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VERYがおもしろくなってきた

この記事は #週1note という企画で「男性目線で女性ファッション誌をひたすら解釈する」をお題書いている第3弾の記事です。

みなさんは「VERY」という雑誌をご存知ですか?

「購買力のあるおしゃれママ雑誌ナンバーワン」と分類されるような雑誌です。
「サスティナママ」「VERY妻」「港区女子」「シロガネーゼ」のような
思わず見入ってしまうようなファッション雑誌らしい独特なフレーズ。
圧倒的勝ち組的教科書感。
常人を逸してもはやファンタジーのような世界観。
今尾朝子編集長の仕事観。
ファッション雑誌なのにビジネス雑誌として、
女性だけでなく、男性のビジネスパーソンにも読まれているVERY。

他の雑誌と比べた時の読者層の違いはこちら。

ここ3ヶ月分読んで読み取ったことを
VERYの最近のモデル事情を中心にまとめてみました!


実は年明けから滝沢眞規子(通称タキマキさん)さんから矢野未希子(通称みっこさん)さんにカバーモデルが変わりました。

2016年10月〜2019年12月までタキマキさんが
カバーモデルを長いこと勤められておりましたので、
約3年ぶりの交代となります。
ちなみにタキマキさんの前任の井川遥さんは
なんと2009年7月〜2016年9月のなんと9年3ヶ月、
108回に渡りカバーモデルを勤めていらっしゃいました。
雑誌が売れないとカバーモデルが悪いからだと非難されることもある中、
見た目だけでなく、中身も常人離れしていると思われます。

タキマキさんは
・41歳既婚3児の母(2020年3月7日時点)
・2009年に歩いているところをスカウトされてVERYモデルデビュー
・カバーモデル卒業後はYoutubeでライフスタイルの提案
なな感じの人です。

一方みっこさんは
・32歳既婚お子さんなし(2020年3月7日時点)
・16歳にteen girlでモデルデビューを果たし、non-no、steady.、ar、with、GINGER、Oggiなどのの表紙や紙面を経てVERY専属モデルとなる
・カバーモデル抜擢理由は
「創刊25周年目となる2020年のスタートになるにあたって
クリーンで軽やかなイメージが強く、
一方で人に愛される愛嬌を兼ね備えた人と
歩んでいきたいから(今尾朝子編集長)」
な感じの人です。

タキマキさんは
・見てて楽しいファミリーライフ(家族行事、#タキマキ長女弁当)
・随所で滲み出る常人離れしたセレブ感(お家に暖炉、ファッションデザイナーの旦那さんの海外出張と合わせた家族旅行)
・でもどこか漂うモデル素人感(どこか鈍い感じ)
で読者のみなさんを楽しませてきたと思っています。

一方でこれまで必要だった要素を残しつつ、
みっこさんを新しいカバーモデルに据えたことは
VERY的チャレンジをしているのだと思いました。

今25~35歳くらいの読者層を取り込もうとしている感はあります。
元々他の10代、20代向けの雑誌でこの層との接点が多かったので、
ライフステージの変化に伴って購読雑誌のシフトを狙っていると思います。
ただ年代的な差し替えというより、
これまではロスジェネ世代やプレッシャー世代がメインでしたが、
ここからはゆとり世代と呼ばれるに変わります。

ロスジェネ世代やプレッシャー世代は
親世代がバブル経済を経験した不景気の煽りをモロに食らった世代です。
公務員やインフラ系や機械系メーカーへの就職がよしとされていながら、100社エントリーして1社受かるかどうかみたいな就職活動を
していた世代です(00~03卒が有効求人倍率が1.0を切ったヤバイ世代です)。
不況時だからこそ、資格や専門スキルの取得に対する親和性が高く、
仕事に対して比較的前向きに積極的に取り組む人が多いらしいです。
将来に対して不安を感じて生活してきたからこそ、
貯金>消費な金銭感覚の持ち主達でもあります。

一方、ゆとり世代はロスジェネ世代が就職した頃に
オギャーしてきた世代です。
僕ももれなくゆとり世代なのですが、バブルの崩壊、阪神淡路大震災、
リーマンショック、東日本大震災という超ド級の出来事を
青年期に経験した世代です。
貯金<消費な金銭感覚が強く、今のワークライフバランスを重視して
安定志向が強い持ち主たちでもあります。
物欲が薄く、インドア派が多く、
スマホ依存的なリアルな人間関係が苦手な一方で
上の世代に対してなぜか精神的にゆとりをもつ
出家したような世代らしいです(当人はあまり認識できていない)。

あんまりよくわかっていないことを前提で話しますが、
ゆとり世代以下のミレニアム世代やZ世代と呼ばれる人たちにとって、
マスメディアから生まれたオピニオンリーダーが
あんまりいないと思っています。
その過渡期となるゆとり世代に対するマーケティング施策は、
流行を見せつけるというより、
自分が何気なく行なっている小さな所作に世界を見出させ、
小さな世界を実現するために
お金を使ってもらう動線作りなんだと思うのです。

他の雑誌はファッション雑誌というより
ライフスタイル雑誌化が進んでいて、
服飾系のお話だけじゃなくて、
キャリア、ファイナンスと社会問題と行った様々な文脈を織り交ぜて、
「そんなとき、私はこういう姿でその問題と向き合おう」
という姿勢が強くなってきています。

宝島社の雑誌のようにおまけをたくさんつけるのもいいけれど、
消費者にとっておまけがメインコンテンツ化するのではなく、
やっぱり中身で選んでもらうことを目指すとのなら、
・誰が
・どんな思想で、
・どんな人生に向け合って
・どんな有り様なのか
を伝えることが読者にとって求められるのではないでしょうか?

ちょっとしたインフルエンサーが乱立するSNS戦国時代に、
自分と等身大くらいの参考資料は多過ぎて、
見つけたところで自分の意志を動かすに至りません。

こういう常備薬的な人はたくさんいるので、
劇物薬のような人が現れたとき、
初めて自分の意志に気づくことができます。

1月にカバーモデルが変わったことも1つのトピックスなのですが、
実は3月に申 真衣(通称しんまい、そのままです。)さんが
専属モデルになったことも話題になっていました。

しんまいさんは
・34歳既婚一児の母であり、フェミニスト(2019年6月時点)
・東大経済学部卒→新卒ゴールドマンサックス→ベンチャー2社の役員
・知人の紹介で2019年6月号VERY読者モデルデビュー
な感じの人です。

読者モデルって、「普通に暮らしてただけなんですが、急にこんな感じになってしまいまいました、てへ!」って感じでスカウトされた人や「昔からやってみたくって!」ってオーディションに応募した人がなることが多いらしいですが、VERYは読モの公募は行なっていないそうです。

これまでのVERYはどこか専業主婦寄りのリッチなマダムをターゲットにしている感じがありましたが、しんまいさんは完全に自立されていています。
なんならその辺の人より圧倒的に稼いでいます。

VERYのコンセプトは、
「基盤のある女性は、強く、優しく、美しい」なのですが、
しんまいさんは圧倒的に経済的基盤を築いていらっしゃるところをみると、
VERYはただ読者の年齢層を下げに行ったのではなく、
ミドルエイジ層に対してより多様なロールモデルを提案するスタイルに舵を切ったように見えます。

これまでのカバーモデルは皆出産を経験された方が務められてきましたが、今回みっこさんがカバーモデルになった時点で意外と多い既婚子供なし層を取り込もうという意図も編集部サイドは持っているのかもしれません。

読者に対して、どんな基盤をもつことを提案するか。

家族や生活の形がますます多様化していく中で、
どこに向かって生きていくのか意志をもつのか。
No.1雑誌と言われるVERYだからこそできるエッジの効いた切り口で世の中を読み解いて欲しいと思っています。

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