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行政書士試験合格体験記


行政書士試験を受験した際の体験の概要を以下に記しましたが、今後、科目別の学習法、合格後、登録後の状況等についても順次記していきたいと思います。

  1. 行政書士試験受験の動機・きっかけ
     会社員として法務・コンプライアンス、官庁対応等を経験する機会があり、体系的に実務で活きた法律知識を使いこなせる実務家になりたいと思ったこと、災害時に都道府県の垣根を越えて行政書士の先生方が罹災証明書発行の支援等で被災者の生活再建に大きく貢献されているニュースに触れ、学んだことで社会に貢献できる道があることに気付かされたことも大きな動機でした。
     
    2.予備校など
     前年は記述式で予想外の地方自治法に関連する問題が出題され、手が止まってしまって勝負ありの苦い経験をしました。そこで、通学・在宅の学習方法などもフルタイムの会社員にとって選択の幅が広く、判例に関する特別講座や演習を意識した講座もあった資格スクエアにお世話になりました。また、前年の失敗を踏まえ、直前の公開模試は、伊藤塾他、主だった予備校の模試を受け、予備校で出題が予想されている問題で外さないよう対策しました。

3.私がとった学習方法の概要
 インプット学習の段階では、アウトプットを意識し、早い段階から演習や過去問学習を並行しました。受験勉強後半になってある程度知識が固まった段階では、記述式対策が必要な行政法、民法は両方を常に意識して継続する形にしました。
 
 また、「自分を知る」ことを意識し、例えば、私法系より公法系の勉強に偏りがちとなる傾向、民法の図式を疎かにした結果、効率が落ちたこと、文字より図式が好きで、白黒よりマーカーで重要部分を強調したり、書き込んだ方が印象に残りやすいこと等の自分の特徴を把握し、プラスもマイナスもまず受け入れた上で、目標に向かって改善・修正していきました。
 
 インプットの勉強では、「読む勉強」のみではなく「聞く勉強」もバランス良くしないと飽きてペースやモチベーションが落ちてしまう傾向もあったため、直前期は公開模擬試験の復習も答え合わせや解説読みで終わらせず、試験場に持って行きたい形でのミス問題ノートの作成、解説講義を科目によって全て聞いたり、スポット的に聞いたり、繰り返し聞いたりしてメリハリを失わないように心がけました。

 全体としては過去問演習中心の勉強になりましたが、近時の傾向では最新判例、改正法、過去に出題実績のなかった範囲の記述問題等も容赦なく出題される傾向にあるため、直前期は過去問を中心にしつつも、公開模擬試験で出題された判例や改正法の問題、解説講義で強調された出題可能性の高いヤマのトピックは、切り離して重点的に復習し、試験場まで持って行きました。本番で的中と思われる論点が複数あり、落ち着いて解くことが出来ました。

4.直前期のエピソード
 直前模試第二回は、直後のライブ解説授業にも参加しました。ご担当された予備校の先生の直前の過ごし方、気持ちの高め方のアドヴァイスは本番の心の支えとなりました。第一回目の結果で慢心したのか、第二回目は結果が芳しくなく、落ち込みそうになったのですが、直後の解説講義で先生の実体験に基づく直前模試が終わってから本番までの自分との向き合い方、「諦めない」の具体的意味、試験後を見据えた心構えを再確認出来たことは解説授業に出席した大きなメリットでした。本試験の配点等を改めて再確認した上で優先順位付けすべきとのお話で冷静さを取り戻し、最終コーナーでの追い上げと突破につながったと思います。

5.本番において
 受験時の現場感覚では、記述式はある程度手応えが得られましたが、択一式には難しく感じた問題も多々ありました。この時に心の軸を維持できるか、つまり終了の合図まで「諦めない」で淡々と冷静に解き続けられるかは、本番力発揮の重要な要素だと感じました。

 私のようにフルタイムの会社員は時間との戦いにはなりますが、受験のプロの知見を活用して優先順位付けを行い、自分を信じて乗り切っていただければと思います。そして、様々な面で自分を支えていただいたことに感謝の気持ちをもって本番までの人事は尽くしたと言えるほどに準備を徹底できれば、従容とした気持ちで受験できるのではないかと思います。

6.行政書士試験受験のメリット
 行政書士資格に関してどの程度、役に立つ資格か?様々議論があるようですが、資格は実際に使ってみないと自分にとって役に立つものか否か?それで生活していけるか否か?等は分かりません。ここでは、試験を受験することによって得られたことをあくまで自分の体験ですが、列記したいと思います。

 (1)企業法務、行政事務等で使う法令知識を得られること、
 行政書士試験の科目として、民法、行政法(地方自治法含む)、憲法、会社法、商法とともに個人情報保護法等を学ぶことになります。これらの科目は、行政事務を取り扱う場合も、企業法務を取り扱う場合も実務において必須の法律知識になります。
 
 私は企業勤務で法務・コンプライアンス関連の業務に従事してきましたが、上記の法令上の知識が日常的に実務で役立つことに議論の余地はないと感じています。

 例えば、契約書をドラフトする際も、民法・商法の知識や要件事実論の知識を踏まえてドラフトすることで正確で紛争を事前に予防するための条文を作成することができますし、自社が官庁に許認可の申請をしなければならない場合の対応や準備、監督官庁からの検査対応等に従事する必要がある場合に、官庁の担当者とも直接話し、必要な対応が出来る裏付けとなる知識が得られますし、そうしたことで行政法の知見で強みを発揮できることにもなります。

(2)万一の場合に独立が可能であること
 行政書士試験に合格すれば、都道府県の単位会に所定の手続きを経て登録すれば、独立開業が可能です。独立開業とは、行政書士法で認められた業務につきサービスを提供し、その対価を得ることができることを意味します。

 たとえ大学の法学部を卒業していたり、日本のロースクールを卒業していても、弁護士登録や行政書士登録をしていなければ、契約書の作成や遺言書の作成をして顧客から対価を得ることは、法令で禁じられており、できません。しかし、行政書士試験に合格し、行政書士登録すれば、弁護士ほどの広い法律事務はできないものの、契約書作成や遺言書作成といった業務は可能となります。

 万一、リストラ等で再就職先がなかなか見つからないという場合も、何らかの仕事をし、収入を得るインフラを得られる点、いずれ起業をしたいと思う人にとっても比較的リスクの少ない起業として行政書士としての独立が可能となること、定年が近い方にとっても、あるいは定年を既に迎えられ、今後も社会に関わる仕事をしたいと考えている人にとっても、生涯現役を実践できるインフラを得られることが挙げられるのではないかと思われます。

(3)社会貢献の幅が広がること
 資格を通じて社会貢献の幅が広がることが挙げられます。

 たとえば、合格直後には受験指導の分野で強みを発揮できます。私自身も合格直後には受験指導の分野でお手伝いをすることとなり、これまで学んだ民法、行政法、会社法の知識を活かしつつ、自信のブラッシュアップにもつなげることができました。

 また、行政書士として単位会に登録すると、単位会で社会貢献事業として行っている市役所、県民センター等の相談員、著作権相談員になることができます。相談員になって市役所、県民センター等で相続、事業承継、行政許認可、著作権等の市民からの相談、質問にお答えする業務なのですが、これは資格を持っている人でこそ得られる機会です。

(4)資格内資格によるステップアップに
 行政書士の場合、特定行政書士という一般の行政書士よりも広い権限を有する資格内資格があります。特定行政書士になるためには、行政書士である必要があるため、行政書士試験に合格し、行政書士に登録することで、特定行政書士試験の受験が可能となります。合格すると、より幅広い行政事務周りの仕事に従事する機会や可能性もアップするのではないでしょうか?

 人によってはさらに司法書士試験や司法試験にチャレンジする方もおられるように、行政書士資格の取得が一つのきっかけや安心材料になるメリットもあると思います。



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