めおほしいず、遊行の法垫様が、来おいるのだけど、その法垫様がお召しの狩衣が、䞻人のものず同じなような気がしお」
 息を吞っおも吞っおも苊しいのに話したくお、話すほどに恐ろしくなっおきお、䜓が震える。
「そい぀は怪しいな。もしかするず盗んだのかもしれない。本圓にご䞻人の垃衣なら、その法垫を捕らえお問い詰めないず」
「盗んだのか、盗んでないのか、分かりたせん。でも、あの着物の袖は、間違いなく倫の、物です」
 こうしお、里の若い男で匷力の者四、五人ばかりにこの事を䌝えお、倜のうちに呌び寄せた。
 
 䞀方、遊行の法垫はすっかりく぀ろいで暪になり、昌のこずを思い出しおいた。
 峠道でたたたた同じ道行になった男が、山頂付近で握り飯を食べ始めたずきのこずだ。こちらは䜕の準備もなかったので麓の里たで䞀気に䞋りようず思ったら呌び止められた。そしお握り飯を分けられた。塩で握っただけの握り飯だったが、しばらく干飯ほしいいばかり食べおいたので遠慮なく食べた。
 食べ終わるず、男は荷物を担ごうずしおいた。
 杖を取り、二股に別れた金具を男に向けお構え、腰を萜ずす。男が荷物を背に安定させ、顔を䞊げた瞬間に䞀気に男の銖を突いた。血が出るずせっかくの衣服が汚れるので金具で喉を挟むようにしお突き䞊げ、男の䜓が浮き䞊がるずころで螏み蟌んで埌様に倒す。そのたたぐいぐいず喉を締め䞊げた。
「な、にを」
 男は手をすり合わせるようにしおもがいたが、槍に䜓重をあずけお喉を抌さえ続けるず動かなくなった。
 男が来おいた狩衣は、思っおいたずおりちょうどいい倧きさであった。その䞊から袈裟を着お鹿杖かせづえを持おば阿匥陀の聖の完成である。男が持っおいた荷物を担ぎ、しばらく走っお山を䞋った。麓の里に぀いた時には日も沈み、適圓な家に宿を借りたのだった。

 突然、男たちが入っお来お法垫を取り抌さえた。法垫は、
「いったい䜕事か」ず蚀ったが、手足を瞛られ、家の倖に匕き釣りだされた。
「その狩衣はどうやっお手に入れた」
 男たちはどこで芚えたのか、瞛った足をねじり䞊げお詰問した。しかし、法垫は、
「決しお眪など犯しおいない」ず蚀っお癜状しなかった。里の䞀人が、
「その法垫が持っおいる袋を開けお芋ればいい。家の䞻の物が入っおいるかもしれない」
ず蚀ったので、「なるほど、その通りだ」ず袋を開けお芋るず、家の䞻が持っお出た物が党郚入っおいた。
 今床は、頭のおっぺんに火を入れた土噚を乗せられた。さすがに堪えられず、
「蚀う、蚀う。蚀うから、どけおくれ」
ず叫んだ。法垫は昌の出来事をすべお話した。

 話し終えるず、女䞻人が泣いおいるこずに気づいた。そういえば、そもそもどうしおバレたのだろうか。もしやず思っお聞いおみるず、
「ここは、その殺された男の家なんだよ」
ず里の䞀人が答える。
「さおは、私は倩眰を蒙こうむったのか」
 因果応報を説いお回っおいた自分自身もその理こずわりの内にいたこずに今曎気付かされた。

 倜が明けるず、その里の者どもにうながされお山の峠たで登った。峠道から少し倖れた腰掛けるにちょうどよい岩の陰に、䞻人の男の䜓がそのたたそこにあった。ただ鳥獣に食い荒らされおおらず、そのたたの姿だった。劻子はこれを芋お再び泣いた。
 里の者どもが向こうで䜕やら話し蟌んでいる。「連れお垰っおも」、「里には怜非違䜿もおらんしな」、「どうしようにもない」そんな蚀葉が聞こえおくる。いや、聞かせおいるのだろう。
 やがお、近くの朚に匵り付けにされた。里の者どもが匓をきりきりず匕き絞った。
 阿匥陀仏は仏になる時に四十八の誓いの䞭で、十八番目に「もし私が仏になる時、極楜䞖界に産たれたいず望む者が、十回の念仏をしおその者が極楜に産たれないのであるならば私は仏ずはならない」ず誓ったずいう。ならば私も、極楜に埀けるであろう。
 法垫の口は、匓で射られた埌もしばらく、䜕事かを呟いおいた。

 遊行の法垫が南無阿匥陀仏ず十回唱える間があったのか、あるいは生涯の䞭で十回唱えればよかったのか、唱えたずしお法垫の魂が極楜浄土に行けたのか、里の者どもはそんなこずは知る由もなく法垫が持っおいた荷物をすべお奪っお山を䞋りお行った。


※1 鹿杖かせづえずいいたす。鹿の角は䞀幎サむクルで生え倉わりたす。春になるず角は自然に萜ちるので、山ではごく簡単に入手できたす。

 六波矅蜜寺の空海䞊人像が持っおたす。


※2 垃衣庶民が普段着ずしお甚いた垃補の狩衣かりぎぬ。
※3 邪芋仏教甚語。 サンスクリット語で悪しき芋解ずいう意味。特に因果の道理を吊定する芋解はいちばん悪質なのでそれを邪芋ずいう。

【劻はなぜ法垫をあやしいず気づいたのか】

 阿匥陀仏の教えを説いお回る法垫が、人を殺しお荷物を奪った結果、因果応報の報いか、殺した男の家で匷盗殺人がバレおしたう話。

 法垫の栌奜をした男が「䞀晩泊めおほしい」ず蚀っおくれば、悪い人だずは思わず泊めおしたうものです。


 このように、目立った特城に匕きずられお党䜓の䟡倀刀断が歪められおしたうこずを【ハロヌ効果】ず蚀いたす。


 劻は、【ハロヌ効果】も手䌝っお法垫を家に泊めお郚屋の䞭でもいい堎所に座らせおお茶を出しお、䜕かずお䞖話しおしたいたす。
 しかし、ここで劻は、おやず気づくのです。その服、もしや倫の服じゃあないかしらず。

 ここに、認知バむアスを回避するヒントがありたす。それは、现かい芳察ず、情報の積み重ね。そしお第䞉者の意芋の参照です。劻はほんの袖口に芋えた服の柄から疑問をもった埌、さり気なく回り蟌んで襟口から芋える袈裟の䞋の服を確認し、さらにお隣さんに盞談に行きたす。こうしお情報の質ず量を高めるこずず第䞉者からの意芋の参照は【ハロヌ効果】による認識の歪みを修正するのに有効な方法です。

【ちょこず埌付】

 阿匥陀劂来はすべおの者を極楜浄土ぞ導くずされおいたす。 他力本願自分の力によらず仏の力で救われるこず。だから特別な修行をしなくおもよいずもよばれ、どんな人でも「南無阿匥陀仏南無はお頌み申すのような意味」ず唱えれば極楜浄土ぞ埀生できるずいうのが浄土教の教えです。

 生ず死が日垞の䞭に共存する殺䌐ずした今昔物語の䞖界芳を芋おいるず、そうした救いを求めた圓時の人々の心境も察せられたす。

【参考文献】

新線日本叀兞文孊党集『今昔物語集 ④』小孊通

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