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葛飾応為に会いに 名古屋日帰り旅

葛飾応為の「夜桜美人図」を見に名古屋のメナード美術館へ行ってきました。

昨年「吉原格子先乃図」を見て、浮世絵の枠を超え西洋画と融合したかのような光と影の表現と繊細な描写の美しさ...応為の産み出す唯一無二の世界観に惹き込まれました。
また、葛飾北斎の娘として産まれ、自らも絵師として北斎を支えながら生涯を描くことに捧げたにも関わらず、自らの名を残した作品は現時点で数十点しか確認されていないという謎の多い生き方にも魅了され、応為の作品全てを見ようと心に決めました。

絵画でも音楽でも書物でも、芸術家の産み出した作品にはその方の生き方や想いが深く込められていると思います。

応為の作品を見て、応為の想いに触れたくて。
応為に会いに名古屋まで行ってきました。

仕事で名古屋に住んでいる息子が一緒に来てくれました

名古屋駅から電車を乗り継ぎ1時間弱でメナード美術館につきました。

「吉原格子先乃図」を見に行った時はかなりの混雑だったので今回も混んでいるだろうと思ったのですが、開館直後に行ったからか空いていました。

「花ひらく春」がテーマの展示会で、会場の中は様々な「春」が溢れ明るく華やいでいます。

応為の「夜桜美人図」は奥の展示室に飾られていて、部屋に入ってすぐに圧倒的な存在感で目に飛び込んできました。
「やっとお会いできた」と涙が出そうになりました。
ありがたいことに部屋には私しかいなくて。
念願の応為の作品を独り占めしました。

まず全体を見て感じたのはやはり光と影の美しさです。
灯篭の光でほんのりと白く浮かび上がる女性が、こちらへ迫ってくるかのように大きく見え、美しさが際立っています。
女性の背後の顔周りには満開の桜の花が灯篭の光に照らされ輝いていて、女性と桜がお互いの美しさを引き立てあっています。

近くで見ると、女性の頬がうっすらとピンク色に見えて細めた目は静かにうっとりと微笑んでいるようで。
筆をそっと握る細くて長い指は艶めかしくて美しく、あぁきっとこの女性は恋文を書いているに違いないと思いました。
大切な相手を慕うドキドキ、フワフワとした高鳴るような想いが見ている私にも伝わってきて、胸が熱くなりました。
そしてきっと応為にも恋心を持つ大切な相手がいたのだろうなぁと思いました。
その想いが、この女性に込められているように感じたのです。

北斎は応為の絵を見て「美人画では応為に敵わない」と常に言っていたそうです。

「吉原格子先乃図」に描かれていた遊郭の女性は華やかな場所にいるにも関わらず淡々とした表情で、遊郭に生きる女性の光と影が表されているようでした。

応為が描いたのはただの「美人画」ではなく、その女性の背景や想いと、自らの生き方や想いが共に込められているのを感じます。
その深い想いが込められているからこそ、人の心に届く「美人画」となり、かの北斎にしても「敵わない」と言わせたのでしょう。

「夜桜美人図」を独り占めして気付いたら30分近く時間が経っていました。
開館から時間が経ち人が増えてきたので、応為と絵の女性に「ありがとうございました。また会いに来るのでお願いします」と声をかけて立ち去りました。

近くでゆっくりとじっくりと絵を見ることができて本当に贅沢で幸せな時間でした。

応為の生き方に触れた濃密な時間。
ますます応為のことが好きになりました。

付き合ってくれた息子と、素晴らしい作品を展示して下さったメナード美術館に感謝です。
ありがとうございました。


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