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盛り沢山の原作要素×演出〜ミュージカル「ジョジョの奇妙な冒険」

12日夜、ミュージカル「ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド」を観劇しました。

この日が唯一持ってるチケットでしたので、まずは無事に開演して、そして無事に終了して何よりです。
開演前に東宝の演劇本部長より謝罪の挨拶がありました。公演責任者が自ら謝罪したことは評価したいと思います。終演後の見送りもいらっしゃいました。

2月12日夜公演キャスト

さてジョジョはアニメで履修済みだったので、舞台でどこまでやるのかな?と思いましたが、結論、全部やりました
ジョジョとディオの対立がメインなので、後半(波紋の修行やツェペリ×スピードワゴンの絆等)はかなり割愛してますが、舞台に合わせた細かな改変もせず、原作通りでした。

その分、舞台セット・演出効果は大掛かり。これが今回起きた遅延の原因じゃないかと思いますが…地方公演できるのかな?と思うくらい凝ってました。
まず盆を2つ使用し、1つはリング状の八百屋舞台。ところどころに段差があり、傾斜はかなり急(レディベスの盆よりキツい)で、頂点はとても高くて、レミのバリケードといい勝負。リングの端は分割できるので、変形させることもできるが、人力で動かしてるかな。
もう1つはリングを囲む半円状の大きな壁で、背景になったり、ステアラみたいに客席とメイン舞台を隔てたりします。
オケ・バンドは両花道の高いところに。オケピを使わなかったことが意外でしたが、ジョジョの有名な効果音を楽器の音で表現していたので、舞台が見えないといけなかったかと…

使った演出効果は以下の通り
・プロジェクションマッピング(風景映すのは個人的に苦手だが、戦闘時のエフェクトは良かった)
・フライング(ディオかっこいいよ!)
・ダニーはリアルサイズの操り人形(操る役者さんが上手)
・火花(ダニーの死にて使用。天井から吊るした犬の模型から出る。ちょっとビビる)
・たくさんのムービングライト(戦闘時)
・火&スモーク(最終対決で4本中1本付いてなかった)
・ねぶたをモデルとした大きな像2体(タルカス・ブラフォード)
・レーザービーム(ディオの目の攻撃)
・歌いながら集団で殺陣(まだ段取り感は否めない)
・波紋は渦模様の全身タイツを着た人々のコンテンポラリーダンスで表現(ワンピ歌舞伎の腕が伸びる演出と同じ)
・その他細かなものたくさん(石仮面が急に落ちたり、波紋で花が咲いたり、凍結攻撃の時に手袋がLEDで稲妻型に光ったり…)
というわけで、「一切妥協せずにジョジョの世界を表現しました!!」と言わざるをえない盛り沢山演出。これは半月は舞台稽古が必要だろ….開演前のチェックが大変そう、いやいつか事故らない…?地方の劇場でも海外の劇場でもできるのか…?演出の相乗効果で素敵な世界観を表現していた。が、同時にあらゆる心配をしてしまう、諸刃の剣でした。

音楽は「1789」のドーヴ・アチア。彼のロックサウンドはジョジョの世界とよく合ってた。有名な台詞も歌詞でガンガン登場するけど、ちょっと字余りが気になる。変な歌詞はそんなになかったけど、オウガーストリートの連呼はちょっと…また音響のバランスが良くなく(2階席)、アンサンブルの歌が特に聞こえなかった。歌うまさんもいるのに勿体ない。

物語は、ジョジョ、ディオ、そして2人の父親を中心に展開。息子たちが父親の影響を受け、運命を受け入れる/運命に抗う様を対照的に描きます。そのため、1幕は屋敷の火災までしっかり描き、2幕は波紋の会得からラストまで駆け足で進みます。ボリューム盛り盛りなので、1幕はやや長く感じるが、2幕は対決ですら怒涛のスピードで進んでしまう。場所や時代の説明曲を少し削ったり、各所テンポアップしたりと、手直しは必要に感じます。再演/海外輸出するならの話ですが。


ジョジョは有澤さん。個人的に本作が初めましてでしたが、第一印象は「顔小さい〜脚長い〜!今ドキだ〜!」序盤のジョジョ(ひょろひょろ)まんまですね。歌はパンチが弱いけど、しっかり聴かせてくれるし、特段音程のムラもなかったので、初日としては上出来。物語を追うにつれ、顔付きが精悍になっていくのが好きでした。まっすぐなキャラが似合うなぁ。

ディオは宮野さん。「王家の紋章」で声優業での声と俳優業での演技がバランスよく、顔・身体が大きいので、いい舞台俳優だなと思ってましたが、今回はそれが強く出ていました。それぞれの父親やジョジョに見せる顔を鮮やかに使い分けていて、身振りも大変スマート。屋敷の女中さんが薔薇を渡されてウットリするのもわかる。
今回ダリオの登場が多い脚本なのもあって、最終対決までディオの負の感情がどう変化していったのか、丁寧に表現していたのが印象的。2幕のソロ曲はとてもカッコよくて、拍手したくなる。
カテコでの有澤さんに対するフライングハグなど、オタクの心をよく存じていらっしゃるのも好き。
フライング数本に殺陣に歌と、シングルとは思えない分量なので、それだけが心配…

ジョースター卿は別所さん、ダリオはコングさん。パパsの技術的な安定感と物語を支える力が、この舞台のキーになってると言っても過言じゃない。ベテランの底力を感じました。
2階席からこの4人を同時に見ると、どうしても有澤さんが顔の大きさも相まって、弱く見えてしまうので、そこをどう補うかが彼の課題かな。

エリナの清水さんは、歌が絶品。芯のある歌声なので、帝劇でも聞き応えがありました。プリーツフリルをふんだんに使った、ピンクのグラデーションのドレスは可愛いけど、もうちょっと似合うデザインがあったのでは…

YOUNG DAISさんはラッパーなこともあり、スピードワゴンの曲は基本ラップ。この日は音響が良くなかったのもあり、ラップの歌詞があまり聞き取れず…

ツェペリは東山さん。歌も踊りも安定感があって、安心して観れました。脚本上、ツェペリの死がさっくり進んでしまうのが勿体ない。

個人的にその活躍に驚いたのが、ワンチェンの島田さん。舞台を縦横無尽にアクロバットで移動していきます。出番は多くないのに、要所で要所で強烈な印象を残していきました。


原作からの人もきっと満足してもらえる出来にはなったものの、その分随所に心配せざるをえない状況となったジョジョミュ。まずは大千穐楽まで無事に終わることを祈りつつ、より安全に公演できる体制になってほしいと思います。今回初めてミュージカルを観るという方が、他の作品にも足を運ぶかは、ここに掛かってると思うので。


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